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ねこの手、貸します。 秋  作者: 白月 仄
にゃん一章 オータムフェス~準備開始~
2/25

いちのいち

 ──主な登場キャラ紹介──


 ・ひびき カレン/少年

 東京からやってきた少女。『にゃんてSHOP』の下宿人。アルバイト店員第三号。


ぷろろーぐ、一章、二章、語り部


 ・きび(←ニックネーム)/嬢ちゃん

 『にゃんてSHOP』店員の女性。


三章、四章、えぴろーぐ、語り部


 ・音恋ねこ/店長

 ねこが大好きすぎる“ねこ第一主義”の『にゃんてSHOP』の女性店長。


 ・詩音しおん/副店長 /音羽おとは りつ

 『にゃんてSHOP』の副店長を務める男性。副業でシンガーソングライターをしており、詩音しおんは芸名。


 ・音羽おとは 歌音うたね

 詩音の妹。ねこカフェのカフェフロアを任されている。


 ・夢野ゆめの のぞみ

 『にゃんてSHOP』のアルバイト店員第一号。後述の夢野 叶とは双子。


 ・夢野ゆめの かなえ

 『にゃんてSHOP』のアルバイト店員第二号。高校生ながらフリーのプロフルーティスト。前述の夢野 希とは双子。


 ・青年/大学生

 『にゃんてSHOP』の住み込みアルバイト。アルバイト店員第四号。大学生。


 ・マスター

 『にゃんてSHOP』のねこカフェで珈琲を淹れている九十九神。


 ・ギーペ

 人間と同等以上の知能と知性を有するペンギン。『代声機』という機械で人間の言語を操り、会話によるコミュニケーションができる。


 ・みぃ

 『にゃんてSHOP』の看板猫。人間並みの高い知能があり常時二足歩行し、その体躯は雄牛ほどもある超巨大猫。


 ・ねこカフェのネコたち

 『にゃんてSHOP』のねこカフェにて飼われているネコたち。





 ──街路樹の銀杏や楓が色付きだした今日この頃。

 夜は言うまでもなく、日中も肌寒くなって、保温を目的とする秋冬物の有り難みを生まれて初めて実感した。

 前に住んでいた新東京タワーのタワー都市内では一年を通して気温湿度は快適に保たれていて、はじめての本物の夏を感じたとき同様に、はじめての本物の秋もまた感動だ。

「──さて、みんな。明日からは約一週間後に開催を控えた『オータムフェス』への本格的な準備がはじまります!」

 今の時刻は十九時過ぎ。本日の営業を終了した『ねこカフェ』の掃除等もそこそこに、街の何でも屋『にゃんてSHOP』兼ねこカフェの店長の音恋ねこさんが、店員の全員に集合をかけたのだ。

 普段は『お店』の掃除や後片付けが済んでからミーティングを始めるのだが、音恋さんはこのあと用事で出掛けるらしく、やむなく掃除を中断してミーティングを開いたのだとか。

「あの、店長、『オータムフェス』って──?」

「あー、きびちゃんとカレンちゃん、それと君は初めてよね」

「「「はい」」」

「『オータムフェス』はね、清美市の街全体をあげての『食と芸術と運動のお祭り』なのよ」

「一年の中で清美市に最も観光客が来るイベントで、かなり有名なんだがな……」

「そうなんですね。アタシはこれまで旅行とか考えたこと無かったから知らなかったです」

「そうなんですか。わたしはあるってことは知ってましたが、どういったテーマを掲げているのかまでは知りませんでした」

「へぇー、街全体での文化祭みたいな感じか……」

「そうね。まー、ぶっちゃけ、『秋といえば──?』で挙がる内の三つをくっ付けたってだけのお祭りよね」

「もう、希は身も蓋もないこと言わない。発想が安直だとか『オータムフェス』が現在の形になる以前はテーマ毎にバラバラに開催して集客数が芳しくなかっただとか……」

 いや、叶さんの方が希さんよりディスってますよ……。

「さて、脱線した話を本題に戻すと、明日から『オータムフェス』への準備が本格的にはじまるわ。さっきも言ったけど、『オータムフェス』は街をあげての一大イベント。準備にも余念がない熱の入れようだから、普段と比ぶべくもないほどに街全体が大忙しなのよ。そうなると──? はい、カレンちゃん」

 ヘ!? わたし?

