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突然の自由

 そんな平穏ではない日々を過ごしながら気がついた時にはおれは十八歳の誕生日を迎えていた。


 その誕生日の朝、おれはベッドから起き上がると同時に、頭元に立っていた師匠に一つの荷物を渡された。


「誕生日おめでとうレンツォ。さあ、旅立ちなさい」


「いや、ちょっと待って下さい。なんで旅立たないといけないのですか?」


 おれの戸惑いに師匠が不思議そうに言った。


「成人したら旅立つものだろう?」


「それはどこの常識ですか?ちなみに、この国の成人は二十歳です。そして成人したら旅立つなんて習慣もありません」


 師匠はたまに自分の世界の常識や習慣を当然のように押し付けてくる。そして、今回のこの行動もそうなのだろう。


 師匠は納得したように頷いた。


「そうなのか。なかなか旅の準備をしないなぁ、とは思っていたんだ。ま、代わりに準備してあげたから行っておいで」


 そう言って荷物をおれに押し付けてくる。


「師匠、そんなにおれに出て行ってほしいのですか?」


「そうしないと、この荷物が無駄になるだろ?」


 おれはがっくりと項垂れた。


 この師匠はおれより荷物を選ぶ。そう、そういう人だ。まあ、一週間ぐらいかけて国内を旅すればいいだろう。


 そう考えておれは荷物を師匠から受け取った。


「わかりましたよ。じゃあ、ちょっと旅に行ってきます」


「五年間、頑張ってきてね」


「は!?」


「五年間、旅をするんだよ。あ、あと、その五年間は自分の国に戻ったらダメだからね」


「なんですか、そのルールは!?」


「昔からの決まりなんだよ。いってらっしゃい」


「ちょっと、まっ……」


 叫びも虚しく、おれは朝食を食べるどころか身支度を整える猶予すら与えられずに転送魔法でどこか分からない場所に飛ばされた。


 おれの身分のことを考えると師匠の行動は間違いなく処刑ものだ。だが、それを王に容認させることが出来る技量を持っている師匠だ。

 そして言ったことを必ず実行する師匠でもある。五年間はおれが祖国に近づけられないようにしているはずだ。


「おれの人生って……」


 一面が麦畑という長閑な風景が広がる中でおれはため息を吐いた。そして、一つの事実が浮かんだ。


「……カリーナがいない」


 ここにはカリーナがいない。あの常識外れの行動に振り回されることもない。自由に自分で行動することが出来る。


「よっしゃ!」


 おれの中で急にやる気が出てきた。


 この自由な五年間をどう満喫するか。


 おれは師匠が準備したという荷物の中身を見て、これからの計画を立てることにした。



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