第1話 数十回目の始まり
【今回の詳細】
やほやほ!女神だよ☆転生にはもう慣れっこだよね!ということでさっそく今回の内容教えるね!
今回ももちろん女の子!しかもエルフだよ!長寿種だ!おめでとー!元の子はそこそこ生きてたっぽいし、多分見た目より年齢いってると思う!でも、能力とか全部リセットしてあるし関係ないか!あはは!
そしてそして、今回の目標は魔王討伐&新魔王を誕生させること!それじゃあ頑張ってね私の可愛いワンちゃん!逆らったり、遅すぎるといつものお・し・お・き♡が待ってるからね〜〜!よろしく!!
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目の前には宙に浮く大きな文字。傍から見れば異様な光景。だが、少女はとても落ち着いた様子だった。
少女「はぁ…またか…今回で何回目だ……」
先程まで草原の上で死んだように眠っていた少女が目を覚まし、そう呟いた。
少女「相変わらず適当だな…というか、魔王討伐のあと新魔王誕生させろってどういうことだよ…しかもお仕置とか書きやがって。そんな生ぬるいものじゃないくせに」
少女「なんか見慣れない変なのもいるな。今回は新しいことが多い世界だな」
なんだか視線を感じるな。それに失礼な発言が聞こえた気がするが一旦置いておこう。気のせいだと思う。
「……はぁ」
少女はため息をつき、乱暴にポケットにしまい込んだ。
「毎回あの女神はなんであんな短い文章で済ますんだ…重要な部分が全然書いてねえ!どーでもいい雑談はくそ長いくせに、なあ」
全くもってその通りだ。本当にそこは切実に直して欲しいところである。
「ま、どーせ聞いても教えてくんねぇし。ちゃっちゃとミッション済ませて女神に文句言いに行きますか」
そういえばこいつ、転生が終わる度女神に文句言って戦ってるんだよな。毎回よくやるな…
「さてと。とりあえず始まりの町目指すか。進めと言わんばかりの道あるし。」
大正解である。この先には小さすぎず大きすぎないちょうどいい始まりの町がある。それに、道中には初心者の修行にピッタリのモンスターの生息地がある。しかも本来なら人で溢れかえっていてもおかしくない場所なのにそこは無人。あまりにも都合が良すぎる。普通の転生者なら罠だと思うレベルだ。だが、少女にとってはなんて事ない、日常である。少女はなにも言わず淡々と歩き始めた。
さて、彼女も大層困惑しているが読者諸君もあまり事情を理解していなく困惑しているだろう。そこで1度この少女のことは置いておき、事情を少しだけ説明しよう。この少女は転生者なのである!(まあ、こんなことは理解しているであろう。)この世界では転生者はさして珍しいものではない。ただ少女には他の転生者と違う点ちょっと特殊な点がある。転生したにしては慣れていて落ち着いているだろう?他と違う点。それは色んな世界に何度も転生させられていることだ。何故かって?そんなことを聞くのは野暮だろう。…まぁ、少し言うとしたらあの気まぐれで悪趣味な女神のせいだ。少女の転生後の詳細や転生する世界など、サイコロや時には投票で決めているらしい。ぶっちゃけ最低だ。まぁ詳しくは後々判明すると思うので、少し待っていてくれ。長文すぎると怒られるのでな…ということで可哀想な少女に話を戻そう。そろそろモンスターの巣に着きそうだ。というか、毎回少女と呼ぶのは面倒だしややこしいので早く名前を付けてもらいたい。
ザッザッ
少女の足音と、少しの羽の音のみが響く。本当に人っ子一人いないな
草原と、1つの湖。そしてモンスター。それしか見当たらない長く続く道で引き返してしまう冒険者は多いだろう。
少し進みモンスターの巣が遠くに見え始めた頃。少女は急にブツブツ独り言をいい始めた。
「お、モンスターの群れだ」
「そういえば、まだジョブとか技の確認してなかったな。まだ戦えねーな。ちょっと休憩がてら色々確認するか」
そう言うと少女は少し道から外れ、自信ありげに呟いた
「ステータスオープン」
ヴォン
その言葉と同時に少女の手にステータスが表示された。
「ステータスを見るセリフ、毎回これだな…優しさなのか、手を抜いているだけなのか」
優しさでは絶対にないと思う。あの女神にそんな感情はない。サボっているだけだ。
「今回はステータスに顔映らないのか…めんどくせーけど確認するか…」
そういうと少女は湖を覗き込んだ。
ニコッ
少女は元男と思えないほど、可憐で美しい笑顔をしてみせた。男と知らず惚れるやつも出てきそうだ…だが、可憐な笑顔の中にどこか疲れたような、諦めたような表情が潜んでいた。
「うん、今回も相変わらずの美少女…もう慣れたな、綺麗な顔も。笑顔も、上手くなった」
「今まであまりこの顔を武器にしてこなかったけど…ハニートラップとかに使えそうだ。女神が美少女好きだからって理不尽に美少女に転生させられてたけど…強みになるかもな」
末恐ろしいやつ…世の中の男共は簡単に引っかかるだろうな。仲間作るのも簡単そ〜…
「仲間か…いらないかな。どうせ結局、どこかのタイミングでお別れになってしまうんだ。」
「それに、一番最初の人生で、あんな目にあったし…はは、結局顔は良ければ良いほど得なんだよな」
一瞬少女の酷く悲しく暗い顔をした気がした。そういえば、女神が何か言っていたような……確か彼は
「さて、改めて色々確認するか」
思い出しかけた途端、少女が喋り始めた。
あれ、普通だな…気のせいだったか。女神が何を言っていたかも忘れてしまった。
話を戻そう。
ジョブの予想をしてみよう。エルフってことはジョブは…魔法使いか?あの女神、適当で単純だからな…
「ジョブは…魔法使い」
大正解!いつも振り回れてるおかげだな
「スキルは………は?」
お、転生慣れしている少女が珍しく驚いているな。どんなスキルだったんだ……??