 音恋さんからの唐突な問いと回答者指名。

 問われた事に普通に答えを返すなら、

「普段の生活に支障が出る、ですか?」

「はい、正解! なので、『オータムフェス』の準備期間に突入すると、お店などの手伝いの依頼が沢山舞い込んできます。ですが、それだけではありません。イベント等において最高のパフォーマンスしたいと思っている人達が準備期間が限られているときに感じることは──? はい、きびちゃん」

「っ!? ……えーと……えーと、…………! 時間と人手の不足、ですね」

「大正解! 故に『オータムフェス』に向けた準備をしている人達からも『準備の手伝い』という依頼がバンバン舞い込んできます。

 ──つまり、一年の中で一番の書き入れ時なのよ!」

 成る程。音恋さんの気合いが、いつも以上に入る訳だ。

「去年までは店員は音恋とオレだけで、てんてこ舞いだったからな」

「それで詩音さんは、あたしと叶に音恋さんには秘密裏に臨時バイトを頼んだのよね」

「……いや、あれは歌手活動の方でどうしても席を外せなかったから、致し方なく希ちゃんたちに頼んだんだよ」

「──でも、それって詩音さんが歌手活動は副業って宣ってたのは、虚言になりますよね。なにしろ、『本業』より優先したんですから」

「いやいや、叶ちゃん、あの時は本っ当に席を外せなかったんだよ。以来、歌手活動のマネージャーさんには『本業』の方のスケジュールを最優先するよう言ってあるから。今年は去年のような事はないよ」

「詩音さん、「今年は去年のような事はないよ」って言いますが、今年も『オータムフェス』への歌手としての出演依頼が来てますよね? しかも、音恋さんには報告してない依頼モノ。ボク、今年も楽団からゲスト出演を頼まれてて、その練習に行ったときに教えてもらったんです」

「へぇ~、そうなんだ、詩音くん?」

「あー、その……、それは、今年は音恋がアドバイザーの一人として『オータムフェス』の運営に携わってるから、オレの歌手出演の話は確実に耳に入るだろうと思って……。まー、去年はうっかり音恋への報告をし忘れたのが原因で希ちゃんたちの手を借りるハメになったワケだがな……」

「……ハァ~……。まったく、詩音くんはホント結果に不備が出なければ過程は問わない質よね。でもね、結果は同じと言えど、出演が決まった時点で報告をしてほしいものだわ」

「…………わかったよ、猛省する。これからは、ちゃんとそういった事の報告も逐一上げるさ」

「わかれば、結構。

 それじゃ、今一度言うけど、明日からは大忙しになるから、みんな、気合いを入れて頑張っていきましょう!

 じゃ、私はこれから用事があるから出掛けるわね。詩音くんは『お店』の掃除が終わったら、希たちを家まで送ってあげて。あ、あと、夕飯は先に食べちゃってて。んじゃ、あとはよろしく」

 ミーティングを締めると、慌ただしく出掛ける音恋さん。

 それをわたしらは見送り、中断していた掃除と後片付けを再開した。



 ────翌日────

 今日から一週間後に開催される『オータムフェス』の本格的な準備期間がはじまった。

 わたしや希さんたちが通う学校は運営している企業が『オータムフェス』の大手スポンサーをしていて、さらには『オータムフェス』への自主参加を推奨していることもあり、準備期間の一週間と『オータムフェス』のメインイベントの殆んどが集中して行われる開催中の初日からの三日間の計十日間が休校になっている。

 なので、わたしは『お店』の開店時間から受付けレジに立っている。

 既に、昨晩から今朝にかけてネットでの依頼が多数入ってきていて、きびさんと希さんと叶さんは、希さんたちが『お店』に着いて早々に音恋さんからそれぞれにいくつかの依頼を任され、早速、依頼へと出発していった。

