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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十七巻 黄金の髪の魔王
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黄金の髪の魔王  コイバナ 3

「それで、エレナは兄様の事が好きなのですか?」

 アールが常になくグイグイ尋ねる。どこか嬉しそうだ。

「ええ?!いや・・・・・・。嫌いじゃないですよぉ。あの人のおかげで、男の人、だいぶ平気になったし」

「またライバル増えた!!」

 ミルが眉をつり上げる。

「ああ~~~。でも、子種だったら族長の方が欲しいかな~~って」

「「子種!?」」

 ファーンとリラが叫ぶ。リラは咄嗟にミルを抱き寄せて耳を塞ぐ。

「ああ~~~!何するのぉ!!」

 ミルが抗議するが、見向きもせずにリラはエレナを見る。

「子種って、あなた!!」

「えげつない発言しやがって!」

 2人が抗議すると、エレナは慌てて説明をする。

「ちょっと待って下さい!これは獣人族の特性なんです!」

「はあ?」

「獣人の子どもって、自分(親)と同じ獣属性を得られるか分からないし、とにかく強さが第1の価値観じゃないですか!だから、子孫を、特に同じ獣属性の子どもを、それも強い子どもを残す事を本能的に望むんです!」



 エレナの言う通り、獣人族の出産は他種族よりかなり特殊だ。

 獣人族にはハーフはいない。

 結婚するのが人間となら、子どもは獣人になるか人間になるかのどちらかである。それ故に双子が生まれても片や人間、片や獣人なんて事も有る。

 しかし、それは確率的には良い方で、獣人族の遺伝子は他種族より弱いため、相手方の種族で誕生する事の方が多い。

 だから、獣人族は同じ獣人との子を成す事を望む。


 更にそこから、トリ獣人とイヌ獣人が結婚したとして、自分と同じ獣属性で生まれるかも確率である。

 その確率に、男女の別はない。関係あるのは獣属性の希少性である。

 獅子や虎などの希少種は同じ獣属性同士で子どもを成しても、何代も遡った遺伝が突然出る事も珍しくない。

 現にマイネーの母親も、子ども自体は5人産んでいるし、相手も毎回トラ獣人を選んでいる。にもかかわらず、トラ獣人として生まれたのはマイネーだけだった。

 

 そんな理由から、獣人族は結婚というシステムを必要としていない。

 子孫を残したかったら子種を貰う、与える、それだけで良い。結婚というシステムはないが、強く優れた子孫を残すために、略奪婚が古くから有る。これは他の里、他の種族(この場合は住んでいる地域)の女を掠って手込めにする風習である。

 この風習のメリットは血が濃くならず、より強い子が生まれやすいと言う事にあった。

 エレナが男性恐怖症になったきっかけは、この略奪婚に遭い、手込めにされ掛けたからである。

 そして、獣人はストレートな考えの種族なので、合理的に「子種が欲しい」とか、「子を産ませる」などと言うのである。

 

 結婚のシステムが必要ない以上、生まれた子どもは、自分と同じ獣属性だった場合はその親が育てる場合が多い。

 結婚をするのは、同じ獣属性同士が子種をやり取りする場合が多いのである。そうで無い場合も少なくないが・・・・・・。

 マイネーの例だと、事情が異なる。「トラ獣人の親を持って生き残れるのはトラ獣人の子だけ」と言われるほどトラ獣人は別格な力を持っているし、激しさも持っている。だから、マイネーには兄妹はいない。

 これが獅子だとまた違って、獅子は子どもをとても大切に育て、丁寧に鍛える。


 そして、獣人は本能的に強者の子を欲しがる。


「だから、あたしも子どもを作るなら一番強い人の子種が欲しいって思うんですよ~~。別に族長の事が好きな訳じゃ無いんです」

 エレナに話しを聞いて、ファーンとリラは複雑そうな顔をする。

「獣人って、結構ドライなんだな。いや、知ってはいたけどさあ」

 ファーンがため息を付く。

「そうですよ。族長だっていろんな女に子種をあげてるんですから」

 ミルの耳から手を離し掛けたリラが、再びミルの耳を強く塞ぐ。

「いた~~い!!」

 ミルの抗議の声を無視して憤慨して叫ぶ。

「あの人、私の事を『好き』とか言うクセに、本当に汚らわしい!!」

 リラの言葉にエレナが慌ててマイネーのフォローに回る。

「だから、それは獣人族の習慣であって、文化なんですよ!しかも、族長はそうした文化は古いって反対している人なんです!でも、族長って立場だから請われれば断れないんですよ!それも族長の義務なんですから!」

 

 獣人族は、カシムが以前に言った通り、まだまだその風習や文化は他種族にとっては謎だらけなのである。




「それで、皆さんはやっぱりカシムさんの事が好きなんですよね?!」

 エレナが強引に話しを変える。

「もっちろん!!」

「好きよ!」

 ミルとリラは即答する。

「ああ~~。どうかなぁ」

 ファーンが顔を歪めてそう言うと、リラがファーンを睨んで言う。

「あなたまだそんな事言って誤魔化して!!」

「うひぃ!すみません!好きです!」

 リラの迫力に負けてファーンが謝る。

「ふふふ」

 アールが嬉しそうに笑う。

「アールさんは?」

 エレナの問にアールは目を丸くする。

「え?もちろん好きですが、やっぱり兄妹は結婚出来ないですよね?」

 アールは頑なだ。

「出来たら結婚したいの?」

 リラが真剣な目で確認する。

 だが、アールはブンブン首を振る。

「け、結婚はしなくて良いですけど、一生側には居たいです」

「それは結婚と変わらないよなぁ・・・・・・」

 ファーンがため息を付く。


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