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第6話 2人目のストーカー?


町を出て数十分程経った頃。少し大きめな森に入った時、耳を貫く高い鳴き声が聞こえてきた。

「お、新種のモンスターだ。いつも修行で使ってるのより少し強そうだな」

「たくさんいますね…!」

恐らく群れを作る種族なんだろう。10匹くらいがひとかたまりになっている。

「よし、新しくやろうと思ってた修行にピッタリだな」

「え、こんなぶっつけ本番ですか?!」

アンバーは自信なさげに言った。

「ああ。ま、別に特別今までと違うことをする訳じゃない」

一方シオンはできる、と確信を持っているようだ。

正直見ていてヒヤヒヤする戦いをするのでシオンの確信はまだあまり信用できていない。まぁこのモンスターに関しては私も大丈夫だと思うが

「今からお前にやってもらうのは範囲攻撃だ。範囲攻撃は同じ念を込めた札を円状に地面に貼るだけだ。発動すると、円の中全域に術の効果が発生する」

「なるほど…や、やってみます!」

アンバーは札状に切った紙を取り出し、念を込めた。

相変わらずの禍々しいオーラだ。

「本来なら投げて貼り付けるんだがそれは難しいだろうし、力技で行くぞ」

そういうとシオンはアンバーに魔法をかけた

「スピード」

「これは…?」

「移動速度が早くなる魔法。モンスターに追いつかれないように走って貼ってこい」

結構ゴリ押しだな…

「が、頑張ります!」

アンバーは札に念を込めた。随分スムーズになったな

そして、アンバーは情けない悲鳴をあげながらモンスターから逃げ、札を貼っていった。いい気味だ

「はぁはぁ…何とか貼り終わりました」

「よし。じゃあ発動してみろ」

「はい!」

アンバーは手をモンスター達の方に向け、少し体に力を入れた。すると

ブチッ

湿った、肉の千切れる音がした。先程までアンバーを攻撃しようと暴れていたモンスター達は瞬く間に全員、真っ二つになっていた。相変わらず容赦ないな…

「お、成功だな。よくやった」

「えへへ」

アンバーは可愛らしい笑顔を浮かべる。忘れかけてたけど、顔はいいんだよな。顔は。

「さ、この先には宝やレアな道具がたくさんあるダンジョンがあるらしい。とりあえず、そこを目指すぞ」

「はい!」

ガサッ

近くの草むらからすごく物音が聞こえた気がした。

「ん?どうした、テン」

1箇所をじっと見つめている私にシオンが尋ねた

「ああ、いや…なんでもないよ。」

「ふん、変なやつ。早く行くぞ!」

「なんだとー!!言われなくても行くわ!」

物音がした所を観察してみたが、何も見当たらなかった。気のせいだったのかな


「やっぱり、あの人たちなら…」


…やっぱり、何かいる気がするが。害はないだろうしいいか



その後歩くこと数時間。その間に見たものは一生をかけても数え切れないほどの木とグロいモンスターだけ。

「…なあシオン。この森、いつまで続くんだ?」

「うーん…多分あと3日はかかるな」

「でかっ」

「な。建物もないし…今日はここで野宿だな」

野宿か…経験は0だがよく想像していたんだよな…ちょっと楽しみかも。

「師匠たちと一緒に寝れるの嬉しいです!」

そういえば、何気に初か。朝から夜までずっと一緒に行動してたから全然そんな気しないけど

「じゃ、さっさと飯食って寝るか。早く森を抜けるためにな」

「ほんとに!森は飛びづらくていやだ」

「歩けよ」

「嫌に決まってるだろ!疲れるし」

「は?」

天使が歩くことなんてそうそうない。私も、数えられるほどしか歩いていないかもしれないレベルだ

「おい、喧嘩するなお前ら!夕飯やらないぞ」

「ごめんなさい!」

「ごめんなさい!」

「よろしい。」

「今日のご飯はなにー?」

「さっきのモンスター焼いたやつ。アンの持ってる本に焼いたら食べれるって書いてあった」

…は?