 因みに、ねこカフェの方はいつも通りの営業で、歌音ちゃんはわたしや希さんたちと違って学校が休みではないので普段通りに登校している。青年さんも大学はいつも通りなので、以下同文。

「いやはや、例年ながら『オータムフェス』前は忙しいですな」

 掛けられた声が聞こえてきた方向のレジカウンターの奥──スイングドアが仕切りのを役割しているが──のレジカウンターとは地続きのカフェフロアのカウンターに目を向ければ、夏半ばから新たに『にゃんてSHOP』の一員になったマスターさんがそこにいた。

「そうみたいですね」

 このマスターさん、実は生身の人間ではなく“物に籠もった想いが実体化した存在”の『九十九神』。

「……? ……っ!──そういえば、カレンさんは今年この街に移って来られたんでしたね」

「はい、そうですが……?」

「いえ、なに、ついカレンさんの纏う雰囲気が長年この街で過ごされてきた方と同じでしたので……わたくしとしたことが、的外れな世間話を──」

 へぇー、そうなんだ。自分ではわからなかったが、今の場所に馴染めてきてたんだ。

 きっと、音恋さんや詩音さんをはじめとした周りのみんなのおかげなのだろう。

「なんか、嬉しいです。マスターさんから、そんな風に見えてるだなんて」

「まー、『移ってきただいたいの人が短期間で長年過ごしているかのように馴染める環境』、それがこの街──特に()()近辺──のいいところよね♪」

「そうですな、元々この街の始まりは──古めかしい言い草になりますが──新天地に夢見た余所者たちの寄り集まりでしたからな。『来る者拒まず、大歓迎』の精神が根付いた成果ですな」

 ねこカフェの開店準備を終えた音恋さんは会話に加わりつつ、カフェカウンター前の席に腰掛ける。

「マスターさんはこの街の昔の事に詳しいんですか?」

 先ほどのマスターさんの口振りからして、そう感じたのだ。

「はい、そうなりますね。生前の彼から受け継いだ記憶によれば、彼はこの街が街として機能しだした頃にこの地に移り住み、かのコーヒーショップを出しましたから」

「そうなんですね。……あの、今度、時間が空いたときにでいいので、この街の昔話を聞かせてもらえませんか?」

「それ、私も興味があるわ。聞いた話じゃ、私が生まれるより前の出来た頃のこの街は現在以上にレトロ仕様だったらしいって云われてるし」

「はい、いいですよ。今度、時間が空いたときに」


 ──コロンカラン~♪


 話の区切りがいいところに、『お店』のドアに付けられたベルが来客を告げる。

「いらっしゃいませ、ようこそ『にゃんてSHOP』へ」

 気持ちをお仕事モードへ移行して、接客開始。

 さっそく、ドアから入ってきた男性のお客さんの身なりや表情をジロジロ見ないように確認。

 そうする事で、来店したお客さんが依頼をしに来たのかねこカフェに来たのかの判別はだいたい出来る。

 ──が、最近はちょっとその判別が難しい。

 何故なら、最近はねこカフェに来るお客さんの目的別の割合が、わたしがこの街に来た春頃は当然ながら猫との戯れだったのが、夏初めには東地区にある人気のケーキ屋『melodia』のケーキを取り扱っている事が充分に知れ渡ったことでお客さんの来店目的が『猫六:ケーキ四』となり、それが夏半ばにマスターさんが新たに加わってからは『猫五:ケーキ三:珈琲二』となって客層が広がり、来店したお客さんの見た目での目的の判別を難しくしている。

 ま、『お店』としてはお客さんが増えて繁盛なので狙い通りなのだが。

 さて、先ずは失礼ながらもお客さんの身なりをチェック。

 足下は長年履き続けた感バリバリのシューズ。下半身はこちらもシューズ並みの長年着用している感が出ていて、くたびれたデニムのズボン。上半身はズボンと同じくたびれたデニムのジャケットにその下には無地のシャツ。そして、手荷物は当てのない旅をする人がよく持っている巾着と同じ仕組みの袋。

