いちのさん
──コロンカラン~。
「ただいま、戻りました」
「よう、邪魔するよ」
「おかえり~、カレンちゃん。それと、いらっしゃい、Sh……──」
「──本名で呼ばないでくれって、何度も言ってるだろ?」
「はいはい、いらっしゃい、奏くん」
『お店』に戻ると音恋さんが出迎えてくれた。
件のお客さんはといえば、応接セットのソファーにてマスターさんが淹れたであろう珈琲が甚く気に入ったのか堪能していた。
しかも、応接セットのテーブルの上を見てみれば、わたしが出掛けていた約一時間ほどの間に片手では足らない程の空のコーヒーカップが並んでいて、お客さんがかなりの珈琲好きな事がうかがえる。
「で、奏くんは何の用? 手土産なんて持ってきて、依頼かな?」
「いや、依頼って言うほどのものじゃないさ。ちょっくら、詩音に『オータムフェス』の事で相談があってね。居るかい?」
「そう。詩音くんなら事務室で作業してるはずだから、どうぞ」
「んじゃ、お言葉に甘えて上がらせてもらうよ。あ、コレ、詰まらない物だけど、歌音ちゃんに渡してくれるかい?」
「わかったわ。しかし、昨日言ってた事、本気だったのね?」
「おうさ。その為に今日は詩音に協力を仰ぎに来たんだからな」
なるほど、成る程。
音恋さんと音色さんのやり取りから察するに、音色さんの『用件』の詳細が朧気ながら見えてきた。
確か、『オータムフェス』のミュージックアートエリアでは『フェス』の最終日に其処で閉会式が行われる事になっている。そして、フィナーレとして毎年“有名無名プロ素人を問わず凄い歌い手”がそのフィナーレを飾るセレモニーで謳われる歌のメインを唄う大役に抜擢されているのだと、詩音さんから聞いている。
詰まり、今年の『オータムフェス』の大トリを歌音ちゃんが務めるかもしれないということ。
これが本決まりになったのなら、スゴい事だ。
「マスターさん、コレ、台所の冷蔵庫にしまっといて」
「はい、わかりました」
音色さんから受け取った歌音ちゃんへの手土産をしまっておくようマスターさんに頼み、わたしの方へと来る音恋さん。
「カレンちゃん、例の物を」
「はい、店長、『清美市について』のフリーペーパー各一部ずつ一式は確かにココに」
「ん、ありがとう。お疲れさま」
「はい」
わたしは頼まれて貰ってきたフリーペーパー一式を音恋さんに手渡して、受付けレジのカウンター内へと戻る。
「大変、お待たせしましたお客様」
わたしから受け取ったフリーペーパー一式を持って音恋さんはお客さんが待つ応接セットへとしたり顔で戻っていく。
「おいおい……、店長さん、まさかとは思うが、その紙切れの束がアンタが提示した情報が嘘偽りの無いことの裏付けになるだなんて言うつもりか?」
「はい、言うつもりも何も、コレが『当店』がお客様に提示した情報が嘘偽りでないことを証明するれっきとした証拠です!」
──バンっ!
