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ねこの手、貸します。 秋  作者: 白月 仄
にゃん四章 黄金の海原
20/25

よんのさん

 ──って、なワケで、やってきました今週末。

 空は高く、雲もまちまちな秋晴れ。

 空気は冬に向かって少し肌寒い今日この頃。

 さて、結局のところ『黄金の海原』に行くメンバーは、ペンギンが言った4名と『黄金の海原』に興味津々のカレンちゃんと巨大猫のみぃ、大学生さん、あの晩は半分以上寝てた歌音ちゃん、そして、あの場には居なかった希ちゃんと叶ちゃん。──ほぼ全員だ。

 ちなみに、音恋さんはというと、みぃ以外の猫達を放ってはおけないとかで、お留守番。

「あのー、詩音さん」

「ん? 何だい、鳴君」

「『黄金の海原』へ行く道って、今進んでる方向とは逆なんじゃ……──?」

「? ああ! 鳴君、そいつはな、『黄金の海原』に行く道は二つあって、一つは今オレ達が向かってる北側から行く道で、もう一つが南側から行く道なんだが、南側から行く道は内側──『黄金の海原』内──からしか“開ける”ことが出来ないらしいんだわ」

「はぁー、そうだったんですか。

 あ、“道が二つある”ってので思い出したんすけど、清美市(この街)って出入りする交通手段が鉄道しかないみたいっすけど、どうしてですか?」

 あー、それ、アタシも気になってた。

 清美市ここへの出入りは鉄道だけで、それ以外の陸路──道路は地図上には1本も無い。

 少なくとも、鉄道を敷いたのだから、鉄道を建設した際の工事車両専用の路くらいはあってもいい筈なのだ。

「ああ、それな。実はな、清美市(この街)が建造されていた当時は工事車両が通るための道があったんだが、鉄道の完成と街が地方都市として機能するようになった頃に国の決定で実質“第伍の自衛隊──通称、武士もののふ自衛隊”──“武自ぶじ”によって封鎖され、現在に至るまでその封鎖は続いてるんだ」

「へえ~、そうなんすか。ってか、武自って実在したんすね。僕の識ってる話じゃ、“武自”は尖閣諸島が某国に不法占拠された時の奪還作戦で同盟国軍と共に勇敢に戦い、見事、島々の奪還に成功した自衛隊員に誰からか送られたニックネームってことだけっす。それ以降の幻の第伍の自衛隊ってのは都市伝説としか思ってなかったっす」

「ま、普通は鳴君の思ってた通りが当たり前さ。オレだって、偶然にも知り得たから識っているだけで、そうでなかったら鳴君と同じ認識だったさ」

 ほぅ~、自衛隊って、陸海空と空自から派生した宇宙の4つだけじゃなかったんだ~。

 そんな他愛もない事を話ししながら幾何か進むと、見えてきたのはグランドパークの入り口。

 まあ、『お店』から近い所のバス停でバスに乗り、降りたのが『清美グランドパーク入り口前』なのだから当たり前なのだが。

「あの~、このままじゃ、グランドパークに入ることになるっすがいいんすか?」

「ああ。『黄金の海原』に行く北側の道にはグランドパーク内の南側にある森林ハイキングコースの中から入るんだ」

「そうなんすか。あ、でも、ハイキングに来た人たちが迷い込んだりしないんすか?」

「『『黄金の海原』に行く北側の道は南側の道や他二ヵ所とは違って二重のセキュリティになってる。つっても、『道』に入る為に特定の道順で歩くだけなんだがな』」

「ほー、そりゃ、またどうしてなんだ? っつうか、僕は詩音さんに聞いたんだが……」

「『ハッ。いちいち、ぽんこつの質問に歌のにぃちゃんを煩わせるのもあれだと思って、オレ様が代わりに有り難くも答えてやっているんだ。

 話を続けるぞ。

 元々は『道』に入るルートしかなく立ち入り禁止になっていたんだが、立ち入る輩が後を絶たなかったもんだから、止む無くカモフラージュする為のハイキングコースを作ったんだ』」

「“立ち入る輩が後を絶たなかった”って、何でまた?」

「『……かー。ぽんこつ、てめぇーは其れでも魔道士の端くれか?

