間幕1-1
杏子と白熊ちゃんと共に港に着いた俺達は、次の便が翌日だと言う事で宿に来ていた
「じゃ、また明日」
「おやすみです」
「おやすみ」
2人に挨拶して自分の借りた部屋に入る
今までは常に杏子と同じ部屋だったのだが、白熊ちゃんと一緒に旅を始めてからというもの、ずっと1人部屋だった
初めの内は俺も部屋代がもったいないから一緒の部屋にしようと言っていたのだが
「かかか、仮にも男女が一緒の部屋なんてダメですよ! 」
などと言っていたが、俺が万が一、いや、億が一あいつらに発情したとしても、俺の相棒(棒だけに。これは面白い)はその牙を隠したままなのだ
まったく、おませな幼女である
「ふー。じゃあ、暇だし準備でもしておくか」
俺達は戦いに行く訳ではないが、万が一に備えて神蔵を整理しておこう
「……」
意識を俺の力に集中する
初登場の時は省略したが(まだ設定が定まってなかったとかでは断じて無いぞ! )俺の力は神の遺産を世界のどこかにある神蔵から呼び出す物で、意識を集中すれば俺の精神だけ神蔵に送り出す事もできる
「よし。繋がったな」
ここは神蔵。神様が創り出した様々な物が保管されている場所
「バッ=ズーカ君三世がこんな所に転がっちゃってるよ」
この間使った時に整理するのを忘れていた
「おっ。クロちゃんいらっしゃい」
蔵の奥からお婆さんが歩いて来た
「やぁトメさん。久しぶり」
「クロちゃん。毎回しつこいけど、整理整頓はキチンとしなきゃダメだよ? 」
「うす。すいません」
彼女の名前は神野トメ。この蔵の副管理人である
「管理人なんだからしっかりしないとね? 」
「あ、はい」
ちなみにトメさんは副管理人と言えど、特に何もしていない。強いて言えばたまに現れて俺に説教をして帰っていく、いわば旨味の無いボーナスキャラである
「あ、あと長居さんがちょっと不機嫌だから相手してあげな」
そう言ってトメさんは歩き去って行った
長居さんかぁ。確かに最近使ってないな
「ええと、長居さん。長居さん……いた」
俺が探していたのは長居=カタナさんという名前の長くて細い美しい剣である
「よし。じゃあ長居さん。素振りでもしよっか」
「ふぅ」
精神を体に戻した
「よーし。じゃあ行くぞ長居さん」
鞘から長居さんを抜くと、心なしか嬉しそうにシャランと鳴った
「とは言ってもここで長居さんは振れねーな」
長居さんは名前の通りに長い。目測で3メートルはあるから部屋とかじゃ振れない
「裏の森で良いか」
部屋を出て出口に向かった
「ふっ! とぅっ! いよいしょー! 」
長居さんを振り回す
まったくの我流の剣なので型とかは綺麗じゃないけれど、長居さんは喜んでくれているらしい
「とぉっ! 」
「ひぃっ! すみませんでしたぁ! 」
声がしたのでその方を向くと、長居さんの切っ先が男の喉元に当てられていた
あ、あ、あ、あぶねえええええええっ! もう少しで首がポーンでビャーだったぞ
「すみません! すみません! 仕方なかったんです! こうするしかなかったんです! 」
「いや、むしろこっちがすみませんなんだけど」
なんでこんな謝ってんだこいつ