そんな擬音が鳴りそうな勢いで、音恋さんは手に持っているフリーペーパー一式をお客さんの前へと差し出した。
「まずはじめに、この『清美市について』のフリーペーパー一式は市の観光課がきちんとした調査をした結果を元にして作成された公式なモノです」
疑り深いお客さんに懇切丁寧に説明をはじめる音恋さん。
お客さんの方もお手並み拝見とばかりに訝しむ表情は崩さずに音恋さんの説明に耳を傾ける。
「──そして、このフリーペーパーのうちの一枚『清美市について 都市伝説篇その壱』を御覧ください」
音恋さんはお客さんの前に差し出したフリーペーパー一式の中から目的の一枚を取り出して一番上に置き説明を続ける。
「こちらの『都市伝説篇その壱』には、この街で有名な都市伝説の一つの『悠久なる四季』についての記載がなされています。『悠久なる四季』の内容については──?」
「大まかにだが知ってるさ」
「でしたら、『悠久なる四季』の内容については省かせていただきますね?」
「ああ、構わない」
「では、説明を続けます。このフリーペーパーを御覧になられましたら、この街の地図が一目で目に付いたことと思います」
「確かに。紙面の真ん中にあるからな、気にしなくても目に付く」
「さて、ではこの地図が何かと申しますと、『悠久なる四季』の所在地を示したモノになります」
「ウソつけッ!?」
それは脊髄反射の如き電光石火な条件反射であろうお客さんのツッコミ。
しかし、そのツッコミに音恋さんはやれやれ感を一瞬出すも、すぐに通常営業に戻り説明を続行。
「ウソではありませんよ────」
──コロンカラン~♪
「いらっしゃいませ、ようこそ『にゃんてSHOP』へ」
音恋さんたちの成り行きが気になるも、別のお客さんが来店した以上、しっかりと接客しないと。
「お邪魔しますよ。店長さんは居らっしゃるかな?」
入ってきたお客さんは開口一番に店長である音恋さんの在否を尋ねてきた。
見れば、そのお客さんは壮年の男性で、秘書を連れている。
わたしは何度かこのお客さんとは顔を会わせたことがある。
それは、清美市の顔たるこの街の市長さん。
「はい、店長は居りますが……ただ、今現在は別のお客さまを接客していまして、恐れ入りますが暫しお待ちいただく事になりますが、どうなされますか?」
「そうですか。ふむ……。
君、確か私の今日のスケジュールはどうなっていたかな?」
「はい、市長の本日の日程では今現在から次の予定までは『ここ』からの移動時間を除いて二時間はフリーとなっております」
「ありがとう。
と、いうわけで、待たせてもらうよ」
「はい、かしこまりました。それでは、カフェフロアの方で暫しお寛ぎください。
ところで──」
──ちょいちょい。
お仕事モードを一時解除して、市長さんをちょっと手招く。
わたしのその動作に気付いてくれた市長さんは「何かな?」と近付いてきてくれる。
「つかぬことをお伺いしますが、普段お連れになられている秘書さんはどうしたのですか? それに、今日お連れの秘書さんはわたし初めてお目にかかるのですが?」
「──ふむふむ。順番にお答えすると、彼女には今日は別の仕事を頼んでいるんだ。次に今日一緒にきてもらっている秘書は先日に体力的衰えで退職したもう一人の秘書が「退職する自分の代わりに」と推薦してくれたので、退職した秘書の抜けた後に入ってもらったのだよ」
「そうなんですか。それで、その……──」
チラっと、市長さんにも分かるよう市長さんの後ろに控えている秘書さんの顔を視線だけで指差す。
「ああ、彼のマスクの事かい。なかなかユニークだよね」
「そ……──っ!?」
思わず、「そぉ~ですか?」と口から出掛けたが、なんとか押し留めた。
だけれども、わたしの心中では「怪しさ、大爆発!」や「なんで、お面の目と口の穴の部分が黒くなっていて、普通ならそこから見えるハズの顔のパーツが見えなくなってるの?」とか、疑問や何やらが溢れかえっている。
「なんでも、「仕事と私生活を区別する為」だって、彼は話してくれたよ」
「へぇ~、そうなんですか」
仕事と私生活を区別する為~? それなら、伊達眼鏡を掛けるとか小物やアクセサリーを身に付けるとか他にも色々とあるだろうに……、何でお面?
しかも、両目と口の三ヶ所だけに穴が空いているだけのお面。
伝説のホラー映画に出てくるアイスホッケーのマスクを被った怪人よりは幾分かマシだけど……………………十二分に怪し過ぎ!
