第1章2-3
「さて、じゃあ次はどうする?」
「どうすると言っても、あと3人の神憑を捜すしかないですよね?」
「うん。白熊ちゃんは何か知ってることない?」
「うーん。何かあったかなぁ」
あ、っていうか
「流れで一緒に旅する事になっちゃったけど、大丈夫?家族とか」
俺と杏子はとある事件で両親共死んでしまったからこうして旅している訳だけど
「大丈夫です。私、もう何年も家には帰っていませんし」
「家出少女だったのか」
意外だ。白熊ちゃんの事はまだよく知らないけどとても家出とかする子にはみえない
「まぁ。家出と言えば家出ですね。だって、こんなのが家族にいたら気持ち悪いじゃないですか」
「……」
白熊ちゃんは笑顔で続ける
「あ、別に家族とか、周りの人達には神憑って事で何か言われた事とかは無いですよ? むしろ神様みたいに扱われてました」
俺達の村では俺達は特別な扱いとかはされた事はなかった。周りの子供達と同様に怒られたり、褒められたりだった
その事に対しては何か思った事はなかったのだが、白熊ちゃんの様子を見ると、あれは幸せな事だったのかもしれない
家族にも神様の様に扱われるのはどんな気分なのだろうか
「ま、という訳で私は旅に同行しても何の問題もありません。よろしくお願いしますね! 」
若干暗くなった雰囲気を払うように明るい声で白熊ちゃんは言った
「偉いなぁ。こんな小さいのに」ナデナデ
「ふんっ! 」ゴシャアッ
「おぽっす! 」
とても幼女から繰り出されたとは思えないボディブローをもらい、俺は沈んだ
「あ」
「ん? 」
宿で昼飯を食べていると白熊ちゃんが声をあげた
「そう言えば、ちょこっと噂で聞いたんですが」
「うん」
「先日、帝国で神憑が捕まったとかなんとか」
!?
「なんでそんな話を今まで忘れてたの!? 」
「いやぁ。聞いた時私、大分お腹が空いてまして、それどころでは無かったというか」
テヘッと舌を出す幼女白熊。あざとい奴である
「神憑を捕らえてどうする気なのか」
杏子が神妙な顔で呟く
「帝国だろ? ひょっとして処刑とか……」
帝国はとにかく神様が嫌いらしいからな
「それは最悪だな」
「ま、まぁその噂自体が嘘かもしれないですしね」
「まぁなぁ」
まず、普通の人間に神憑を捕まえる事ができるのか? ああ、帝国は神様さえ倒したのか
「しかし、火のない所に煙は発たないだろう」
「それもそうか……よし」
「え? クロノさん? ひょっとして」
白熊ちゃんがマジかお前といった表情で俺を見た
「行こうぜ帝国」
噂が嘘だったらそれはそれで良い事だと結論を出し、帝国へ渡る為に港へ向かう事になった