少女「スキルはなし?スキルなしは初めてだな。なんで急に?大変そうだ…」
「次は魔法の確認だな。………炎…業火…火炎」
手のひらを出し、呟いた。……だが、何も出現しなかった。少女は、次々と呪文を試していった。
「ファイア」
そう少女が言い放った途端。炎が手のひらに出現した。戦闘には使えそうもない小さな炎。だが、少女は勝ち誇った笑顔を浮かべていた。
「今回は外国語か。これさえ分かればもう大丈夫だな。よし、もう戦える。行こう。」
少女は走り、モンスターの群れの中に突撃していった。大丈夫か?少し心配になるが、経験豊富な少女の判断は恐らく間違いないのだろう。私は静かに眺めようと思う。
初心者向けのモンスター、とは聞いていたが。本当に初心者向けかと疑ってしまうような見た目だ…大きな頭に一つだけ着いている目を見開き口を大きく開け突進してくる化け物。これをあの小さな炎の呪文ひとつでどうするというのか。
「ぅがァァァ」
「お、早速来たな」
一直線に突進してくるモンスターをひらりと避ける。そして勢いあまり少女を通り過ぎたモンスターを後ろから絞める。だが、恐らく力が足りないのだろう。モンスターはバタバタ暴れ始めた。
「やべ、ミスった。前世までの癖が出た…まだ絞め殺せるほど力は無い、か。」
少女は冷静に分析を始めた。恐らく前世までは力がとても強く、この程度なら簡単に殺せるレベルだったのだろう。今はまだ鍛えていないので普通の少女程度の力しかないが…末恐ろしい。そんなことを思っていたその時
「ガァッ!」
モンスターが身を捩り少女の拘束から逃れた。
「ファイアだとさすがに威力が足りない。他の呪文はまだ分からない…となると。やっぱり物理しかないな!」
モンスターはまた少女に向かって突進してくる。
「さすが初心者向けモンスター。動きは単純でワンパターン、弱点もわかりやすく狙いやすい!ファイア!」ゴシャッ
「グオォォ!!!」
少女は向かってくるモンスターの目をめがけ炎を纏った拳を思い切り振って見せた。モンスターはしばらくじたばたと暴れた後、パタリと動かなくなった。恐らく死んだのだろう。モンスターはあっさりやられてしまった。
「ふぅ…良かった。」
少女は安堵の表情を浮かべた。やはり少し不安に思っていたか。だが冷静に対応していてすごいな。やはり経験というものは大事だ。
「こういう時だけは何度も転生していて良かったと思えるよ。ただ、やっぱりまだ力が弱いな。一撃で吹き飛ばせないとは…」
十分強かったのに何を言っているのだろうか。 経験というのは大事だが、時に人を狂わせるな。
ドドドドド…
「ん?なんの音だ…?」
突然、複数の足音が聞こえてきた。どうやらこちらに向かってきているようだ
「は、あれって…さっきのモンスターの群れ?30匹くらいいるんじゃないか…?!さすがに勝てない…!!やばい!!逃げるぞ!」
先程までの余裕はどこへやら。少女は全速力で逃げ始めた。………あ、危ない
「え?……うわっっ!」
突然追ってきたモンスターの1匹が加速し、攻撃してきた。あれじゃ私にも追いついてきそうだ。もう少し高く飛ぼう
「あっぶね…!!あいつらこれ以上足早くなんのかよ…!!」
はは、何か言っているが高く飛んだせいで何も聞こえないな。
「はぁ??うわ!!」
お、少しかすった
「覚えてろよ……とりあえずこのまま町に向かおう!」
町についたら、さすがに名前をつけてくれるだろうか。そろそろ名前で呼びたいものである。
少女は息を切らしながら町に飛び込んだ。ここまで来る道には人が全く居ない割に、町はそこそこ人や冒険者がいるようだ。
「はぁ…はぁ…やっと町に着いたか…」
「もう夜だ。足の速さも体力も前回と比べて低すぎるな…早急に鍛えよう。」
遅いことはなかったと思うが…普通の冒険者なら追いつかれて食われていただろう。逃げながらも数匹倒していたし
「とりあえず…宿を探すか。」
