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第11話 協力関係

「テン、ガードだ」

「えっ?!」

ガキン。

シオンに言われ、反射的にガードを出す。

次の瞬間、金属がぶつかる音が鳴る。

黒い服を着た男がナイフで切りつけてきた。

あっぶな…間一髪だった。あと1秒でも遅れてたら…

先生にも言われたな、反射で出せるようにって。

「あんた達、何者?組織のやつじゃないわよね」

「それはこっちのセリフだよ。誰だお前ら?」

ほんと、全くもってその通りだ。

組織…?

「依頼主の関係者でも無さそうだ」

「な、何…?説明欲しいんだけど」

勝手に話を進めないで欲しい。何も分からないを

「はぁ…めんどくさ。見られちゃったか」

話通じねー!!

アンバーはずっと喋らず動かずだし…

「でも、決まりだもんね。しょうがない…」

そういい、女は攻撃を仕掛けてきた。

やばっ…なんか強そうな雰囲気だけど大丈夫なのか?これ。

「さっきから何言ってるのかよく分からんが…

とりあえずやるしかない、か。テンもいるし半殺しだぞ、アン」

「承知しました!」

頼られたのが嬉しかったのか、アンバーはニコニコしている。その余裕すごいな…

「ふん、半殺し?出来るものならやってみなさい!」

…来る!

これは厳しい戦いになりそうだ…!




なーんて、思ってたけど。

「すみませんでしたぁ…ほら、あんたも!」

「……すみませんでした」

女たちは飛びかかってきた瞬間ボコボコにやられ、今はアンバーの呪術で縛られている。

「お前ら、何者だ?」

2人は一瞬躊躇ったが、すぐに口を開いた。

「アタシはリラ。暗殺組織…殺し屋のボスよ。」

「俺はアッシュと言う。同じく、暗殺組織の殺し屋だ」

話を聴いた瞬間、どっと心臓が飛び跳ねる。

こ、殺し屋……?!平和な街だって聞いたのに!

ていうかボスって本当か…?到底そうは見えない。

あーもう、説明されても混乱しかできない!

「へえ…俺らに襲いかかってきたのは暗殺現場を見られたからか」

「そ。それが掟だからね。掟その5、目撃者は消す。決めた私たちが破る訳には行かないし」

それは確かにその通りだ。

…こいつら、この後どうするんだ?掟を破らない、となると解放しても襲ってくるに違いない。まさか殺し…

「よし、事情はだいたい分かった。アン。こいつらの拘束解いてやれ」

え?!

「はい!」

アンバーはシオンの指示を聞き、躊躇する素振りもなく拘束を解いた。

「ちょ、シオン?!だ、大丈夫なのか…??また襲いかかってくるんじゃ?」

「ああ。こいつらもプロだ。さっきの戦闘で勝てないことはわかっただろうし勝てない相手に仕掛けるほど馬鹿じゃないだろ」

確かに、言われてみればそうだな。

2人の方を見ても、手足ひとつ動かさず大人しくしていてなにもする気がないのが伝わってくる。

「もしかして戸惑って取り乱してたの私だけ…??」

「ばーか」

「なんだと!!」

アンバーがくすくすと笑いながらからかってくる。

くそ、こいつ…!

そうしていつも通りのやり取りを交わしていると、暗殺組織のボス…リラが口を開いた。

「話のわかるやつで助かったわ。今夜、また仕事があるの。」

リラは先程まで捕まっていたと思えないほどの余裕と強者感があった。暗殺者というのは演技や雰囲気も大事と聞いたことがある。

「へえ…仕事って、どんな?」

「貴族たちのパーティよ。私たちは表用の職業…歌手とそのマネージャーってことで参加するわ。最近依頼が多くてさっさと終わらせなきゃ行けないのよ」

随分ペラペラと喋ってくれるな。

逆にもう1人の男…アッシュと言ったか。アッシュは全然喋らないし! アンバーも!

「…ちなみに、敵わないと分かっていながら襲ってこないことは分かっていたがそんなに情報を渡してくれる理由はなんだ?俺の知ってる殺し屋は情報渡すくらいなら自死を選ぶ連中ばっかりなんだが」

確かに、物騒だがそちらが多いイメージだ。

「そりゃあ、ウチの掟その1が命大事になんだもの。さっきも言ったでしょ?ボスがルール破ってどうするのよ、って」

殺し屋なのに命大事にって…どういうことだ?

「暗殺組織なのに?」

「ええ。他人の命奪っておいて自己満なのはわかってる。それでも一応悪い奴しか殺さないようにしてるし何よりアタシは仲間が死ぬのは許せないの」

「ふーん…自死したり拷問されたりするなら情報渡せって?」

「ええ。その通りよ」

変なやつ。…だけど、悪いやつじゃなさそうだ。

「……わかった。お前らの仕事、手伝わせてくれ」

え?!?!

