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決意

 おれはゆっくりと説明を始めた。


「なんのために船が転覆しない程度で、しかも威嚇だけで攻撃を終わらせると思う?それは敵の船の中にアルガ・ロンガ国民が奴隷として乗せられている可能性があるからだ。船を動かす魔力を徴収するためだけに、奴隷として捕まった魔力ある国民が乗っている可能性がある」


 おれの言葉に歓喜にあふれていた人たちが沈黙する。


 そこに、ずっと黙って聞いていた王が口を開いた。


「レンツォ、戦争とは命の奪い合いだ。そのような綺麗事だけでは、勝てる戦も負けてしまうぞ。人の上に立つ者として、時には味方の命を奪う決断も必要だ」


 王の厳しい言葉におれは真剣な表情を返した。


「わかっています。だからこそ、命を奪わずに勝てるのであれば、その道を選びたいのです。おれの魔力はそのために使います」


「その結果、より多くの命が失われることがあるかもしれないぞ」


「覚悟は出来ています。おれの甘さによって、それ以上の悲劇を生むことがあることも。それでも、おれはおれが決めた道を進みます」


 目を逸らさないおれに王は大きく頷いた。


「わかった。これはお前の初陣だ。お前に全権を委ねよう」


「ありがとうございます」


 おれは王に頭を下げ、それからこの部屋にいる全員を見た。


「おれの作戦に甘いという意見もあると思うが、これがおれのやり方だ。アルガ・ロンガ国と民はおれが全魔力をかけて守る。悪いが、この方針に付き合ってもらうぞ」


 おれの宣言にサミルが床に片膝をついて頭を下げた。


「もとより一生付いていく所存です。全ては我が君のご意志のままに」


 サミルの言動にこの部屋にいる王以外の人間、全てが床に片膝をついて頭を下げた。


「我らも国と民を思う気持ちは同じです。どうかご命令を」


「よし。ならば、次の作戦だ」


 おれの言葉に全員が立ち上がり、地図を見る。


「足の速いやつを集めた騎兵隊を準備してくれ。海上を片付けた後、おれはそいつらと一緒に退却中の親衛隊と合流して、動ける者とともに首都を目指す」


 おれの提案にドナート卿がはっきりと意見を言う。


「首都までは謀反軍が要所を占拠しております。一個小隊で進むには厳しいかと」


「謀反軍であれば、おれの魔力の強さは知っているはずだ。おれが本気で攻撃するように見せかければ退却するだろう」


「しなかったときは?」


「死なない程度に攻撃する。所詮はバンディニ卿の兵だ。命を落としてまで命令を遂行しようという者はいないから、逃げるだろう」


 おれの言葉に数人が笑いながら同意する。


「確かに。人望はありませんからな」


「あとは首都の周囲にいる味方を一斉に集められれば良いんだが」


 そこまで言って、おれは天井を見た。



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