「店員のお嬢さん、少しよろしいですか?」
「──!? あ、はい、なんでしょうか?」
はあぁー……、ビックリした~……。
市長さんの後方に控えていた秘書の男性がいつの間にやら市長さんの隣に立っていたのだ。
「つい今し方市長と、私めのお面についてお話をなされていたようですが──」
わおーっ、距離が近いから小声でヒソヒソと話していたのに、バッチリ聞こえていたんですね……。
「──コレは市長が仰られた通り、公私を区別する為に着けているのであって決して個性を出そうとかキャラクター付けをした結果とかではありません。まあ、ですが、此れだけでは理由付けとしては些か心許ないのも確か──」
いや、「公私を区別する為……──」だけじゃ理由付けとしては『些か心許ない』以前な気がするんですけど……。
「──店員のお嬢さんにご理解いただけるには…………フム…………──致し方ありません、私めの趣味についてお話しする他ないようです」
いえ、そんなことまでは聞いていないです。
「実は私め、お恥ずかしながらアンティークのテレビゲームを趣味としているのです。そこで、とあるゲームのキャラクターに感銘を受けまして……────」
あー、このお面の秘書さんはお父さんと同類だ。ちなみに、お父さんはアンティークのアニメのマニア──他にも幾つかマニアックだけど……──だ。対象は違えど、お面の秘書さんの話を聞くに、同じ年代のアンティーク趣味仲間。しかも、アニメとゲームは近しい関係。
それに、お面の秘書さんは『感銘を受けたキャラクターが身に付けていたのと同じお面を身に付け』、お父さんは憧れ故に『夢にまで見たアニメさながらの玩具を開発した』のだ。
多分、お父さんとお面の秘書さんは気が合うんじゃないかな──?
──「で・す・か・ら! 再三、申し上げています通り『ココ』が『黄金の海原』の所在地なんですってばッ!!」──
「────……ですので、……はて? 何事でしょうか?」
それは、お面の秘書さんがいまだ『仕事中、お面を付けている理由』を述べている最中に響いた音恋さんの絶叫。
お面の秘書さんが事情説明を中断して顔を向けるほどのその声量に、わたしも市長さんも無意識に顔を音恋さんと依頼のお客さんの方へと向ける。
すると、そこにはペンギンのギーペに対して以外ではあまり見た事が無い怒り心頭に発した音恋さんと頑として音恋さんの説明に納得する素振りもないお客さん。
状況は平行線に陥っているようで、さっきの音恋さんの絶叫以降は睨み合いになっている。
……。
…………。
………………。
「──おやおや、いつもたおやかな店長さんが怒鳴られるとは、どうかなされたのですかな?」
険悪な雰囲気になっている音恋さんと依頼のお客さんの間に躊躇なく割って入っていく市長さん。
流石、人の上に立つ立場の市長さんだ。若しくは、市長さんの人柄なのだろう。険悪ムードなど、なんのそのだ。
「──!? これは、市長さん! お見苦しいところを。
いえ、こちらのお客様が『『黄金の海原』の所在地について』お知りになりたいと依頼なさってきたので、今現在、進行形で懇切丁寧にご説明していたのですが……──」
「おい、アンタ! ズリぃーぞっ!! その人、市長っつったよなッ?! 公的権力を持ち出すとか、卑怯だっ!!」
「……あの、お客様、確かに私はこちらの清美市の市長さんとは顔見知りですが、市長さんのお力を借りるようなことはありま──……………………そうですね、お客様に『当店』が提示した情報が“嘘偽りの無い事”を信じていただくには────もう、市長さんのお力を借りる他、致し方ありませんね」
「うわッ、マジ卑怯っ!!」
「はい、卑怯で構いません。一度請けた依頼は余程の事がない限りは完遂するのが『当店』のモットーです! なので、依頼を完遂する手段が目の前にあるのなら何でも用います!」
──ドーーーンッ!!
市長さんの介入に平行線からの突破口を見出だした音恋さん。
その音恋さんに対してお客さんは卑怯と謗るも、音恋さんは一顧だにせず一蹴。
さらに依頼完遂の光明を見出だした音恋さんの気迫が炸裂!
「うのゎっ!?」
その炸裂した気迫にお客さんは堪らず身体を仰け反らせる。
「──という訳で、市長さん、お力添えを願えますか?」
「ええ、いいですよ」
二つ返事で了承する市長さん。
市長さんからの色良い返事を得て音恋さんは気勢を増して得意満面──ドヤ顔に。
「ありがとうございます。では早速ながら、市長初就任の際に行われる『慣例』の事を、こちらのお客様にお話し聴かせていただけますか?」
「……ふむ……成る程、そういうことですね。わかりました。
お客人、少しばかり私の話にお付き合いいただけますかな?」
市長さんはどうやら音恋さんからの要請に得心したようで、お客さんに『慣例』の話をするみたいだ。
ところで、一体、市長初就任の際に行われる『慣例』ってどんな事をするのだろうか?