「は?!?」

「お前らが悪いやつじゃないことはよく分かった。俺たちの旅の目的のためにもなるし、お前らの負担軽減の為にもなる。…それに、拒否できる状況じゃないのはわかってるだろ?」

シオンは穏やかにニコッと笑いながら言った。

ひぃ…!!顔と発言が一致してない…!!

ほぼ脅しじゃんこんなの…

「…そうね。わかったわ。あなた達を一時的にウチの手伝い…いや、協力者として対等に仕事しましょう」

お、受け入れてくれた!…けど、正直拒否してくれた方が嬉しかったな…暗殺手伝うとか怖いし嫌なのに女神にシオンの行動に反さず従えとか言われてるしアンバーは反発するわけないし…

「アッシュ、いいわね?」

「…ああ」

やっと喋ったと思ったらそれだけかよ!!

「アン、テン。お前らも異論ないな?」

「はい!」

…私も、賛成するしかないじゃん…

「…わかったよ」

「決まりだな。よろしく」

「ええ。よろしくね」

2人はギュッと強く握手を交わした。

シオンにはどんな思惑があるんだ…?


その後私たちは軽く自己紹介を終わらせ、今後について話し合っているところだ。

「さて…さっそくだけど、今夜のパーティ潜入の任務を手伝ってもらうわ」

パーティへ潜入か…

怖いけど…ちょっと楽しみかも。ちょっとだけね。

「わかった。ターゲットは誰だ?」

「こいつらよ。」

そういうとリラは5枚の写真を取り出した。

「随分多いな」

「ええ。こいつら表向きは特に関わりのない人間だけど、裏では人身売買をしてるグループよ。」

ひぇ、人身売買…?!

超悪い奴らじゃん!!確かにこれならターゲットにされるのも納得…ん?まてよ、5人…?てことは

「今回は人数多いから大変だと思ってたけど…ちょうど良かった。1人が1人殺せばいいわね。」

だと思った!!

「うーん…俺はいいんだが…こいつらは人殺したことなんてないしな…この前死体見た時の取り乱しよう凄かったし。大丈夫か?」

「大丈夫です!慣れました!」

「ああ、私もそれは平気だけど…殺せるか心配…」

「…すごいなお前ら」

死人の魂は天界でよく見てたから慣れていたけど、生の死体は初めてだったから取り乱したが…

適応は得意だ!

ただ…ちゃんと気付かれずに殺せるか怪しいし心配…

「ま、失敗ならしても構わないわ。バレたりしてもどうにか隠蔽するし、逆に襲われたら絶対助けてあげるし安心して望みなさい」

「そうだな。大丈夫だ。」

……リラに関しては今日、ついさっき最悪の出会いをしたばっかりなのに。2人に言われると妙な安心感を感じる。…まあ、殺し屋も悪くはないか。

「じゃあ、作戦を伝えるわね。」



どんな作戦かと身構えたが、内容は案外簡単なものだった。

まず、リラとアッシュは歌手として潜入。

私たちはリラの友人の夫婦とその子供…という設定は私とアンバーが全力で拒否ったので、リラたちの友人兄弟として招待されることになった。

その後は怪しまれないようにしながら解散、各々殺りやすい方法で仕掛ける。

そして、全員暗殺が完了したら何食わぬ顔でパーティから退出…という流れだ。

「で、連絡手段はこれね。」

そう言われ出してきたのは腕時計にネックレス、ピアスと指輪、それにメガネ。

様々なアクセサリーだった。

「これには全部小さなボタンがついてるの。押せばこれから音がする。成功は一回、失敗は2回。そして、私が3回押したら合流の合図だからね。」

リラは追加で、小さな耳栓のようなものも出してきた。

これで音が聞こえるのか。…ん?

「わざわざ別々のものにせずに、音拾うのと音出すの同じ機械に出来ないの?」

「技術的にはできなくは無いんだけど…数人で耳の当たりを触ってたら疑われやすいしね。」

確かにそうかも。考えすぎ…って思っちゃうけど、暗殺なんてバレたら終わりなんだから過剰なくらいがちょうどいいんだな。

「さ、どれつけるか決めて」

どれも普通に可愛いんだよな…どうしよ

そう悩んでいると、シオンがすっと手を伸ばし、ネックレスを取った。

「俺はこれにしようかな。」

小さな宝石が何個かついている、可愛らしいネックレス。シオンにピッタリだな!

その後、シオンに続きみんな続々と選んでいった。

「じゃーアタシは指輪!」

「俺は…腕時計で」

みんな決めるの早くない?!

