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ただいま 検品中  作者: 黒田 容子
13/14

良い子はさっさと帰りましょう。

枕元で、ガンガンとケータイが鳴ってる。

今何時? 目覚ましの音じゃないんだけど、これ。

ちゅーか、まだ夜中じゃね? 誰じゃい?

手元のケータイを手繰り寄せ、止めようとしたら「ん?鳴ってない?」


…ちゅーか… ここ、どこ?


昨日の記憶を手繰り寄せる。

確かにアタシは、酒を飲みまくった。

そして、柏木も飲みまくったのか、アイツは吐いた。

で、家まで送ってやってから…記憶が無い。いや、ある。

家まで送って、奴をベッドに押し込んで… アタシが、その場でヘタって寝ちゃったのか。


最後の記憶は…じつは、トイレ。

「明日、入出荷何があるんだっけ?一便、何時にくるんだっけ?」

思い出しているうちに寝ちゃったんだ…

で、今、自分はお布団の中ってことは?


「(ひぃぃぃぃ)」

本当にびっくりすると、人間 声も出ないらしい

隣には、熟睡中 メンズ:柏木竜一(34) 


ちょっと待ったぁ!

服は着てる!私も着てる! 昨日は何も無い!

みんな、お願いだから信じて! 何も無い!うち等の間には何も無い!

記憶は無いけど、何も無いはず!このまま帰れば、何も無いまま帰れる!


…よし!


動き始めてハッとした。そもそも、トイレで寝たってことは、パンツ下ろしてたって事よね。見られた!?!? マジ? ちょっと待ってよ。パンツとかスカートとかちゃんと履いてる。もしや、履かせてもらった!?

ガーン

ますます、こっそり帰るしかない!!


意を決してベッドから出ようとしたとき。

「待てよ。時間になったら、送ってやるから」

手首を掴まれた

「まだ夜中だろ? 今はよく寝て、シャワー浴びてから行くといい」

寝てたはずの柏木がとろーんとした顔で此方をみてる。

「大丈夫だ、なにも無かったから」

昨日はありがとう。かすれた声だったけど、それはもう、悩殺ポスターのような顔で微笑まれる。

「あの…」

トイレで爆睡の事実を聞きたいんだけど、怖くて聞けない。

「あまりに忍びなくてね、運ばせてもらった。」

身体を起こして、そりゃもう 手慣れてますって仕草で ベッドに引き戻される。

「今、夜中だろ?こんな時間に帰すのも、心苦しい。」

あのー アタシ誘われてます? それって、いろんな意味で貞操の危機!!

「そんな、怖い顔するなよ。男だって、女の人を家に上げるのは緊張するんだよ。

 下手に、後で面白おかしく噂話にされても困るし。

 むしろ、こんな夜中に『じゃあありがとう』で帰して何かあったら、それこそ。」

まぁ…そうよね

「話が早い奴で助かるよ。」


弱ってる男のは、こんなに色っぽく見えるもんなんだろうか?

それとも、これは、母性なんだろうか

「身体、大丈夫なの?」

「お陰さまで。昨日は、ありがとう」

起き上がった柏木は、Tシャツ短パン姿。

「あの後、何回か、風呂で吐いたんだけど、水を飲んで落ち着いてきたよ。」

声がかすれているのは、胃液なのか… それとも寝起きの色気3倍増し?

ふと、思うままに口から言葉が出た。

「ねぇ、普段、どんだけ尖がって生きてるの? 大して飲んでないのに吐くなんて。」

くすくす笑う声が聞こえる。「それは、お互い様だろ?」

片方は、吐いてうずくまって、片方はトイレで眠りこけた間柄。

なんだか、取り繕うのも馬鹿らしくて、お互い笑ってしまった。


「あんだけ仕事できるのに、横暴な傍若無人ぶりで周りを振り回して。何が得なの?

