朝は・・・・・・
『終わりとは始まりである……
始まりとは終わりである……』
朝日が柔らかな光を世界に投げかけていた。
とある家があった。
家にはベットがあった。そのベットの上にはシーツの山が乗っかっていた。
家の中に澄んだソプラノの少女の声が響く。
「早く起きないとアドの分まで朝ごはん作っちゃうよっ。さっき、隣のマリカおばさんがおいしい卵を持って きてくれたのになぁ……。」
「…やめてくれ――――――。」
シーツの山の中から呻き声が聞こえた。少年の声だ。
それから、少しずつ少しずつ、少年の…アドーニスの寝癖のついた銀髪が出てきて……。
「遅いっ」
ソプラノの声の少女……セラフィナが痺れを切らしてカーテンを開け放ち、シーツをひきはがした。
「うわぁ・・あぁ・・まぶしいだろっ・・うぅっ」
不満そうな声をあげたアドを、薄情にもセラはきれいに無視。かわりに
「早く着替えてごはん作ってね」
と、声をかけながら部屋からでた。
勿論、顔はいちいちアドの方に向けたりしない。
「はいはい。」
呟きながらアドは着替えはじめる。
いつものパターンだった。
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「ねむい・・・。」
俺は着替えながらもう一度呟いた。
向こうの部屋からセラが急かす声が聞こえる。
「今行くからっ。朝から騒ぐな。」
とりあえず怒鳴り返してから急いで用意を終える。
今日はリュナとローザという傭兵上がりの夫婦に武術を教えてもらう日だ。
この夫婦は12,3年前に、この谷に流れ着いたらしい。
ここを気にいって、集落から少し離れた森の中で住むことにしたのだと本人達が言っていた。
「よしっ。」
俺は勢いよく扉を開き、
「・・・・・・。」
絶句した。セラが…朝ごはんの用意を少しでもしようと思ったのか…食器を両手いっぱいに抱えていた。
そして、そのままよろめく。なんとか持ち直したが……一番上のグラスが滑り落ちた。
「ったく。」
朝っぱらだというのに、俺は持ち前の瞬発力を生かして飛び出し、さっとグラスを受け止める。
そして近くのテーブルに置いてから、
「お前なぁ……。いつもいつもこうなるんだから…学習しろよ。」
呆れて怒る気にもならなかったが、一応言っておく。
「えへへ……。ごめんね。それよりご飯は?」
セラはなによりご飯が大切らしかった。
「……。今作るから座ってろ。」
「やったぁっ!」
ともかく…俺たちの日曜はいつも通り、慌ただしく始まったのだった。