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ただいま 検品中  作者: 黒田 容子
スピンオフー別編
9/14

ジジイの節介

真知子の上司:武藤の親父さん 視点のスピンオフ ショートストーリー

夏の夕方も見えてきた15時ごろ。

珍しく静かな午後だった。


殺風景な事務所には いささか不釣合いと写る長身の男が 礼儀正しくドアをノックした。

「おう、よくきたな。本社の若旦那さんよ」

実年齢よりも かくしゃくとした身のこなしで、初老の男が出迎える。

よく仕立てられたスーツに身を包む来客を相手にしても、男は少しも臆することなく 席を促す。

よく馴染んだ作業服に、年季の入った手ぬぐいを手にしていてもだ。



「お嬢に用かい?」

ったく、一言だけかい

相変わらず挨拶しかできねぇ旦那だな

ヘラヘラしてねぇだけ、可愛いがな。


さぁて どうすっかな。ウチの姫さんなら昼寝だ、どうするさね?


「急ぎかい?」

いや、と短く答える柏木

「近くまできたので、寄っただけです。中を見せていただければ」

可愛げがねぇなぁ。会いに来たんだろ、ウチのお嬢に。

「勝手に見て歩いていいぜ。」って言っても、いきなり倉庫に放すのも ちょいと酷か


棺桶が見えてきたジジイの目は、誤魔化せないぜ。

素直に、お嬢に構ってほしいって言えばいいのにな

スカ引いたツラが、分かりやすくていいねぇ


まぁいいや

ジジイは 手前らが見ててらんないんでな

ちょいと 手を出させてもらいやっせ

野暮とかいいなさんなよ、膳立てってやつだ


「若旦那さんよ、お嬢は 今頃 3階の中二階だ。」


この若旦那のことだから

年頃の娘が あられもないカッコで 昼寝してるなんざ 考えちゃいないんだろうな

嫁入り前の娘がと思うと、不憫でならねぇが お前が出てきたってのは、これで縁付いてくれればと 俺は思うんだわさ


あの子は良い子だぞ

ちいとじゃじゃ馬だけどな、性根は大事なトコのまん真ん中を突いてくる

親号本社を毛嫌いしてたうちのお嬢だけどな、お前さんが気にかけてくれるってのも 合縁奇縁ってもんだな

そこいらの赤鯡よか、確かに お話が通じそうだ。



さぁ、ジジイの節介に お前さんならどうする?

まぁせいぜい この老いぼれを楽にさしてくれや

男だったら ビシっと決めてくるもんだぞ



男は、あの後、彼らがどうしたのかは、知らない。

知る気も無かったが、それから一年後に「結婚します」と伝えてきた時は、

少しならずも、あの時に求めたのか、思い出しはした。

それとも、あれがきっかけで、進んだのか。

いずれにしても、求めたものを、受け入れた結果なのだろう。


「ま、幸せっちゅうのは、いいもんだ」

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