「絶っ対いや!」

「師匠の手料理…!!ぜひ頂きたいです!」

「いやいや、手料理って言えないだろ!ていうかなんでモンスターなんだよ!町で買ったやつあるだろ!」

食べやすいよう切られたモンスターの肉に、棒が突き刺さっている。一見すると普通の美味しそうな肉だが、モンスターの肉と言われると急におぞましい見た目に感じる

「なんでって、興味だよ。あんなモンスターが食べれるって気になりすぎるだろ!味とかさ」

どうやらシオンが物知りなのは転生による経験だけでは無いらしい。怖いほどの探究心だ

その後、私たちはゆったりと食事をすませ、寝る準備をし始めた。ちなみにモンスターは意外と美味しかった


「よし、寝るぞ!明日もたくさん歩くからな」

「はい!」

そういうとアンバーはシオンの隣に寝袋を敷き始めた。

「おいアンバー!シオンの隣に寝るんじゃねえ!」

「あ?別にいいだろ。まだ僕が師匠を狙ってると思ってる?」

「いや、それはもう疑ってないけど…なんか、だめ!」

「は??」

「まあまあ。近い方が何かあった時も助かるしな?」

そういうとシオンは寝袋に潜り始めた

「え〜」

「そういうことなんで。」

アンバーも寝袋に潜り始めた

「…わかったよ。」

ふん。アンバーに甘いなシオンは

「……そういえば、寝てる間モンスターとか敵が来たらどうするんだ?」

「それは大丈夫。敵意持ったやつが近づいてきたら俺が気づいて起きるよ」

シオンは即答した

「すごい!」

「ま、野宿なんて何度も経験してるしな」

さすがだな。頼りになる。

「ほら、はやく寝るぞ。」

「ふん。こんなやつ寝不足になって置いていかれればいいんですよ」

「なんだとー!!」

アンバーといがみ合っていたら、すうすうと小さな寝息が聞こえてきた

「寝るの早すぎだろ…しかもこんな騒がしいとこで」

ア「師匠は寝るのも完璧なんだ!さすが。僕も師匠から学ばないと…」

いや、学ぶものじゃないだろ…と、言おうとアンバーの方に視線を向けるともうぐっすりと寝ていた。

学ぶの早すぎだろ。

静かだなぁ…1人は慣れているはずなのに、なんだか最近は寂しさが込み上げてくる。私も早く寝よう



翌朝。私たちは何事もなく夜を過ごし、起きて早々、森を歩き始めていた

…その時。

「キャー!」

甲高い悲鳴が聞こえてきた。もう聞きなれたモンスターの恐怖心を煽る叫び声ではなく、女性の人間のものだ。そのすぐ後、モンスターの声も聞こえてきた。恐らく女性が襲われているのだろう。

