第1章1-3
「まぁとりあえず裏山に行くぞ」
「ちょっ、待てよ」
「似てねぇぞそれ! 」
「はて? 何に似てると思った? 」
……まぁいいか
「んで? どうしたんだよ」
「いや、腹がへ」
「うわああああ! 化物だあああああ!! 」ヒエェ
街の入り口の方から悲鳴があがる
「飯は後でな」ダッ
「あいわかった」
悲鳴の聞こえた方へ向かって走る
「オアー……オアー……オエッ」
「ひいいい! お助け! 」
悲鳴を聞きつけた街の警備兵と合流し、辿り着くとそこには見張りの兵士が腰を抜かして門の外を見ていた
「どうした? 」
「あ、あれ……あれ」ガタガタ
兵士の指差す先には数体のアンデットがいた
ちなみにアンデットというのは神様がいなくなってから調子に乗った帝国の科学者達が作り出した生物兵器で、その見た目と結構なタフさで一時期問題になった奴等である
10年位前に討伐隊が組織されて大規模な駆除が行われてからは一切姿を見なかったんだが
「取りこぼしだな」
杏子が呟く
「まぁあんくらいなら何も問題ないだろ」
ここは兵士の皆さんに任せておいて
「って、皆帰ってるよ! 」
スタコラサッサーと皆走り去っていた
「おいおい。こんなんで大丈夫かこの街」
「きっと皆お化けが嫌いなんだよ」
「……うーむ」
まぁ確かに所々腐ってドロドロしてるし、噛まれると痛いしな
「オアー…オエッ」ドサァ
あれ? 死んだ
見ると他のアンデットも次々と倒れていく
「ふぅ! これで皆に私が神憑だって解かって貰えるかな! 」
「うわ。びっくりした」
突然目の前に小さな女の子が現れた
「うわ! でらべっぴん! くー。私だってきっとこんな風に……はぁ」
そしていきなり落ち込んだ
「やーいやーい。童貞が女の子泣かしたー。やーいやーい。童貞のくせにー」
うざっ
「泣いてねぇだろどう見ても! ってか君、大丈夫? 」
見たところまだ10歳いってるかいってないか位の子供である。それがいきなり目の前に現れたんだからもうびっくり
「…ワタシモゼッタイコナフウニ…」ブツブツ
そしてなんかぶつぶつ言ってる! 怖い!
「おっと! 私としたことが取り乱しました! あなた方はチーッバの人ですか? ならば御安心を! この裏山に巣食っていたアンデットはこの私、白熊このみが全部退治しましたので! 」
「ん? アンデットを? 君みたいな幼女が? 」
「シャーップ! 幼女ってワードは私の前では禁句中の禁句! 次言ったら耳掃除を勝手にしますよ! 」
なにそれ御褒美?って、話題が逸れた
「もしかして君が先日来たっていう? 」
「ええそうです! 聞いて驚け! 見て萌えろ! 世界で6人しかいない神憑の1人。白熊このみの姿を! 」
「うるさいなこの幼女は」
杏子が大分冷めた視線を幼女、じゃなくて白熊ちゃんに注いでいる
「そっかそっかなるほど。よかった。君を捜してたんだよ」
「反応うすっ! ま、まぁいいでしょう。して? 私を捜していたとは……はっ! お礼のご飯を用意してくれていたのですね! 」
「いや、違う違う」
「違う……? はっ! じゃあ私のあまりの可愛さに性別の垣根を超えて襲い掛かろうっていう……きゃー! でもでも、やっぱり初めては好きな男性とー」
うざっ
「幼女が色めき立つな」ムンズ ギリギリ
「あぎゃああああ! 初対面の幼女に向かってアイアンクロオオオオ!? 」
すげぇ杏子……容赦ねぇ
そして自分で幼女と言ってしまった白熊ちゃんであった