まあでも候補が絞られた分選びやすくていいかも…

残りはピアスとメガネか…

「私はメガネにしよっかなー!」

「…え?じゃあ僕はピアス…?」

残ったのは、ピアスのみ。

アンバーは焦ったような顔をしていた。

「似合いませんよ僕には!!」

首をブンブンと振り、抗議している。

その様子を見て、リラとシオンはあからさまにニヤニヤし始めた。

「大丈夫だって。似合う似合う」

「そうよ!顔も整ってるし……ほんとに、凄い整ってるわね」

アンバーの顔を改めてじっと見つめたリラは、急に目つきが変わった。

瞬きもせず、舐めるように見ている。

「それに強いし…悪くない、悪くないわね?」

…ん?雲行きが怪しいな。

アッシュは呆れたようにため息をついている。

「気づかなかったけどアンタ…超いいじゃない!年上のお姉さんに興味はない?」

「え?まあないことは無いですけど…」

ま、確かにシオンはだいぶ年上だし……って違う!!

こいつ狙われてることに気づいてないな?!

「あら、ちょうどいいじゃない!貴方人間でしょ?アタシ、セイレーンだからそこそこ年上よ?どう?」

肩を掴まれぐいぐい来るリラに、アンバーは戸惑うことしか出来ない様子だ。シオンはそれを見て面白そうにしている。

相変わらず性格悪いな…

なんて思いつつ、私も止めずにいるとアッシュが慣れたようにリラを引き剥がす。

「おい、リラ。その辺にしとけ。

…すまんな。こいつ恋愛関係のこと色々拗らせててな…いい男に目がないんだ。」

「え、あ、大丈夫です…」

アンバーは落ち着きを取り戻し、2人に慣れてきたようでケロッとしている。凄いなこいつ

「……ま、それはいいんだがお前人間じゃなかったのか。」

「ええ。アタシはセイレーンよ」

確かに、サラッと言ってたけど割と衝撃だな。見た目完全に人間だし普通に人間だと思ってた…

「セイレーンって…確か下半身が鳥か魚じゃなかった?海の怪物の…船乗りを惑わすやつだっけ」

「ああ、そうね…ウチのひいひいひいおばあちゃんくらいまではやってたらしいわよ。見た目もそんな感じで…」

そんなに?!セイレーンも多分そこそこ寿命長いよな…?何百年前だ?

「今どき船惑わせて生きてる子なんてそうそう居ないわよ。」

(どの世界でも人外は基本的に最初の世界のイメージと変わらなかったんだが…相変わらず変な世界)

そうだったんだ…なんか見分ける方法とかないのかな?

先生こういうの詳しそう…もっと詳しく聞いとけばよかったー!!

「んで、アッシュは狼男よ。ほら、耳としっぽ出しなさい」

そういい、リラはアッシュをじっと見つめる。

アッシュは無表情のままだが、焦っているようだ。

「それは、」

「なによ。素の己を出すことは信頼の証。協力するからには出さないとダメよ」

「……」

拒否しようとしたのをみて、リラは目をキュッと細めた。それをなにか思うことがあるようにシオンが見つめている。

圧すご…

「……わかった」

渋々了承した、次の瞬間。私が瞬きをした隙に、アッシュにはふわふわのしっぽと耳が生えていた。

あまり見せたくなかったのか、耳がぺたんと寝ている。

「偉いじゃない」

リラは先程と打って変わって、ニコッと元気な笑みを浮かべる。それを見てアッシュは寝ていた耳が立ち、しっぽもじっと見なければ気づかないほど微弱だが揺れていた。

…耳としっぽ、ちょっとかわいいかも。アンバーもじっと見つめている。

「…触っちゃダメ?」

「ダメだ」

「俺も触りたい…」

「お前もダメだ」

私たち二人に、怖い顔で即答する。

ちぇ、やっぱだめか

「ケチ〜」

「ケチー」

アンバーも心做しかむすっとして口を尖らせている。

そんな会話をしている間に、シオンとリラがなにやら話している。

「さ、アタシたちは信頼の証を見せたわよ。」

「…だから次は俺たちのを見せろってか。絶対思いつきだろ、それ」

「えへへ、正解!でも、ちゃんとした理由もあるのよ?組織の掟その3。協力する者とは信頼しあうこと。…ま、ほんとに超絶信頼してってことは少ないし、最低限でいいの」

「わかったよ。全員分、ちゃんと話すさ」

……信頼の証に素の自分を出せ、か。

アンバーは出会った頃のこととか?相当やばかったし完全な素だし…あとは、私とシオン。シオンはあまり事情を知られたくないらしいし…何を話すんだ…?!

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