 さらに表情も覗うと、困り果てて藁にも縋りたいといった感じだ。

 これは間違えなく、依頼のお客さんだ。

「……あ、あの、『ココ』はどんな依頼でも引き受けてくれるんですか??」

 おずおずと訊ねてくるお客さん。

「内容次第によりますが、我々で可能な事ならばだいたいは」

 営業スマイルばっちりで応答するわたし。

 しかし、

「……………………」

 ん? マジマジとわたしを見るお客さんの表情が先ほどとは違うものに変化していく。

 それはなんだか、『この『店』大丈夫か?』とか『入る店間違えたかも?』といった雰囲気がひしひしと伝わってきて、わたしは少なからず“ムっ”とする。

 もしかして、このお客さんは『何でも屋』に何かしらのイメージを持っているのかもしれない。

 でも、だからって見た目だけで期待ハズレな感じを出さないでほしい。

「いらっしゃいませ、お客様。私は店長の音恋といいます。とりあえず、先ずはこちらへどうぞ」

 いつの間にやら、カフェフロアからレジカウンターにまで来ていた音恋さん。

 ただ、いつもの接客とはなんだか微妙に違っていて、お客さんに有無を言わせない圧をかけて応接セットへと案内する音恋さん。

 なんていうか、トゲ感があるのだ。やはり、仕事を見ずに見た目だけで『お店』のことを判断されたであろうことにわたし以上に“ムっ”ときたのだろう。

「──それでお客様、ご依頼の内容は?」

 普段はお客さんにお茶を出してから交渉に入るのに、お茶が来るのを待つことなく音恋さんはお客さんに依頼の内容を問う。

 しかも、表面上は笑顔で接客しているものの、眼がギラついている。言外に『貴方の依頼なんて、たちどころに達成してあげるわ! 文句も付けようがないくらいにね!!』といった感じに。

「──…………えっと、それじゃ、『悠久なる四季テンプスデアエテルニタス』の『黄金の海原』が何処にあるかの調査を──」

 お客さんは音恋さんの気迫に気後れするも、『どうせ、出来もしないだろ』感を滲ませながら依頼を口にした。

「…………………………………………はー、『黄金の海原』の場所ですか……」

 その依頼内容を聞いた音恋さんは気勢をごっそり削がれ拍子抜ける。

 音恋さんの拍子抜けた姿を見て、お客さんは『それ見た事か!』と先の気後れ姿は何処へやら、得意満面になる。

 しかし、お客さんは知らない。どうして、音恋さんが拍子抜けしのたかを。その理由を。

「…………確認ですが、ご依頼内容は本当に『『黄金の海原』の場所の特定』で、よろしいのですね?」

「? ……あ、ああ、その内容で間違いない」

 てっきり、お客さんは音恋さんが依頼を断るだろうと思っていたのか、音恋さんが依頼を受諾したことを怪訝に思いながらも自ら依頼を言ったのだからキャンセルするのは負けた気がするとでも思ったようで、挑発的な表情を無理に作って首肯する。

「それでは、こちらの契約書にサインをお願いします」

 普段通りの接客に戻った音恋さんはいつも通りの手順の手続きに入る。

 その音恋さんの変化にお客さんは戸惑いつつも、言われ通り契約書へとサインをする。

 それを確認した音恋さんは契約書の控えをお客さんに渡すと、

「では、少々お待ちください」

 席を立って、こちらへ。

「カレンちゃん、街の地図を一枚取ってくれる?」

「はい」

 レジカウンター内側に備え付けられている棚に束になって置かれているコピーの街の地図を一枚手に取り音恋さんへと渡す。

 因みに、何でコピーされた地図の束があるのかというと、この街では市役所かその支所もしくは役所手続き機能のある端末さらには清美市の公式HPで手持ちのケータイ端末を予め登録をしておかないと『AIナビ』をはじめとした普及している『地図ナビアプリ』は使い物にならず、それを知らずに訪れた観光客などの人達に道を尋ねられたときに渡す為にあるのだ。一応、ケータイ端末を登録しなくても使える『特定地図アプリ』があるにはあるのだが、そのアプリがあることの周知率は低いとのこと。

