22話 コイバナ
女子寮と男子寮は完全に分かれているため、ミルフィユは一足先にリシュラとユレイズと別れ、自身の部屋へと戻っていった。
その後、男子二人は沈黙の中男子寮へと歩いていたが、何かを思い出したかのような「あ!」というユレイズの声で、気まずい沈黙が破られる。
「……なぁ、リシュラってアレスティファさんのことが好きなのか?」
「な――ッ!?」
ユレイズの予想外の言葉で、リシュラは顔を真っ赤にしながらその場で固まる。
「ほぉ……その反応、本当にリシュラはアレスティファさんのことが……」
「それ以上は言うな!!」
声を張り上げ、無理やりにでもユレイズの言葉を遮るリシュラの顔は、いまだ赤いまま。
リシュラは自身の顔が赤くなっている自覚があるのか、口元を手で覆い、何とか自分の顔を隠そうとする。
「僕と彼女はただのお友達であって、そこに恋愛感情とかは一切なく……」
「じゃあ、リシュラはアレスティファさんのことをどう思っているんだ?」
狼狽えながらごにょごにょと喋るリシュラが物珍しく、ユレイズはからかいの意味を込めてリシュラに追及する。
「べ、別に……。ただ僕は、アレスティファ君のことを、もっと知りたいんだ……」
「と、言うと?」
「彼女はニコニコ笑っていることも多いが、それ以上に、何かに耐えるような、つらそうな表情をしていることの方が多い。だから、アレスティファ君が自分のことを自ら話してくれるぐらいの信用を勝ち取って、そして、僕自身の力で、彼女を笑顔にできるようにしたい」
「大好きじゃん」
「だから違うって!!」
リシュラは恋心というものがわからない。何せ、他人のことをこんなに強く思うなんて、生まれて初めてのことであった。
「……好きの定義が、僕にはわからないんだ」
頑なにユレイズからの指摘を否定し続けていたリシュラだったが、不意に、弱音とも受け取れるような発言をし、ユレイズを困惑させる。
「まぁ、俺も恋愛とかはしたことがないからよくわからないけど……。もしもミルフィユが危険な目にあって命を落としそうになった時、リシュラならどうするんだ?」
「もちろん、この命に代えてでも彼女を守る。それだけだ」
「なるほど……。なぁ、リシュラ。アレスティファさん以外でも、命に代えてでも守りたいって思うのか?」
「それは……」
正直、思わない。
救える状況であれば極力救いたいが、自分の命と引き換えにしてでも救いたいかと言われれば、違うような気がする。
「ここで悩むっていうことは、リシュラにとって、アレスティファさんは相当優先順位が高いっていうことの証明になるんじゃないのか? 自分の命に代えてでも守りたいって、そうとうだからな?」
「殿下……。あ、あの。一つだけ聞いてみてもいいか?」
「まぁ、内容にもよるけど……物は試しだ。いっぺん言ってみろ」
「じゃあ、遠慮なく……。その、嘘をついてでも他人に恋人に思われたいってのは、好きってことと同義なのか……?」
リシュラの予想外の発言に、ユレイズはポカンと口を開けながら呆気にとられる。
「お前……それは、重すぎるんじゃないか?」