「…行くか」

私たちははすぐに声の聞こえた方へ向かった。


到着すると、地面にへたり込む綺麗な服を纏っている女性といつもより大きめなモンスターが1匹。

女性は致命傷は受けていないものの、傷がたくさんついていた。

シオンは女性に近づき、声をかけた

シオン「大丈夫ですか?」

「も、申し訳ございません…大丈夫ですわ」

「よかった。では、下がっていてください。」

「テン、アン。その方を守っておいて」

そういうとシオンはモンスターの目の前に立ち塞がった

私も、女性を庇うように少し前に出る

「ファイア」

おいおい、流石のシオンでもあの大きさのモンスターにあのちっぽけな炎じゃ勝てな…

ゴォッ

そう思った、次の瞬間。モンスターを包み込むほど大きな、前とは比べ物にならないほどの炎だった

驚くまもなくその手のひらの上に燃やした炎を、目にも見えぬ早さでモンスターに詰め寄りぶつけた。…いつの間に習得したんだよ

「終わりましたよ」

シオンはいつもの猫かぶりな表情をしている。

それに対しアンバーは、オドオドとして私の後ろに隠れている。人見知りか何かか?シオンには初対面で超グイグイ来てたのに…

「す、凄いですわ…!」

「ふふ、そうでしょうそうでしょう」

シオンが褒められたのに、アンバーが誇らしげな顔をしていた。突然喋りだしたアンバーに女性は困惑した顔をしている。そりゃそうだ。

「傷は大丈夫ですか?回復薬は少量持っていますが…」

「あ、いえ、お気遣いありがとうございます。ですが、こう見えても僧侶をやっていますので大丈夫ですわ」

そういうと自分の胸に手を当て、回復を始めた。

すごいな。致命傷ではなかったとはいえかなり傷がういていたのに、10秒にも満たず完治してしまった

…………そういえば、咄嗟の事だったから姿を隠せていないが女性は全く驚いている様子はない。何故だ?天使はこの世界にはいないはず…

「それで、貴方はなぜこんな所に?」

「わたくし、ダンジョンを攻略しにこの森へやってきましたの。でも、冒険は初めてでジョブもサポート系なので攻略どころか到達も出来なくて…」

「なるほど…」

「それで…昨日、モンスターを討伐している貴女方を一目見て…この方々なら、きっとわたくしのダンジョン攻略を成功させてくれると思ったのです。そして、後を付け回してたんですの。」

一目見てつけ回す。なんだかデジャブを感じるな

「じゃあ私…いや、俺のこの口調や性格も知ってるな?」

「もちろんですわ」

女性はニコッと柔らかい笑みを浮かべた

「…そうだな。ダンジョン攻略は俺らも目標にしていたし、手伝うのは構わない。」

かなりあっさり決めたな。私やアンバーは例外と言うし仲間になる気は無いのだろう。短期間の協力関係だな

「ただ1つ条件がある」

「なんでしょうか?」

「回復魔法や防御結界。使えるサポート技を何個かこいつに教えてやってくれ」

そういい、指を指した先にいたのは……私?!

「ええ、大丈夫ですわよ」

女性は即、承諾した

「な、なんで私がサポート技を?!」

「うちのパーティは遠距離型しかいない。私は近距離も行けるが…アンやテンは無理だろう?そこで、防御や回復のサポートが欲しいと思ったんだ。何もしてないしいいだろ?」

「いや、何もして無くはない!旅の記録だってしてるし、ちょっとだけ魔法も使えるんだぞ!」

「へぇ、どんな?」

「えっと…足の小指をタンスの角にぶつけさせたり、何も無いところでコケさせたり、体内時計ちょっと狂わせたり…」

「あは、嫌がらせみたいな魔法しかないな」

久しぶりに口を開いたと思ったら、嘲笑ってきやがった

「……ということで、ダンジョンまでもう少し距離がある。それまでにテンに教えてやってくれ。報酬代わりに、私がジョブ関係なしに使える近距離を少し教えよう。これから一人で冒険する時用にな」

「まあ!嬉しいですわ。ありがとうございます。」

くそ、やっぱり教えてもらうことになってる!まぁいいか…私も少しは役に立ってやろう

「そういえば、お名前は?」

「あ、まだ名乗っていませんでしたね。わたくしアルテアと申します。人間のような見た目をしていますが、種族は精霊ですわ。何を司っているかは、また後ほど…」

「あなた方のお名前や種族、ジョブは昨日の追跡とわたくしのスキルで確認済みですわ」

「精霊…ね、」

シオンは一瞬険しい顔をした。

それにしても、精霊とは珍しい。精霊は司っているもの次第ではすごい権力があると聞くが…気になるが、深入りはよそう。

「スキル…って、他人のステータスを見れるってとこか?」

「はい、そうですわ。なんなら、自分で見れるステータスより詳しい情報を知れますの」

「へぇ、すごいな。じゃ、自己紹介はいらないな。短い期間だが、改めてよろしく。アルテア」

「はい!」

「…よろしく」

アンバーも一応、ボソッと挨拶を済ませた


〜天界〜

「なあなあ、聞いたか?あの噂」

周りの天使よりより少し大きな天使2人が仕事中、コソコソと隠れて話をしていた。

「噂…?いや、知らないな。どんな噂なんだ?」

「それがな…今回の世界、精霊種がいるって」

「うわぁ、精霊種か。アイツらもアイツらがいる世界も厄介なんだよな。」

「それに、今回は大精霊クラスもいるとか。」

1人はあからさまに嫌そうな顔をし、もう1人はうんうんと頷いていた。

「あの子もかわいそ。毎回大精霊が出てくる世界ってことは難易度…」

「あなた達、何サボってるの?早く仕事をして」

「す、すみません!」

そういい2人は焦りながら散っていった。

…はぁ。どいつもこいつも、仕事をサボりすぎね

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