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ねこの手、貸します。 秋  作者: 白月 仄
にゃん二章 オータムフェス~準備期間中~
8/25

にのさん

 ──~♪~~♪♪~~♪……

 さて、残念ながら心底楽しむことが出来なかったささやかなお茶会がお開きとなったのち、服飾デザイン事務所を出たわたしは次の依頼の現場へと歩を進めている。

 そんな最中、ケータイが着信を告げます。

 取り出して画面を見れば、詩音さんからだ。

 わたしは歩みを停めて、画面をタップして出る。

「はい、もしもし」

『おう、少年、依頼お疲れさま。一味変わったケーキはどうだった?』

「……??」

 ──違和感。そう、詩音さんの今の詞は違和感だ。

 労いの詞はおかしくない。でも、その後の詞がおかしいのだ。

 これが、『melodia』での依頼の直後であったなら、わたしは違和感を覚えなかっただろう。

 しかし、水夏さんのところでの依頼で行った仕事は荷物運びと試作服のマネキンモデルだ。

 そのことはタブレット端末での依頼完了確認時に『お店』に自動で送信されている。

 それに、詩音さんはわたしが次以降に食べた物の甘味が変わるケーキを食べたことは知っているだろうが、その後に『ケーキを食べた』ことを知る術は無い。

 なので、詩音さんが言った『一味変わったケーキはどうだった?』は明らかにおかしい。この詞はわたしが味の変わるケーキを食べた後にケーキを食べたことを確信した上での前提としているからだ。

 詰まり、それは誰か────そう、誰か協力者がいるのだ!

 その協力者は……────?

『……お~い、少年、どうかしたのか?』

「……い、いえ、ちょっと考え事をしてました、すみません。それで何か用ですか?」

『あー、うん…………、用件はフェス』のライブ会場のステージをコネで今日使わせてもらえる事になったから今夜の練習は其処でやるから』

「そうですか、わかりました。ところで、詩音さんにお聞きしたい事があるのですが──?」

『ん? なんだい?』

「はい、『衣装』のことで少~しばかりお話が……──」

『……………………あー、スマン、少年、今日の練習場所の事を希ちゃんたちにも急ぎ伝えないといけないから、その話はまた後で。じゃあ』

 ──ツーツー……。

 逃げた!?

 でも、どの道『衣装』の話は避けては通れない。ようは遅かれ早かれ結果は一緒というヤツだ。

 ──~~♪~♪~♪……。

 また、着信だ。

 ケータイの画面を見れば、お父さんからのメールのようだ。

 アイコンをタップしてメールを開く。

 メールの内容は『『踊る妖精』のバージョンアップが終わったから、今日の夕方には届けに行く』というもの。




 ──まさか、この“お父さんが行った『踊る妖精』のバージョンアップ”が、この後に起こる惨事から『鏡合わせのテオミーム(彼女たち)』を救う“鍵”になるとは、その時のわたしは知る由もなかった。




 様々な出来事があれど、いつもと変わらぬ日常。

 そんな小さな変化が積み重なっていく日々を当たり前として享受していた。

 でも、大きな──劇的な変化は何の脈絡もなく訪れる。

 そして、この日の夜に劇的な変化が訪れかけてソレを『奇蹟的』に阻止できた、そのとき、わたしは初めて認識した。

 『小さな変化の積み重ね』が、如何に尊いものかを────────






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