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住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?  作者: 赤月ヤモリ
第二章 夜叉の森ダンジョン編

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ep39 ロック・ビートル戦

 俺の見つめる先、まず先陣を切ったのはのの猫であった。

 彼女は魔速型の最高速で駆け抜け、ロック・ビートルとの距離を詰める。ロック・ビートルは近付かせないように迎撃しようとするが、先程までと異なり注意すべき人間が増えたことで隙が生まれる。


 結果、数秒とかからずに彼女は彼我の差を埋める。足さばきのフェイントで砲撃を誘発し、着実に距離を詰める彼女は勢いそのままに、手にしていた剣をはるか上空へと放り投げた。


 分かりやすい視線誘導。


 しかしフェイントで焦ったロック・ビートルの意識は剣へと向かい、僅かな隙が生まれる。


 その隙を逃すことなく、のの猫は大きく跳躍。

 一瞬にしてロック・ビートルの意識外へと抜け出す。

 ロック・ビートルが反応できないその行動は――当然どこかに潜む狙撃手により撃ち抜かれる……はずだった。


「……ファイアボールが来ない?」


 困惑したような白木の声に、俺は自慢するように答えた。


「そりゃ、周りをよく見ろって死ぬほど教えたからなぁ。落ち着けばすぐに見つけられるし、こそこそ隠れて魔法撃つだけのモンスターなんか、一瞬で服従(・・)させられるさ」


 視界の隅。

 派手に動いていたのの猫の陰に隠れて、七規が曲がりくねった木の上に隠れていたスケルトン・シャーマンに『ドミネーション』を行使しているのが見えた。


 本来の彼女なら、もっと早く動けていただろう。

 だが極度の緊張は思考能力を奪い、行動を制限する。


 特に幸坂さんが先輩探索者(・・・・・)として、七規を庇護対象と扱っていたのなら、彼女自身に戦う意思が生まれるはずもない。


 別にそれが悪いわけでは無い。

 何しろ彼女は新人なのだから。


 だが、それ以上に七規には才能がある。のの猫の啖呵で緊張が解かれた彼女は、先程まで怯えていた存在だったが故に狙撃手の視界から消え――結果、最高のパフォーマンスを見せたのだ。


『GI、GIGUGAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼』


 狙撃手の喪失を悟ったロック・ビートルが奇声を放つ。

 その音に怯む者など存在しないが、問題なのはその音波。


 空中に居たのの猫の軽い身体が衝撃で弾かれ、後方へと弾き飛ばされる。特に問題なく着地した彼女へ角の先端が向けられ——砲撃。


 迫りくる岩の弾丸に対し、のの猫は無手。

 このままでは肉塊と化すだろうが——そこに一人の女性が割り込んだ。


「流石にッ——もう、見飽きたッ!」


 両手の盾を構えた彼女は膨大な質量の弾丸を真正面から受け止め、足裏で大地をガリガリと削りながらも、横に逸らしきった。


 先ほど俺が止めたのに続けて二発も防がれた事もあり、ロック・ビートルが一瞬動揺した。してしまった。この戦場で、気を逸らしてしまった。狙撃手が居る状況ならそれも許容されただろう。


