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新たな問題

 バンディニ卿の懇願も虚しく一族全員が処刑という形で処罰が下された。他にバンディニ卿に協力した貴族たちも家長を始め、主犯格は全員処刑され、その家族は国外追放となった。


 アルガ・ロンガ国王にしては厳しい処罰だったが、これはフオル国に対しての牽制も含まれている。


 謀反軍を構成していた兵については命令されただけ、ということで新たな所属場所へと配置された。その多くは国軍に編入され根性から鍛え直される。

 このことについては、裏で密かにどれだけの脱落者が出るか賭けが行われている。それだけ余裕が出てきたということでもあるのだが。


 そして、家長の死と国外追放にて空いた貴族の穴をどうやって埋めるか、と、同時に再びバンディニ卿のような無能貴族を生み出さないように教育をどのようにしていくか。


 謀反の後片付けと、新たに見えてきた問題点の処理に頭を抱え始めた頃、おれに無理難題が突きつけられた。






 始まりは王を中心に謀反者の処罰を検討しているときにグランディ卿が言った一言だった。


「アントネッロ卿のご息女については、いかがなさいますか?」


 その言葉におれは首を傾げた。


「何故、アントネッロ卿の息女が問題になるんだ?アントネッロ卿は首謀者であるバンディニ卿を捕まえたし、ここに上がる名ではないだろう」


「確かにアントネッロ卿の功績は大きいです。ですが、そのご息女は違います。聞くところによるとフキ高原ではフオニ国軍側につき、こちらを攻撃してきたそうではないですか」


 その言葉におれは固まった。

 まさかバカ正直におれが旅をしている最中に連絡をしなかったから攻撃してきたとは説明できない。そんな理由で国軍にまで攻撃したなど言ったらカリーナの立場が悪くなるだけだ。


 おれは悲しいが、幼馴染のために苦しい弁明をした。


「その攻撃による国軍の被害はない。むしろフオニ国軍と謀反軍を壊滅に追いやった。その後もバンディニ卿の協力者たちを魔法で見つけ出した。処罰の対象になるとは思えないが」


 おれの言葉にグランディ卿が仰々しく頷く。


「確かに功績もあります。ですが、次もそうなるとは限りません」


「どういうことだ?」


「次は敵になるかもしれないということです」


「それはないな」


 おれはきっぱりと断言した。


 確かに気まぐれで予想外の行動をするが、あれで結構アルガ・ロンガ国が好きだのだ。この国が平和だからこそ自分が好きな研究が出来るし、おれにちょっかいをだして遊べることを知っている。だからカリーナが自分から今の環境を壊す立場になることはない。


「レンツォ様はアントネッロ卿のご息女のことをよく知っておられるので、そう言われますが、他の者はどうでしょう?」


 グランディ卿の陰を含んだ言い方におれは嫌な予感がした。


「どういうことだ?」


「今回の攻撃でアントネッロ卿のご息女に対する不信が出ております。しかも、あれだけの強大な魔力をお持ちです。いつか自分たちを攻撃してくるのではないかと、不安に思っている者が多くいます」


 おれは思わず右手で額をおさえた。


 確かに考えられることだ。あれだけ派手に魔法を使ったのだから首都にいた平民たちにも火柱ぐらいは見えていたのだろう。

 そして、この場で話題に出したのなら当然、カリーナに対する処罰も考えているはずだ。


 とりあえず、おれは続きを促した。


「では、どうするのだ?」


「アントネッロ卿のご息女につきましては魔力封じをしまして、城の監視下に置きます」


 言葉の内容におれは思わず吹き出しそうになった。


「ま、待て。本気でそれが出来ると思っているのか?」


 事実上の幽閉だが、本当にそれを実行するならカリーナは本気でこの国を支配しにかかるだろう。滅ぼさないのは新しい国を作るのが面倒だからだ。

 自分に反対する勢力を排除して独裁者になるだろう。それぐらいやってのけるのがカリーナだ。


 グランディ卿が力強くおれを見ながら頷く。


「レンツォ様なら出来ます」


 他人頼みか!?


「おれに押し付けるな!」


 思わず立ち上がり叫んでいたおれは驚く周囲を見ながら言った。


「とにかく、この議題は保留だ。休憩する」


 そう言い切るとおれは固まったグランディ卿たちを無視して、さっさと会議室から出て行った。



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