よんのろく
それからは、ペンギンのごちていた通り実に忙しなかった。
先ずはペンギンの指示に従ってアタシが『黄金の海原』の南側の出入口を開放した。
そしたら、なんということでしょう。最初は地平線の先まで続いていた麦畑の南側が途中で途絶えて、それまでは無かった農道が姿を現したではありませんか。しかも、農道の先に目を遣れば其処には舗装された道路迄もが目に入る。
そして、そこから約2時間ほどの後。
先程見た農道の先の道路から複数台の警察車両がやって来て、顔見知りの刑事さんの指揮の下、後の検証の為の現場保存やら日立さんのお父さんの遺体の収容などがなされた。
それから、形だけとはいえ事情聴取をする為に市内の警察署に行くことになったのだが、その段になって漸くアタシ達は巨大猫のみぃの姿が見えないことに気付き、警察の方々の助力を得ての“巨大猫みぃ大捜索”が急きょ行われ、なんとか無事にみぃを発見。
一波乱があったけど、あとは先の予定通り、形だけの事情聴取を行いに警察署へ。
──数日後。
清美市の隣の十形布市にて、日立さんのお父さんの葬儀がしめやかに執り行われた。
それにしても、日立さんのお父さんは顔が広かったようだ。
列席者の顔ぶれの中には現農相から歴代農相の代議士多数、有名企業の社長や会長の代理として情報媒体で見た事のある企業の重役の人たち──これまた多数等々がいたのだった。
さて、どうして日立さんのお父さんの葬儀を清美市ではなく、隣の十形布市で執り行っているかというと、清美市には火葬場と墓地や供養施設が無いのだ。それ故、必然的に葬儀は近隣で1番近い十形布市で行われる。
──葬儀は恙無く進み、日立さんのお父さんの遺体は石葬された。
石葬──亡くなった方の遺体を火葬した後に更に手を加えて、遺骨を真珠大玉サイズの玉状にし、これを“遺石”と呼び、亡くなった方の遺体をこの遺石にして葬送する事を“石葬”と呼ぶ。
「──まったく、親父もこんな小さくなっちまいやがって……──」
日立さんはお父さんの遺石を手に感慨深げに語り掛ける。
「──……ま、これで漸く、母さんと本当の意味で再会できるな」
そう言って、日立さんは小さな小箱を取り出し、蓋を開ける。
開かれた小箱の中には凹みが2つあるクッションが敷かれており、既に1つの凹みには先客が鎮座していた。おそらく、それは──
「──お帰り、親父──
これで、また家族一緒だな────」
そう言うや、日立さんはお父さんの方の遺石を小箱の中の空席になっていたクッションの凹みに納め、蓋を閉じて小箱を大事に仕舞う。
「──いやー、まったく、音恋さんにはお世話になりっぱなしだな。まさか、親父の葬儀の手配から費用まで出してくれるなんて。ちゃんと恩を返せるかな?」
「さあ?」
「……おいおい……、其処はウソでも“ちゃんと返せる”くらいは言ってくれよなー、スミス」
「どうして、アタシが日立さんをヨイショしないといけないんです?」
「──ホラ、其処はソレ……。ってーか、僕の呼び名、中学ン時みてーに“メェ~君”で構わねーぜ。つーかさ、スミスから“日立さん”って呼ばれるの、スンゲーむず痒いンだわ」
「…………そうですか。分かりました、メェ~君」
アタシもメェ~君のことを“日立さん”と呼ぶのは少し“他人行儀が過ぎるかな~”と頭の隅で思っていた。
実際、咄嗟の場面では“メェ~君”って呼んじゃってたし……。
「それで、メェ~君はこれからどうするんです?」
「“これから”って言われてもな~……。まあ、少なくとも雇ってもらった手前と音恋さんたちの恩義に報いるために一年間は『お店』で頑張るさ」
「それからは?」
「“そらからは”は……そうだな……、そのときになってから考える!」
そう言った、メェ~君の言葉は冬へ差し掛かっ……────
「『──な~に、二人だけの世界に浸ってんだ、小娘とぽんこつは?! アレか? 此れから、ラブロマンスでも始めるのか(笑)?』」
「──なっ!?」
「──なっ!? 何を言い出しやがる、この鳥モドキがぁーー!!」
…………あーあ、折角、いい雰囲気での〆だったのに、これじゃ、ペンギンの所為で台無し。
──でも、これが、いつものアタシ達らしいと言えばそうかもしれない。
新たにメェ~君が『お店』の仲間になり、更に賑やかになった『にゃんてSHOP』は本日も鋭意営業中です♪




