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ねこの手、貸します。 秋  作者: 白月 仄
にゃん三章 光の陰で蠢くもの
12/25

さんのさん


  ──Vocare,──


 ──ッ!? 不可思議現象無効化の機能が発動する時とは違う幻聴。


 ──ゴトっ。


 そして、マジで“何か”が出てきた!?

 正直、ほぼ冗談でやってみたのにまさかまさかの本当に“何か”が出てくるとは思わなんだ。

 しかし、これで“この腕輪”に物が仕舞えるという事が逆説的に証明できたと言えなくもない。

 だがしかし、実践をせずしてそう言い切るのは浅はかというもの。

 ならば、実践あるのみ!

 アタシは腕輪から出てきた物をろくに確認もせずにむんずと掴み取り、腕輪へと近付ける。

 そして、────


 ────入れ────


 ────と、そう念じる。

 すると、──


  ──Absconde,──


 先ほどとは異なる幻聴。

 それと同時に“物”を掴んでいた手が空を掴む!?

 確かについさっきまでは“物”の感触が有ったのに、唐突に“物”の感触が失われてしまったのだ。

 これはプロの手品師でも度肝を抜かれるんじゃないだろうか?

 なにしろ、ネタが超科学なのだ。21世紀より遥かに進んだ現代科学を以てしても再現には到らないだろう。

「──それで、その腕輪ってのはどんな感じの物なんだい?」

「そうッスね、…………────」

 それにしても、退屈……。

 もう少しすれば常連さんが来るだろうが、それ迄は暇。

 副店長たちの会話も「興味が無い」と言えば嘘になるが、聞き流してもいいような内容だし。

 ま、腕輪の隠された機能を発見できたのは僥倖だったけど。

「────……確か…………木製で…………それでもって……────」

 あー、でも、この腕輪に入れらる物の総量ってどれくらいだろうか?

 出てきた物の大きさが手の平に収まるくらいだったから、それ以上の大きさの物は入らない?

 後で試してみようかな?

「────……そう! 彼女がしている腕輪みたいな紋様が確かに有った!」

 ──おや? 何やら、日立さんがアタシのことを指差している。

 いったい、何だというのだろうか?

 聞き流していた副店長たちの会話のバックログを参考に考えてみる。

 ──………え~と、確か……ああ、そうか!

 然程、思い返すまでもなかった。

 日立さんの指が差しているのはアタシの腕に嵌められている腕輪か。

「ほお~、嬢ちゃんの腕輪みたいなのか……」

「はいッス」

「それで、その腕輪は今、何処に?」

「? 何故、そんな事を聞くんスか?」

「…………。あー……、こいつはさっき知り合いからの電話で聞きたてホヤホヤの情報なんだが、──“鳴君の親父さんは土地所有者が持つ『鍵』ではなく『Pass』で『黄金の海原』に入った”──らしいんだわ」

「──ッ!? それはどういう意味ッスか?」

「単刀直入に言えば“『黄金の海原』の『鍵』は鳴君の親父さんでなく、その家族が持っている可能性が高い”ってことさ」

「──っっ!!!? …………そうッスか。……あー、でも、母さんの遺品の中にはさっきの“『鍵』”みたいなモノや腕輪も無かったッスね……」

「じゃあ、鳴君の持ち物の中には?」

「いえ、無いッス。すみませんッス」

「そうか……。つまり『黄金の海原』の“『鍵』”は行方知れずって事か……」

「? あの……、なんで『『黄金の海原』の“『鍵』”が行方知れず』なんスか? 入るのに使ったのが“『Pass』”でも“『鍵』”は親父が持ってるんじゃないスか?」

「それはないよ。悠久なる四季のスポットに立ち入る際に“『鍵』”と“『Pass』”を両方を持っていた場合、“『鍵』”の方が優先的に認識されるからね」

「そう……なんスね」

「せめて、腕輪の行方だけでも判れば何か“『鍵』”の行方の手掛かりが掴めるかもしれないんだがな……──」

「…………………………………………──そういえば、まだ不確かなんスけど……」

「なんだい?」

「…………えっと…………そのー…………あの~…………あー……………あああーーーっっっ!!!!!!」

「ぬをっ!? いきなり叫んで、鳴君どうした?!」

「ハイ、……………………う、腕輪の事で思い出したんスけど……───」

「ほう、話してくれ」

「──僕、中学生の時に親父からその腕輪を譲られたんス──」

「それで」

「──その譲られた腕輪を──」

「その腕輪を──?」

「──親父の都合で転校する事になった時に、その時の親友に『友情の証』としてあげちゃったんス……」

「──成る程。差し支えがなければ、その親友の名前を教えてくれるかい?」

「はい、大丈夫ッス。その親友の名前は────────」


「───スミス・メアリ───」


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