湿度の夢
水槽脳夢世界
アンネローゼ・アイルホルンの幻想物語
湿度の夢
むさ苦しい程の帰還欲求
「あつーい!」
「そう言われてもな…」
「おかしーよ!
きょねんはこんなにあつくなかったよ!」
「『地球温暖化』の影響じゃないのか?」
まだ幼かった私は、兄が言った「地球温暖化」の意味が分からなかった。
「『ちきゅーおんだんか』?」
「まぁ、簡単に言うと、地球が断熱性のある空気に囲まれているみたいな感じだな。
地球が丸ごとビニールハウスの中に入ったみたいな感じか?」
兄は幼い私でも分かるよう、必死に考えていた。
「なるほど!
まえにきいた『おんしつこーかがす』ってやつのせーなの?」
「おぉ!
アンネは頭良いな!
俺と違って!」
兄はまるで自分の頭が良くないような言い回しだったが、
幼い私の思い出補正を抜きにしても、兄は天才だった。
「おにーちゃんもあたまいーんじゃないの?」
「アンネよりか良くねーよ。」
そう言いながら兄は、おもむろに携帯電話を取り出す。
まだ携帯電話を持っていない当時の私にとって、携帯電話はまさに「魔法」であった。
もはや殆どの人が持っているとは言え、生まれる数十年前に開発された物だとは言え、
幼い私にとっては、その画面のブルーライト入りの光は、宝石より輝いて見えた。
私は兄のスマートフォンを覗き見る。
人のスマートフォンを覗き見る事は良くない事だと分かっていたが、
知的欲求・好奇心は妨げられない。
当時の私お得意の「後で神様にごめんなさいすれば大丈夫」方式だ。
兄は私がスマートフォンを覗いているのに気が付いて、
私も見やすいように少し角度を調節する。
当時の私はまだ字が読めなかったが、
太陽や雲、雨のイラストや、数字から、天気予報を見ているという事だけは分かった。
「・・・意外と気温は高くねぇな。」
「そーなの?」
「そーだよ。
・・・って、湿度やばっ!?」
「そーなの?」
「そーなんだよ。
ま、どーりで蒸し暑い訳だ。」
「どーすればいーの?」
「・・・除湿、入れるか。」
「さんせー!!」