 重役秘書って、そんなに心労溜まるの?」

初めて、なんのスタイリング剤もつけてない顔をみた。

オールバックっぽい隙の無い髪形じゃない…プライベートな顔は、ウチのセンターにも一人はいそうなフツウの男の子だった。

「上司連中が、同じく横暴で傍若無人なんでね。ついついそれが染み込んできた。毎日、4人とか5人とかのVIP要求の我侭を一日中聞き続けてみろよ、気が狂うぜ?」

自嘲気味に笑った顔が、真実味を添える。

「まぁ、秘書課のチーフ汲んだりが、なんで物流部のコスト削減を手伝いに来るんだよ、って思ったくらいだからね」というのは、アタシの感想。

「君、やっといて~で投げられたんでしょ?」

「さすが、察してくれたか。 初対面の頃から、頭のいい子だなとは、思った。」

てれるぜ。もっと、褒めてくれても良くってよ。でも。

頭の良い『子』、『子』ってなによ。嬉しいけど、素直によろこべないんですけど。

「だいたいさ、そんな素振り、全然なかったよね。超俺様キャラで、散々ハナで笑われた気がする。」

「俺にとっては、あそこはアウェイだからな。気は張ってたよ」

確かに、完全無欠な存在っぽいキャラで、いつも接してた。


「気付かなかっただろ? 本当は…」

その先の声が掠れて聞こえなかった。

「え、なに? もう一回」

目の前の男の顔が、真っ赤になった。

「二度も言わせるな」

は? 聞き取れなかっただけだってば。

「センター行くのが、いつも楽しみだったよ。蕃昌サンに会いたかったからね」

か、からかわないでよ。慣れてないからこっちの顔も赤くなる。

その顔でこっち見ないで。アンタ、自分の顔がいくらイケメン面だからって乱用しすぎ!!

それを存分にご活用しながら、重ねて口説きに掛かってくる

「目を合わせないで話すのが、大変だった。」

ちょ、ちょっとまってー アタシが恥ずかしくて逃げ出したいんですけどー

甘い顔ってよりも、野生的な強い顔してこっち見ないでー 美男なのは分かった。分かったから見ないでー

「自分が勘違いしそうでね。 目がまっすぐで綺麗だからさ、視線が合うたびに、ずらしたよ。だから、いつだったかの駐車場で言ったのは、ジャブ。本気になりそうで怖かった。」

そして、また、反則のニヤリ笑いで「まだ提出してもらってないのにね」

ちょっと待ったあ! ハッキリさせようじゃないの

「あのー、口説いてます?」

「口説いてるよ。」キッパリ。すがすがしいまでに男らしく!!…っておい!

「だって、今日逃したら、接点が、どんどん減るだろ。口説くなら今日しかない。」

逃がさないからな、というギラリとした声。低くて響くから、なおさら怖いってば。

「送り狼ならぬ、送られ狼ですか」時代は、進化してますのう、一歩進んだ新しい作戦かい

「お前、はぐらかすなよ。それに、俺がこのまま襲ったら、セクハラで俺負ける。」

「じゃあ、襲って欲しいってこと?」このまま色気に腰砕けそう。

少しでも、小生意気なことを何とかやり過ごそうといてるんだけど、いかんせん 実戦経験がさびしいんで(自分で言ってて切ないよ)簡単に追い詰められていく。

「やれるもんなら、襲ってみろよ。」ニヤっと笑いながら挑戦的に、手招きしてる。

「それ、抵抗する気あるの? 『誘ってる』の間違いじゃなくて?」

「お前、同意の意思があるなら、押し倒すぞ?」


もうちょっと、色気のある会話がしたかったけどな。お互い照れ屋じゃ無理か。

そんな声が聞こえた気がした片隅で。

気がついたら腕の中で、気がついたら、キスされてた。

「俺は意外に一途だよ。」

びっくりするぐらい、早い鼓動。…アタシじゃなくてね。背中に回ってる手が、分かりやすいぐらい汗ばんでる。なんだか、こっちが緊張するっての。

「手慣れてる男だったら、このまま踏み切るんだろうな」

誘うようなキス。いや、「ような」じゃ無いだろ、誘ってるだろ!

「アンタねぇ…!」

ううぅ… 美形で上手くて、へんなトコでウブっぽくて。理性が解けるっちゅうねん。

「逃げない、ならそれでいい」


…で、その後の話?

書けるわけ無いでしょ! 事実上の朝帰りになったわよっ!!きゃー


ちなみに、後日 旦那の話では、「あの夜は、本当に緊張した」んだそうで。

一途なのは、本当でした。とだけ書いとくわ。

大人の読者様へご案内です。

「…で、その後の話?

 書けるわけないでしょ!」


ここに書けるわけがないので、書ける場所で書きました。

http://novel18.syosetu.com/n7884z/

アタシへの正しい口説き方


まっ 所詮、黒田の力量なので、17Rぐらいです。

怖いもの見たさなさりたい方、どうぞ ご覧くださいませ…

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