少女は歩き出した。どうやらここはモンスターを倒せばお金が貰えるらしい。ただ、小さいわけではないこの町でちょうどいい宿は見つかるのだろうか。
「見つからねぇ…」
案の定、少女は数十分経った今も道をさまよっていた。
「目立つところはみんな高級宿…安いところは看板はないし目立たないしよ」
少女は少し苛ついているようだ。
まあ、少女の所持金で泊まれるところなど極小数だろうし見つからないのも無理は無い。今回は野宿になりそうだな。……と、そんなことを思っていた時
「あ、あの…」
整った容姿をした青年が少女に声をかけた。
「……はい?どうされました?」
少女は先程までのしかめっ面と変わり、ぱっと明るく可愛らしい笑顔を青年に向けた。青年は目を合わせようとせず、オドオドしている。……もしかしてこいつ。
「なにか困ってますか…?」
「ああ、そうなんです。実は私は冒険者なのですが所持金が少なくて、宿に困っているんです。お見苦しいところを見せてしまいましたか…」
口調も今までの荒いものとは全くの別物で、心做しか声のトーンも違う気がする。さすが毎回女に転生させられているだけあるな。元の性別を知っている私でも違和感がない。
「いえいえ、全然!そうだったんですね!僕、ずっとこの町に住んでいるので教えられますよ!」
「いいのですか?!ありがとうございます!今、所持金はこのくらいなのですが…」
そういうと少女はポケットから500と書かれている硬貨を6枚取りだした。
(そういや、金の価値がまだよく分からないな…それに、単位も。呪文は外国語だったし…ドルとかユーロとかポンドとかか?)
「ふむ、3000円ですか…」
(円??おかしいな…いつも呪文が日本語なら日本、外国語なら外国に寄った文化だったのに。スキルもないし…後で調べるか。)
「あの…?大丈夫ですか?」
青年が心配そうに顔を覗き込む。
「はっ…はい!すみませんつい、ぼーっとしてしまって」
「いえ、大丈夫ですよ。えーと、この金額で泊まれる宿はここを真っ直ぐ進んだ所にある酒場の2階にありますよ。」
(あぁ、あそこか。1度通り掛かったな…分かりずらすぎるんだよ。全く)
「ご丁寧にどうもありがとうございました。それでは失礼いたします」
少女は笑顔を浮かべ感謝の述べたあと、すぐに歩き始めた。 数歩だけ歩いた後、青年は少女を制止し言った
「あの!宿までお送りしましょうか?」
「え?」
青年「あ、いえ、もう遅くて暗いですしあなた一人では危険かなと、」
「ふふ、ありがとうございます。でも、そこまでお手を煩わせる訳にはいきませんわ。こんなでも冒険者の端くれですし、大丈夫ですよ。」
青年は少し落ち込んでしまったようだった。だが、覚悟を決めたような表情で少女にまた声をかけた。
「それじゃあ、お名前だけでも教えていただけませんか…?」
(やば。今回まだ名前決めてねーや。どーしよ。……あ、あそこに生えてる花、元の世界に似たようなのあったな。名前は確か…)
少女は数秒だけ考え込み、一瞬だけ視線を青年から外した。そしてすぐに青年に視線を向けこういった。
「シオン…と申します。」
少女…いや、シオンは青年に笑顔を向けた。何度目かの可愛い笑顔だが今までで一番の、なんの含みもない表情をしていた。
「シオンさん…いいお名前ですね!引き止めてしまってごめんなさい。」
「いいえ、ありがとうございます。それでは」
少女は再び歩き出した。青年は少し頬を赤らめ、シオンの背中を眺めていた。…まぁ、私にとってそんなことはどうでもいいことだ。それより、やっと名前を決めてくれたことが心底嬉しい。
「……で、お前は宿まで着いてくるのか?天使さん」
「え?」
「何がえ?だよ。俺が気づいてない気づいていないとでも思っていたか?さっきから脳内にごちゃごちゃごちゃごちゃ…」
いや、気づいているのは分かっていたが…まさか話しかけられるとは。
「ちゃんと声に出して喋れ!」
「はいっ!」