「へ……へっ、い、いいぜ、聞いてやるよ」
強気な態度のお客さん。ただ、音恋さんの気迫によって仰け反ったときのダメージは抜け切ってないようだ。
「ありがとございます。それでは、この清美市で初めて市長の職に就いた者が行う『慣例』について、お話しします。
────ここ清美市では市長に初当選した者は通常業務が始まる日より前に、『この街が未来末長く繁栄すること』を願って“辿り着けたなら幸せになれる”とされている『悠久なる四季』の全四ヶ所のスポットを巡るのです。────
因みに、私は諸事情で『黄金の海原』には訪れる事が出来ず残念ながら三ヶ所までしか巡れませんでしたが。
さて、聡いお客人ならお察しになられたことでしょう?」
『慣例』のことを語り終えた市長さんはお客さんに問う。『この話が何を意味しているのか?』を。
この街の市長に初当選したら“『悠久なる四季』の全スポットを巡る”──それは即ち、“『悠久なる四季』の全四ヶ所のスポットの所在地を正確に知っている”ということ。
そして、それは同時に市が発行しているフリーペーパーの『清美市について 都市伝説篇その壱』に記載されている『悠久なる四季』についての地図情報が嘘偽りでないことの確たる証拠であり証明。
その事実に、ついに頑なまでに音恋さんの説明に納得しようとしなかったお客さんは、
「──わかったよ、アンタが提示した『情報』が正しいモノだって認めてやるよ」
折れた。
「それは良かったです♪ それでは、こちらの依頼完了確認書の方にサインをしてください」
それを確認した音恋さんは既に用意していた依頼完了確認書を出してお客さんにサインを要求する。
「チッ。……ホラよ」
お客さんは舌打ちをするも、素直に依頼完了確認書へサインする。
それを見て満足顔の音恋さん。
「はい、確かに。では、依頼料のお支払い方法はどうなさいますか? キャッシュ・カード・振り込みと選べますが」
「……じゃあ、カードで。──っつうか、キャッシュレスが当たり前の現代にキャッシュ??? 現ナマなんて記念品か化石扱いなのに……──」
あ、やっぱ、初めてこの街では現金が使われている事を知ったときは驚くよね。
「ところがどっこい、この街での料金の支払いには現金での支払いが五割を超えるわ。ついでに言うと、完全キャッシュレス化以降は記念品扱いだった現金を再び貨幣の座に返り咲かせたのは何を隠そうこの街なんだから!」
「マジ……かよ……?」
俄かには信じられないとお客さんは市長さんに問う。
「本当ですよ」
その問いに対して、市長さんは「事実である」とそう返した。
「それじゃ、ぱっぱと会計お願いしますね。レジはコチラです」
これにて依頼もお話しもお仕舞いと、応接セットからお客さんを連れてレジカウンターに来る音恋さん。
わたしは邪魔にならないよう場所を空ける。
「ん、ありがとう」
音恋さんはレジに立ち、お客さんのお会計をはじめる。
──ピッ、ピッ、ピッ……。
レジに情報が打ち込まれ、請求額と内訳が画面に表示される。
「はい、依頼料とお客様がお喫みになられた珈琲代を合計しまして────」
「──ちょっと待ってくれッ!」
「はい? なんでしょうか?」
「珈琲代ってナンだ?! しかも、依頼料よりも高いとかおかしいだろ!?」
「いえ、おかしくありませんよ、お客様。最初の一杯はマスターさんからの無料提供ですが、おかわりなされた分はしっかり頂きます」
「……チッ。珈琲代が発生していることは理解した。──だがな、値段がおかしいだろ! 何だよ、珈琲五杯で三万って!? 一杯が六千って高過ぎだろうがッ!!」
「そんなことありませんよ? お客様のお喫みになられた珈琲の豆は超貴重な南米産の一級品で年代物のプレミア中のプレミア。『当店』より洒落た店で喫んだら、一杯だけでも万は下らない筈ですよ」
「詐欺だッ! 豆の種類の確認なんてしてなかっただろ?!」
「お客様、「詐欺だッ!」なんて人聞き悪いことを店先で宣わないでください。それに、お客様が珈琲をおかわりなさった時にマスターさんが豆の種類を聞いた際にお客様は「同じので」って、注文なされたじゃないですか。私、ちゃんと聞き覚えてますよ」
「──うくっ!? ……………………あ、あー、そう……だったかな……?」
「そうですよ!
