それはとある昼下がりのこと。
「死ねえ、エヌメラント家の娘!!」
ダァァァ――・・・ン
けたたましい声と銃声が華やかだった空間を切り裂いた。
この花の咲き、穏やかな日が射す優美な公園で開かれていたお茶会に名家の娘である主催者を狙う刺客が紛れ込んでいたということか。参加者は怯え、会は台無しになってしまった。入り口で入場者の検査をしていた者は何をしているのか。
「はぁ・・・」
そこまで考えて娘は溜息を吐いた。
「・・・な、何だてめえは!」
拳銃を持つ男は放たれた銃弾が近くにいた執事服の男の持つ銀のトレーで弾かれたのを見て怒鳴り散らす。
「いかがいたしましょう?」
下僕は主のカップに紅茶を注ぎながら尋ねる。ティーポットに十分な高さをもたせ紅茶に酸素を含ませている。主は渋い顔をしながら
「・・・何とかして頂戴。」
命を下した。
「承知いたしました。」
と下僕が答えたか否かで
「何をコソコソとやってやがる!」
と男が喚き散らす。下僕はこのままでは主に危害が及ぶことを思慮し、男に近付く。
「・・・どうやら厳しいお仕置きが必要なようですね。」
一言呟くと、執事服の男はゆっくりと息を吸い、
「構えはダージリンのように気高く」
「!?」
呼吸を止めた。次の瞬間執事服の男は重心を沈め、動き始める。
「動きはアッサムのように豊かに!」
「!!う、うおおおおおお!」
手に拳銃を持った男は接近する執事服の男の動きを追いきることができず、ただ闇雲に銃に指をかけた。
「回避はジャワのような落ち着きで…」
「く、く、来るなああああああ!!」
しかし、銃弾はその目標を捕らえることはできない。乾いた銃声が何度も鳴り響く。残弾は
5、4、3、2、1・・・
「うわあああああああああ!!」
0。
銃声が止まると執事服の男は拳銃の男の前で立ち止まる。
が、
「し、死ねえええええええ!!」
男は執事服のはためきが止まった瞬間、手に持った使い物にならなくなった拳銃を捨て懐からナイフを取り出し執事服の男目がけて突き出した―はずだった。
「甘い。あなたはフランボワーズのように可憐で、ジョルジのように甘い。」
執事服の男はまるで知っていたかのようにナイフを叩き落し、対峙した男に笑顔を向ける。
「あ――」
「とどめはアールグレイのように鋭く」
刹那、執事服の男の手刀がナイフを持つ男の芯を捉え、その意識まで奪い去った。
「穏やかにお休みくださいませ。そう、カモミールのように。」
「お待たせいたしました。」
執事服の男は主の下へ帰った。
「あら、ずいぶんと手間取ったのね。」
「申し訳御座いません」
「フン、まあいいわ。私は喉が渇いたわ。」
主はその下僕に声を投げかけ、下僕は笑顔で答える。
「ただいま準備いたしましょう。いかがいたしますか?」
下僕の顔を見つめ、考え込むようにして後、主は笑顔で言った。
「私、コーヒー派なの。」
「…。かしこまりました。」
下僕の顔は少し不自然に笑った。
短編創作お題出したー http://shindanmaker.com/139886より
大家 流は、騒がしい公園 が舞台で『紅茶』が出てくるバトルする話を7ツイート以内で書いてみましょう。
7ツイートで収まらず、ツイッター投稿を断念。