「まず、お前はなんで俺に着いてきてるんだ?目的は?」
「それはですねぇ…」
そうこう言ってるうちに宿に到着した。天使は基本一般人に姿を見せてはいけないので存在感を極限まで薄くするとしよう。
「さて、部屋に入ったからもう見られる心配は無いな。話してもらおうか。」
「いや、実はですね…女神さまがシオンさんの転生を小説として出版しよう!とか言い始めまして…」
「ふむ」
「趣味で小説を書いているという話をしたら抗議する間もなく問答無用でシオンさんの転生を書く羽目になって…」
シオンは怪訝そうな顔をしている。が、これは紛れもない事実である。決して言い訳などではないのでそこは信じて欲しい
「あー、だから解説したり個人の感想が混ざってたりしてたのか…まあ、お前も被害者といえば被害者か」
「そうなんです!!さすがに女神さまには逆らえなくて…これからも旅に同行させてもらってもいいですかね…??」
「……しょーがねえな。そういう事情なら仲間になっても問題は無いしな。わかった。もう敬語とかもいらないから」
「ほんと?!ありがとう!」
「ていうかお前、脳内に語りかけてきた時と口調全然違うな。」
「あはは、よく言われる〜。けど、あれは小説の語り用の口調なんだよね。意識してないのに喋るのと語りかけるので全然違っちゃう」
「ふーん…そんなもんか。」
「そうそう!…あ、そういえば、さっきはなんで仲間作らないって言ってたの?私はOKなのに」
「………ま、その話はまた今度するから。」
相変わらず何か別の物を含んだ笑顔。だが、やはりこの話をする時は更になにか、重い感情が潜んでいる気がする…
「よし、今日はもう遅いし寝よう!天使って睡眠いるのか?」
「あ、あぁ…うん。寝なくても問題ないけど私は寝るの好きだから寝る派〜」
露骨に話をそらされた。話したくないんだろう。まあ、私もそこまで踏み込む気は無い。
「おやすみ。」
「おやすみー…あ、そうだ。あの宿を教えてくれた青年、いるでしょ?」
「ああ、あいつな。ぐいぐい来てビビったけど…普通の人とあんなに話すの久々で、ちょっと楽しかったな」
少ししか話してないのに久々か…やっぱり昔人と何かあって、人と関わることを避けてる?…おっと、いけないいけない。人の過去を探るマネはよそう。私の主義にも反するしな。それより…
「あいつ、シオンに惚れてるよ。明日も偶然、町で会うと思う」
「はぁ??いやいや、んなわけ…」
「いーや、絶対惚れてる。自信を持って言える」
「へぇ…まぁ、どっちにしろ人と関わりたくないし明日は少し遭遇しないように気をつけるか」
遭遇しないのは無理だと思うけどなー…あの青年、なかなか面倒くさそうなタイプだし。…と、忠告しようかと思ったがもうすやすやと小さな寝息をたてて寝ている。
ま、起きてても言わなかったけど。ふふ、どうなる事やら。久しぶりに明日が楽しみだ。私もそろそろ寝よう。
【天界にて】
「きゃー寝顔もかわちー♡」
女神がシオンのいる世界を覗き込んでいた。仕事もせずに
「し、失礼いたします…お楽しみ中申し訳ありません」
少女と一緒にいる天使とは容姿もサイズも全く違う天使が恐る恐る女神に声をかけた
「ん?どしたー?」
「た、大変申し訳ないのですが…お仕事が溜まっておりまして。少しづつでも大丈夫ですので仕事を進めて頂きたく…」
天使は恐れながらも勇気を振り絞り言った。少し震えている。
「やだ」
小さな天使「え?」
女神は即答した。
「だーかーらー。やだって言ってるの!私今あの子達の観察で忙しいから!」
「いや、でも」
「うるさいなあもう!」
天使が抗議しようとした瞬間、女神は手を振り下げた。すると天使は、抵抗する間もなく女神の魔法に押し潰され見るも無惨な亡骸になってしまった。
「あ、やば。殺っちゃった。」
「蘇生面倒だなぁ〜…後で新しいコ何人か作ればいっか。最近人手少なくなっちゃったし。さて、続き続き!明日はどんなことするんだろうな〜」
〜第1話完〜