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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十七巻 黄金の髪の魔王
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黄金の髪の魔王  再邂逅 2

『ケイ!そっち行ったぞ!』

『分かった!』

 俺は敢えて隙を作って、ゴブリンを1匹突破させた。

 ゴブリンが向かう先には、しっかり装備を固めたケイ、こと蛍太郎がいる。

 ケイはロングソードを構えてゴブリンを待ち構える。構えは結構様になっている。

 ケイのすぐ近くにはリラさん、エレナが控えていて、万全のフォロー体制を取っている。


 ゴブリンがしっかりした造りの短剣を(ゴブリンにとってはロングソードだが)ケイに突き込もうとするのを、ケイは切っ先を軽く合わせて軌道を逸らして、そのままの動きでゴブリンの手首に切りつける。

 傷は浅いが、ゴブリンは短剣を落としてしまう。

 それでもゴブリンの戦意は衰えず、すぐに体の割に長い腕を振るって、ケイに爪を立てようとする。

 ケイはバックステップで躱すと、背の低いゴブリンの太ももに一撃を入れる。

 浅い。

 ゴブリンが飛び上がってケイに向かって掴みかかろうとする。

 それをエレナが槍の石突きで叩いて落とす。

「あと一歩だよ、ケータロー!!」

 そして、ケイに止めを刺すように促す。

 もちろん、ケイにエレス公用語は分からないがニュアンスで何を言われたのか分かったようで「はい!!」とエレス公用語で答えた。

 そして、地面に落ちて尚、呻ってケイを迎え撃とうとするゴブリンに向かって、ケイは駈け寄って蹴りを入れる。

 蹴りはゴブリンの肩に当たってよろけたところで、ケイがロングソードを、ゴブリンの鎧の隙間から首元に刺し込む。

 そして、しっかり奥まで刺さったところで、一度ひねってからゴブリンの体を蹴り倒しざまに剣を抜いた。

「良くやった、ケータロー!!」

 エレナがケイとハイタッチをする。

 うん。良くやったな。

 だが、エレナ。おまえ、ケイと仲良くなってるじゃないか?!俺には相変わらず暴言を吐くくせに・・・・・・。


「お兄ちゃん!まだ終わってないよ!」

 そうだったな。

 街道の各所で、今戦闘が繰り広げられている。

 グラン街道に突如としてモンスターの集団が出現して、行き交う人々を襲っているのだ。

 統率は取れていないが、ゴブリン達は鋼の武器に、鋼の鎧を身に纏っていた。鋼のヘルムも、すね当てもある。

 ただ、弓や盾は装備していない。

 

 俺たちはすぐに戦闘に参加した訳だ。

 数は百に満たない数なので、駆けつけた他の冒険者とも協力して蹴散らしていく。

 ケイも武装しているので戦闘に参加して貰っている。

 とは言え、ケイの戦力が必要な訳では無い。何かあった時に自分の身を守れる力を身に付けて貰いたかったのだ。

 創世竜の話しからすると、ケイはエレス移民前の人間なので、今の人間族のように強化されていないのだから、あまり厳しい戦いはさせられないが、ゴブリン1匹は倒せるようになる必要はあるだろう。

 命を取る覚悟も、しっかり身に付けて貰わなければ、今のエレスでは危険だ。

 ケイは一般市民ではない。とても重要な人物だから、この先何があるか分からないので、こうした経験が必要だと考えたのだ。

 ケイもそれに同意してくれた。


 妙な話なのだが、ケイはつい最近、若い頃のじいちゃんに剣の稽古を受けたようで、剣さばきはそれなりだ。

 防御魔法はガッチガチに掛けているが、攻撃支援系、肉体強化系の魔法はケイには掛かっていない。素の力で戦えるようになった方が、魔法支援を受けた時に効果的にその恩恵を生かせるからだ。


 


 ゴブリンとの戦いが終わった。

 すぐに冒険者たちが駆けつけたので、被害は少ない。それでも死者は出ている。

 死者は、連絡を受けた街道警備の人が運んでくれるが、それまで死者やその家族を守るのは冒険者の仕事になる。

 これに関しても多少の報償はギルドから出る。


 幸い、冒険者数人がその役を引き受けてくれたので、俺たちはグラーダへの道を進む事が出来た。



『ケイ。戦えるようになったな』

 俺はケイと馬を並べて進む。

 ケイはリラさんと一緒に大型の馬ピーチに乗っている。

『怖いし、必死だったよ』

 ケイは水筒から水を飲んでから答える。水筒をリラさんに返す時には「ありがとう」とエレス公用語を使った。

『エレス語も覚えてきたじゃないか』

 俺が言うと、ケイも俺に笑いかける。

『そういうカシムも、日本語の発音が良くなってきたよ』

『そうか?まだ慣れなくて・・・・・・。変だったら直してくれよ』

 互いに笑い合う。


 ケイは俺に日本語の「標準語」を教えてくれている。

 教わって分かったのだが、アズマ語はいろんな日本語の方言が混ざった、とてもおかしなものだったらしい。

 例えば、「君の名前は、何て言いますか?」と質問するにしても、「おまはんのなぁ、なんていいおすんえ?」と発音していた。

 アズマ語としてはこれが正解なのかも知れないが、せっかくだから日本語の標準語も習っておきたい。

 ついでに、アズマ文字と同じらしい漢字、ひらがな、カタカナも確認しながら教わっていた。それによって、「日本語」とか、「蛍太郎」とかの文字遣いを覚えた。

 アズマでは使われていない漢字もありそうなので、ワクワクが止まらない。

 

 で、ケイの方は、ミルにエレス語とエレス文字を教えて貰っている。子どもが教える方が覚えやすいし、教える方が勉強になるのだから、2人とも楽しそうに学びあっている。

 ケイは元々リザリエ様からエレス語を習っていたらしい。不真面目な生徒だったそうだが、それでも一応基礎は出来つつあった。

 エレスの文字も覚えていた。ただ、単語として使うには至っていないらしく、今はそれを練習している。


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