プロローグ
はじめまして。
わたくし、一二一二三と申します。
センベイ先生が執筆した拙作、『故意的で好意的な恋』では一二英語教諭と呼ばれていました。
新参者ですが、これから何卒よろしくお願い致します。
さて私がここに書き記しますのは、他でもありません。ちょっとした手品についてです。と申しますのも、一見しただけでは奇術とも魔術ともまちがえてしまうような、不可思議な事件なのです。
とはいえ、百聞は一見にしかずでございます。それではご紹介いたしましょう。
その事件が起きたのは、私の誕生日パーティーの日でした。
自宅には親友の石田沙紀ちゃんと、先輩の小流杏子さん、幼なじみで仲の良い高島康平と、後輩の笹柳奈保ちゃん、さらに私を含めて計5人がいました。
夕焼けはちょうど沈みかけていましたが、時分は冬で午後5時頃であったように記憶しております。
私たち5人はこぞってリビングに集まり、座卓に置かれたバースデーケーキにロウソクを立てました。
酒池肉林とまではいきませんでしたが、それでもお弁当屋さんからオードブルを注文したり、お寿司の詰め合わせといったものも用意していたので、かなりの贅沢三昧でした。
そのようにして晩を過ごし、パーティーもいよいよ終わろうとしてきたところで、「お風呂いただくよ」
高島康平が腰を浮かせました。
「どうぞー。今日はわざわざ掃除まで手伝わせちゃって悪かったわね」
私はこの時、これから奇っ怪な出来事が起きるなど予測もできませんでした。
ただし推理小説に通暁した、聡明な読者諸氏は、この先の展開がおぼろげながら、または明瞭に想像できていることでしょう。
それでしたら、わざわざ隠したてたりせずにすぐに打ち明けてしまいます。
高島康平が死んでしまったのです。
それは何故か、仕掛けはあるのか、自殺か他殺か。質問事項は大なり小なりあると思うので、それをこれから一緒に紐解いていきたい所存であります。
さあこれから、事件のあらましを皆様に滔々と申し伝え、犯人や殺害方法を教えて、はい、おしまい。としてしまうのは、どうしても本望にあらず、出来ることならば一編の長編小説を作ってしまいたい心持ちなのでございます。しかし警察の捜査力を侮ってはいけません。今回のような事件であれば、1日は酷といえども、数日で解決に結びつけられますので、過剰に長引かせることは致しかねます。というような推移を得まして、酒脱かつ滑脱を念頭においた上で、明記させていただきます。
事件のあった日が私の誕生日と重なっていたことは、すでに申した通りでございますが、さらに蛇足させていただきますと、私は真冬の生まれでありまして、厄日は雪のうっすらと積もった季節でございました。またチラチラと降雪がありましたが、事件の起きる晩にはすでにやんでいて「今日は寒かったわね」と話の肴にもなったくらいですから気候についてはまちがいございません。
長らくまえおきのようなものを語ったため、お気を悪くされたやもしれませんね。それでは当日の朝から振り返ってみましょう。
読了、お疲れさまでした。
1日1作のペースで更新していきます。