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海上戦

 作戦会議から一日後。


 ピカピカに磨かれた銀色の鎧を身に着けたおれは背後に中型船を二隻従えて浮遊魔法で海上に浮いていた。

 この近辺は複雑な地形をしており、大小の入り江が多くある。その入り江を見渡せるような小高い崖の上にレガ城が建っており、この地域と海域を管理していた。


 普段は商船が行きかう穏やかな海なのだが、今は目の前を埋め尽くすだけの船団がいる。形も大きさもバラバラでフオル国が占領した国や同盟国から寄せ集めたのだと分かる。


「よく、こんなに集めたな」


 おれが感心していると、船団の中から派手に飾られた一隻が出てきた。


「あれが指令船か」


 おれの呟きに答えるかのように魔法で拡張された声が響いた。


「アルガ・ロンガ国の残党に注ぐ!抵抗は止め、降伏して王は投降するように!さすれば命は助ける!」


「陳腐な決まり文句だな」


 おれの感想など聞こえているはずのないフオル国の船団の司令官は言葉を続ける。


「半日、考える時間を与える!それまでに結論がでなければ攻撃を開始する!」


「はい、はい」


 おれは自分の喉に拡張魔法をかけて大声で返事をした。


「我はアルガ・ロンガ国第三皇子、レンツォ・ラ・アルガ・ロンガである!貴国は不法に我が国土を侵略しており、我が軍は我が国を守るため、これより攻撃を開始する!今なら降伏を認めるが、いかがする!?」


 おれの呼びかけの答えは大砲の弾だった。海を埋め尽くした船団から一斉に大砲の弾が発射された。


「水の精霊よ。我に鉄壁の守護を」


 おれは予想範囲内の攻撃に素早く周囲に結界を張った。どんなに重くて威力がある砲弾もおれの結界にヒビ一つ入れることが出来ない。おれは黙ったまま、しばらく砲弾の嵐を受けた。


 雷よりも五月蠅い爆音をおれは欠伸をしながら聞いていた。しっかり寝たつもりだったのだが、師匠を復活させた疲れが残っていたようだ。


「おれも、まだまだだな」


 そう呟いていると、ようやく砲弾の嵐が止まった。周囲は砲弾による煙で何も見えない。それは敵方も同じなのであろう。妙な静寂が続く。


 おれが静かにその時を待っていると、海風が煙を一気に吹き飛ばした。


 あれだけの砲弾を浴びながら、始めと同じように平然と海に浮かぶ中型船二隻と、浮遊魔法で浮かんでいる、おれ。


 その光景にフオル国の船団がざわついたのが分かった。なぜなら最初に降伏するように言ってきた指令者が声を拡張したまま狼狽えたのだ。


「な……ど、どういうことだ……」


 混乱させるだけの時間をしっかり与えて、おれは叫んだ。


「次はこちらから行くぞ!」


 おれは一呼吸おいて魔法を発動させた。


「水の精霊よ!天を貫く柱となり全てを薙ぎ払え」


 それまで穏やかだった海が大きくうねり出す。そして海水が竜巻のように巻き上がり、船団に襲いかかった。


 最初は水柱をどうにかしようと攻撃していたフオル国の船団だが、どんな攻撃も効果がなく海に浮かぶ木葉のように水柱に遊ばれている。魔法防壁を張っているため、転覆だけは免れている。

 と、いうか、おれが転覆しない程度に水柱の威力を押さえているのだが、そのことにフオル国の船団は気付いていないだろう。


 そのうち一隻が後退を始めた。こうなると、あとは早い。船は魔法によって動かしているため海上でも機動力がある。後退した船を追いかけるように次々と首都の方角に走り去っていった。


「おー、素早い撤退だなぁ」


 所詮は力任せに吸収や同盟を結んだ国の兵の集まりだ。楽勝するはずだった戦で命をかけた戦いはしたくないのだろう。


 散々に逃げていく船の最後尾をあの司令船が追いかけるように去っていく。


「よし。じゃあ、次だ」


 おれは船団の撤退を確認すると急いで城に戻った。

 浮遊魔法で城門の前に到着すると、騎兵隊と鎧を着たサミルが馬を準備して待っていた。


「準備は整っております、我が君」


「よし、親衛隊と合流するぞ」


 おれは準備されていた黒馬に跨ると勢いよく出発した。


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