 じゃあ、あれか。てめぇーは極東の『協会』がどうして清美市(この地)に本拠を構えてるかも識らないって言うんじゃねぇーだろうな?』」

「いや、全然知らん」

「『…………そうか。なら、これ以上話しても無駄だな。んじゃ、この話は此処までだ。

 ──ただ、オレ様の話の続きを知りたきゃ、さっき言った『協会』の連中が清美市に本拠を置いた理由を調べんだな』」

「──んだよ、話してくれてもいいしゃねーか。鳥モドキはケチだな」

「『フン。ケチで結構』」

 ペンギンはそう日立さんに言うや、外方を向いて日立さんには取り合わないとの意思表示。

 対して、日立さんは答えのお預けをくらって、モヤモヤを抱えて釈然としないといった思いが顔に出ている。

 アタシは詩音さんに視線で合図を送る。

「……」

 ──フルフル。

 しかし、詩音さんはかぶりを振り、返答はノーだった。

 ペンギンが日立さんに話すのを止めたついさっきの話の答えをアタシは──いや、日立さんと大学生さんを除くこの場に居る全員(巨大猫のみぃはどうかは知らないけれど)が知っている。

 そう、今年の夏に音恋さんと詩音さんを付けて立ち入った中央公園にあるドームから出た後で、先程のペンギンの話の続きに該当する内容の話を詩音さんから十全ではないけれど聞かされたのだ。