ねぇ、マスターさん」
「はい、確かに。「同じので」と注文を受けました」
「──だぁーーっ!! わかったよっ! きっちり珈琲代も払えばいいんだろッ?!」
「毎度あり~♪」
お客さんは納得行かないといった顔で渋々とカードをレジのカードリーダーにかざす。
──ピロンッ♪
支払い完了の効果音が鳴り、レジからレシートが吐き出される。
「またのご利用、お待ちしてます♪」
「二度と来るか、『こんな店』!!」
音恋さんから差し出されたレシートを引ったくるように受け取り悪態を吐くお客さん。
そんなお客さんに、音恋さんは「心外だな~」と言った顔で、
「お客様、これはそもそもの話ですが──お客様が『当店』が提示した情報を然程疑うことなく納得していただいていたのなら、依頼料は基本料金のみで、さらには珈琲の豆の種類をうっかり確認し忘れて高い珈琲を何杯も喫むなんて事にはならなかったのに──ま、初対面の相手が示した情報を鵜呑みしないのはいいですが、疑い過ぎて頑なに信じないのも如何なものかと思いますがね」
野次った。
「──ぬなッ!!!!!? …………、ぐっ……! …………ハァ~…………」
そして、音恋さんの野次を聞いて自分が墓穴を掘っていたことを知ったお客さんは何やら自問自答した後に自身の失態に肩を落として『お店』をトボトボと後にしたのだった。
「────って、ことが午前中にあったんです」
「へえ~、そりゃなんとも気の毒なお客さまだな」
「そうですよね。音恋さんもトドメの一撃を止めたくらいの落ち込みようでしたし……」
「確かにな。なにしろ『ウチ』に依頼しなくても、“駅の出口前に設置されてるこの街の地図”に“『悠久なる四季』の全スポットの所在地が載ってる”からな。実質、金を払わなくても手に入る情報なわけだし……──本当、気の毒だ」
「ところで、音色さんの『話』は受けるんですか?」
「アイツからの『話』……?
…………ああ、あの『話』ね。そうだな。歌音には事後承諾になるが、受けることにしたよ。なんたって────」
「「なんたって──」って、何?」
「────へ?」
「あ、おかえり、歌音ちゃん」
「ただいま、カレン、……それと、お兄ちゃん」
「お、……おう、おかえり、歌音」
「それで、「なんたって──」の続きは? そ・れ・と、その前の『わたしの事後承諾』云々ってのは?」
時間は十五時半を既に過ぎて、もう間もなく『ねこカフェ』は平日のピークに入る時間帯。
わたしも普段は学校が終われば直ぐに帰ってきて『ねこカフェ』の制服に着替えて手伝い──音恋さんは「シフトに入ってない日はいいよ」って言ってくれているが──に入る。
なので、学校が休みでも今日は平日なので既に『ねこカフェ』の制服に着替えてある。
「……えーっと、それはだな……──」
「──今日、音色さんが来てね『『オータムフェス』の閉会式のセレモニーでやる歌のメインの歌手を歌音ちゃんに』って話だよ」
「ちょっ──少年!?」
「へぇ~、そう。だから、『事後承諾』、ね。
……──お兄ちゃん、悪いんだけど音色さんを『ウチ』まで呼び出してもらえるかな? お兄ちゃん共々、お話があるから、ね?」
「なんで、いま話しちゃうかな?」といった目でわたしのことを見る詩音さん。でも、遅かれ早かれこうなることは詩音さんも予想していた思うのだけど……?
まぁ、過ぎてしまった事は仕様がない。
後はなるようになるだろう。