「ありがとう」

 わたしが渡した地図を手に応接セットで待つお客さんのもとへと戻る音恋さん。

「お待たせしました、お客様」

 音恋さんは応接セットに戻ると手にした地図のとある場所にペンで丸印を付けると、

「こちらが、お客様のご依頼でご所望の『黄金の海原』の所在になります」

 地図をお客さんが見やすいように置く。

「──ッ!!!? マ、マジ……か、……ど……どれ──」

 期待などしていなかっただろうに、喰い付くように差し出された地図をガン見するお客さん。

「御覧いただけるように、地図に示しましたこの丸印の場所がお客様がお探しの『黄金の海原』がある場所になります。『当店』からすぐに行かれる場合は──」

 音恋さんは補足として、『ここ』からの道程の説明をはじめるも、

「──まッ、待ってくれ!」

「はい? どうかなされましたか、お客様?」

 何かに気付いたのかお客さんは『待った!』を掛けて、音恋さんの説明を中断させる。

「今、アンタが丸印で示した場所に『黄金の海原』が在る保証が何処にある?

 さては、僕が余所者だからって、適当な情報を提示して金を巻き上げるつもりだな?!

 それにそもそも調査も何もしないで、地図を持ってきて「此処です」と云われて「はい、そうですか」と納得する奴がそうそういるかッ!?」

 一気に捲し立てるお客さん。なんと、疑り深いことか……。

 音恋さんも一瞬だけ面倒臭さそうな顔をするも、直ぐに営業スマイルに戻り、

「でしたら、『当店』が提示しました情報が嘘偽りでない事を証明すれば、よろしいのですね?」

「ああ、当然だ。出来るものならなッ?!」

 なんとも短絡的なお客さんの挑発。もしかしたら、以前に他人の言葉を鵜呑みにして大変な目にあったのかもしれない。そう思うと、お客さんの態度に賛同は出来ないが頷ける。

「わかりました、お客様。『当店』が提示しました情報に嘘偽りがない事を証明致しますので、申し訳ありませんがお客様のお時間を一時間ほどいただけますか? 必ず、証明致しますので!」

「ああ、いいぜ。一時間といわず待ってやるよ。本当に嘘偽りが無いと証明が出来るならなッ!」

 まさに売り言葉に買い言葉。さらには疑りの駄目押し。

 だが、このお客さんはいろいろと知らない。その一つ、音恋さんの真の狙いが今とつい先程とでは真逆になっていることに。

「カレンちゃん、ちょっと用事を頼んでいいかな?」

 再び席を立って、応接セットから受付けレジへと来る音恋さん。

「はい、いいですよ」

「ありがとう。じゃあ、悪いんだけど、駅前にある観光案内所に行って、そこに置かれてる『清美市について』のフリーペーパーを各一部ずつ貰ってきてもらえる?」

「わかりました。では、さっそく、いってきます」

「お願いね、いってらっしゃい」

「カレンさん、お気を付けて」


 ──コロンカラン~。


 音恋さんとマスターさんに見送られ、わたしは音恋さんに頼まれたフリーペーパーを取りに『お店』を出る。

 これは予想した通りの展開になった。おそらく、音恋さんも相当カチンと来たのだろう。いつもなら、受けた依頼中は不足の事態ではない限りは諸事情の関係で任された店員のみで依頼を遂行する。

 それなのに、普通であれば依頼を遂行中の音恋さん自身が件のフリーペーパーを取りに行くところを、わたしに頼んだのだ。

 この事が“何を意味するか”をお客さんは依頼料請求の段に知る事になる。そして、同時に自らの判断ミスも────。



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