 ただ、詩音さんは話の最後に「既に識っている者や引き返せない所まで踏み込んでしまった者以外には絶対に他言無用だ」って念押しをして、話を終えた。

 詰まり、日立さんは“引き返せない所まで”は踏み込んではいないということ。

 もっとも、アタシは何処からが“引き返せない所”なのかは知らないけど……。

「お、園内バスが来たぞ」

 詩音さんの声に意識を思考の海から現実に戻すと、パーク内を巡回するバスが停留所に停車の為、スピードを落としながら近付いてくる。

 実はこの『清美グランドパーク』は敷地面積が、清美市の市街地と同等かそれ以上の広さをほこる。

 なにしろ、パーク内には遊園地や動物園をはじめ、レジャーやスポーツにサブカルチャー教室等々の多種多様な施設があり、それら内包しても有り余る圧倒的自然の宝庫。

 それが、『清美グランドパーク』なのだ。

 歩きでパーク内を廻ろうものなら、パーク入り口から近いところでない限り、目的地に着くまでに瞬く間に時間が過ぎてしまう。

 なので、パーク内には巡回バスが走っているのだ。

 これからアタシ達が向かおうとしている『森林ハイキングコース』はパーク内案内図によればパークの最南端。パーク入り口から直線距離で約15キロの位置だ。

 ──プシュー……。

 停留所に停車した巡回バスが乗降口のドア開け、降車客を吐き出す。

 アタシ達は降車客が出尽くすまで待ち、降車客が吐けた後、巡回バスに乗り込む。

「いや~、やっぱ園内バスに乗ると、バスに乗った感がパないわね~」

 乗車一番、希ちゃんが感想を口にする。

 ──って、

「じゃあ、市街地を走ってるバスは……その、……バスっぽくないってこと?」

「そうね。あたしにとっちゃ、普通のバスは一両編成の電車と同じ感覚ね。やっぱ、バスといったら運転手さんが居てこそバスなのよ!」

 現代において、自動車は完全自動運転が当然な昨今、ここ清美市では公共交通機関(一部のタクシー会社は除く)を除き個人所有車での手動運転率は軽く5割を超えている。

 かくいうアタシも、『お店』の車を扱う上で必須な車の運転免許取得に、このパーク内にある自動車教習所に足繁く通った思い出は記憶に新しい。

 ただ、園内バスにおいても基本は自動運転なワケで、運転手はいわば緊急事態に対する保険。

「そうだよね、希の言う通りボクもバスっていったら運転手さんが居るべきだと思う」

 叶ちゃんも、希ちゃんの言い分に賛同のようだ。

「わたしは運転手さんが居るのは、ちょっと違和感かな。行楽地とかなら分かるけど」

「確かに。オレも歌音うたねの意見に賛同だ。公共交通機関の自度運転システムは常に事故の無いよう最新のヤツに随時更新されてるんだからな」

 詩音しおんさん・歌音うたねちゃん兄妹は運転手いなくてもいい派か。

 あ~、でも、歌音ちゃんが「行楽地──」云々って言ってたが、…………一応というか、グランドパーク(ここ)はほぼ行楽地じゃないかなと、アタシは思う。

「『ハッ。バスに運転手が乗っているかどうかなんて、オレ様にしたらどうでもいい事だ。序でに言うが、歌のねぇちゃん、グランドパーク(此処)は行楽地だぞ』」

「え~、確かに園内にある遊園地とかはそうかもしれないけど、グランドパーク(ココ)全般は行楽地じゃないよ」

「そうだな。確かにグランドパーク(ココ)には観光客が沢山訪れるが大抵は遊興施設ばかりで、公園そのものとして活用しているのはオレら地元住民の方だしな」

 を~、これはもしかしなくても、“端から見れば行楽地だけども、長年住み続けている地元民としたら地域の憩いの場”という余所者又は住みはじめて日の浅い人と長年住んでいる人の場所に対する認識・価値観の齟齬あるあるだ。

「あー、僕はシャクだけど……──」

「『──つーかよ、バスの事でふと思ったんだがな、現在いまある工学やら科学やらの技術を総動員したら、かの伝説の多脚猫型バスを再現出来んじゃね?』」

 多脚猫型バス、か。

 確か、昨日の夜にテレビでやってた古いアニメ映画の中に出てきたやつだよね。

「ダメよ、ギーペ。そんなメジャー過ぎるデザインじゃ、作品の有名度だけが取り上げられて現代技術の粋を集めたモノって理解してもらえない可能性があるわ」

「『む~、……確かに、希の言い分にも一理あるな。だとすると、だ。どんなデザインの多脚型バスがいいか……?』」

「在り来たりなら、虫とか蜘蛛あたりがいいじゃないかな? ボクは虫も蜘蛛も苦手だけど……」

「それなら、蟹や海老もアリなんじゃないか。オレとしては、伊勢海老か高足蟹あたりがいいと思うが」

「奇をてらって、蛸や烏賊なんてのはどうでしょう?」

 会話の内容は、“バスに運転手がいるかどうか?”から“多脚型バスのデザイン”へと移行し、盛り上がるアタシ達。

「きびさん、蛸や烏賊じゃ、バスの体を為さないんじゃ……?」

「えっと……、僕は……──」

「『──ヘッ。これだから、小娘は。奇を衒いすぎるのも如何なものか、だぜ』」

「っさいわね、ペンギンは! 空想話なんだからなんだっていいじゃない」

「そうだぞ、鳥モ──」

「『ハァ~。あのな、小娘。いくら空想話とはいえ、少しはリアリティを考えろよな』」

 うわ、腹立つ~……。

 ていうか、日立さんは悉く間が悪いな~。ついでに、大学生さんは終始無言だし。

 発言した途端、ペンギンがタイミングを謀ったかのように横やり的に発言して、日立さんの詞は封殺されてしまっている。

 いや、もしかしたら、ペンギンの事だから故意にやっている可能性がある。

 ──あ……、日立さんが発言を封殺され過ぎて凹んでる……。



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