 だが、狙撃手はいない。

 そして、邪魔が入らない状況で魔速型相手に気を逸らすなど万死に値する。


 岩の弾丸の陰からのの猫が最高速で駆ける。

 反応など許さない。

 一秒足らずでロック・ビートルとの距離を埋めると、彼女は大きく跳躍し——先ほど視線誘導に投げていた剣を空中で手にした。


 ――戦闘は時間感覚を狂わせる。


 自身が追い詰められている時の極限状況において、それは顕著であり——のの猫が剣を投げてから掴むまで僅か十秒ほど。


 その時間を、ロック・ビートルは永遠にも感じていたのだろう。


 完全に意識外となっていた剣による、直上からの攻撃。


「これで、終わりだ――ッ!!」


 俺の憧れた魔速型の一撃が、ひび割れていたロック・ビートルの兜を砕き——その巨体は地面に倒れ伏した。


 しかし警戒は解かない。

 動かなくなったロック・ビートルを見つめ——見つめ続けて、その身体がダンジョンに溶けて消えるのを確認してから、大きく息を吐き出す。


「……っ、ふぅ。終わったにゃ~」


 大きく伸びをしたのの猫は、安堵した様子で尻もちを着くのだった。



  §



 戦闘が終わり、俺は周囲を警戒。他にモンスターの気配がないことを確認してから小さく息を吐き、全員を集めて状況確認を行う。


 七規は無事。

 幸坂さんは左腕が折れているかもしれないとのこと。

 のの猫は足や腕、腹や頬などいたる所に傷を負っているものの、どれも軽症で動くのに支障は無いとのこと。


 やはり一番の重症は白木だったらしい。

 彼女のバスタードソードは半ばからぽっきりと折れており、応急処置を施した今でもなお、彼女の汗は止まっていない。


「だいじょ~ぶい、痛みには強い方だから」


 結局、強がる彼女に頼るしかないのだ。

 俺は自分の無力さに嫌気が差しつつも、今後の動きを思考。


 救援組がこの階層に到着するのはほぼ不可能。ある程度階層を下って合流するしかない。だが、その為には七規たちの休憩が必須。モンスター討伐は俺一人で十分だが、移動する体力が彼女たちにはない。


 そして――ちらりと俺はダンジョンの一角へと視線を向けた。そこには何もない。何も居ないし、誰も居ない。


 けれど。


「さて……」


「せんぱいどこか行くの?」


「あぁ、少し気になることがあってな」


「なら私も——」


「いや、七規は白木を看といてくれるか? 幸坂さんと猫ちゃ——のの猫さんもお願いします。もしモンスターが襲って来たとき用に、氷で申し訳ありませんが武器と盾、後は簡易の壁を用意しておきますので」


「……え、え?」


 淡々と進める俺に、七規は困惑。

 一方で幸坂さんとのの猫は何かを感じ取ったのか、静かに周囲を見回してからこくりと首肯を返した。


「気を付けて」


「あとで色々話したいこともあるから、絶対帰ってきてくださいね。相馬さん」


「……はい」


 やべー、最推しと喋っちゃったよ。

 テンション上がるなぁ~。

 正直入江さんを馬鹿に出来ないぜ。


 やっぱ嬉しいもんよ、推しとの会話は。


 そんなことを思いながら、俺は四人から離れる。

 向かうのはロック・ビートルの立っていた場所。

 その地面の一角に、階下へと続く階段があった。


 足を掛けて下へと向かった先は——六十七階層。

 俺は階段を下りきると、通路をアイスエイジで封鎖(・・)

 小さく息を吐いてから六十七階層を見回す。


 そこは六十六階層から木々をすべて取り払い、紫の草原と濃い霧が特徴的な階層だった。


 そしてその深い霧の中に、人影を見つける。


(……こいつか)


 六十六階層に辿り着いた時。

 俺はすぐに視線を感じた。

 あの日と同じ――白木たちと知り合ったあの日、二十二階層で感じた視線と同種の、こちらを観察するような、舐め回すような視線。


 俺は小さく息を吐く。


「はぁ……。一度なら勘違いかとも思いましたが、二度目ともなれば流石に気付きますよ」


「……」


 無言の人影に向かい、問うた。


「あなたはどちら様でしょうか?」


 すると、返って来たのは沈黙。

 しかしそれも長くは続かず、聞こえてきたのは女性の笑い声だった。


「かかっ、そんな怖い顔をするでないわ、(うぬ)よ。それではまるで、(わらわ)が血も涙もないモンスター、つまるところ敵対者のような態度ではないか。悲しいのう、悲しいのう。悲しくて涙がちょちょ切れてしまいそうなのじゃ」


 飄々とした態度で近付いてきたのは、言葉遣いに反して年若い女。

 見た所、二十代半ばと言ったところか。


 真っ白な着物に身を包み、真っ白な扇子で口元を隠す彼女は、透き通るような青い髪を揺らして、こちらを舐めるような視線で射貫く。


 興味。

 侮蔑。

 敵意。

 殺意。


 視線が合った瞬間、俺は直感した。


 ——この女は敵である、と。

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― 新着の感想 ―
ダンジョンクリア後≒敗北後に派遣されてるからモノクル軍以上ってことになるから負けフラグちょっとあるな
もしやこの敵も人妻!?
更新お疲れ様です。 >はい、敵確定。ぶっ○します(某語録並感 創君がそう直感した→間違いなく地球人ではない=向こうの奴等でしょうね。 しかもモノクル氏と違って、なんか最初からまともな会話や交渉の意思…
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