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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十七巻 黄金の髪の魔王
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黄金の髪の魔王  コイバナ 1

 方針は決まった。

 しかし、中々にハードな話しを聞いてしまった。

 女性陣の部屋から男性陣の部屋に移った俺は、水差しから水をコップに注いで一気に飲み干す。

 女性陣の部屋は大部屋だが、男性陣の部屋は4人部屋だ。

 それぞれにベッドに腰を降ろし、寝る準備をする。

 ケイタロウは、着ている服しか無いとの事で、取り敢えずは俺の予備の服を貸す事にして、明日にでも必要なものを買おう。もちろんパーティー費で事足りる。ついでに武器、防具も必要だな。最低限身を守れるようにはなってもらった方が良さそうだ。

 というか、ケイタロウの荷物はやたら重そうだったけど何が入ってるんだ?

 取り敢えず鞄毎ファーンのリュックに収納して貰っているが・・・・・・。


 身支度が終わった俺は、ベッドの上で胡座をかきながらケイタロウに話しかけた。

『なあ、ケイタロウ。辛いかも知れないけど、ちょっと聞いても良いかな?』

 顔を洗って、手足をぬれタオルで吹きながらケイタロウは俺を見る。

『なんですか?』

『その・・・・・・。魔王チヅルの事だけど。いや、チヅルさんと言うべきかな?ともかく、君とはどんな関係だったんだい?』

 聞いてはいけないかと思いつつ、やっぱり気になって尋ねてしまった。

 だって、リザリエ様はケイタロウの事をずっと好きで居続けているんだぞ?つまり、リザリエ様とも何らかの関係があったって事で良いんだよな?

 ランダはランダで、チヅルの名前に反応して、アズマ語が分からないなりにジッとこちらを見ている。


 ケイタロウは、タオルを干してからベッドに腰を降ろすと話してくれた。


『チヅルは、元々は僕と同じただの人間の女の子だったんだ。僕の学校のクラスメイトで、僕の事を好きでいてくれた。僕も彼女が好きだったんだ』

 なるほど。やっぱりそうか。

『でも、彼女の気持ちにも、自分の気持ちにも気付いたその日に、僕たちは地獄に落ちた。僕はルシオールに守られていたけど、彼女や、僕の友人達は僕の目の前で地獄の化け物たちに食われたんだ』

 ケイタロウは言葉を詰まらせる。

『すまない、もう良いよ。辛い事を思い出させてしまったな』

 俺はそう言ったが、ケイタロウは首を振った。

『いや。聞いて貰った方が良いかもしれない』

 吐き出す事で、気持ちが和らぐ事も有る。ケイタロウがそう言うなら、俺も話しを聞きたい。

 その前に、一応ランダにも通訳して話の内容を知らせる。

 ランダは無言で頷きながら聞く。


『僕たちは、夏休みに海に遊びに行ったんだ。ああ。僕たちの国は平和な国でね。もう何十年も戦争をしていないし、モンスターとかもいない世界なんだ。

 だから、学生はみんな遊んだり、スポーツとかいろんな事に夢中になれたんだ。

 それで、僕は初めて出来た友人達と近くの島に遊びに行ったんだ。

 そこでタナカさん・・・・・・チヅルが僕の事を好きだったと知ったし、僕もチヅルを好きだったって気付いたんだよ。

 でも、僕がルシオールにとって大切な存在だと知った地獄の魔王達が、ルシオールと出会う前に僕の事を殺そうと大災害を起こしたんだ。凄い数の竜巻と黒い手。

 そして、島が割れて、僕たちは深い穴に落ちた。

 そこは地獄の第四階層だった。

 僕だけはルシオールの力に守られて、地獄の化け物たちに気付かれなかったけど、友人達は次々奴等に食われていったんだ。

 そして、チヅルも最後まで僕の名前を呼びながら食われたんだ。

 僕は何も出来なかった。ただ見ている事しか出来なかった・・・・・・』

 ケイタロウが拳をギュッと握りしめる。

 俺はランダに通訳しながら話しを聞く。


『その後で、僕はルシオールに出会った。地獄の第八層。これはルシオールが地獄の第七層の魔王から自分を守る為に造った階層らしく、そこで数百万年僕を待って眠っていたそうだ』

 凄いスケールの話になってきた。時間の単位が尋常じゃない。


『何で僕なのかは分からないけど、ルシオールに呼ばれていたのは確かだよ。

 僕はルシオールを連れて地獄の穴を登り、地上に戻れたけどそこは僕のいた世界「地球」じゃなくて、このエレスだったんだ』

 そして、さっき聞いた話しに繋がるのか。


『さっき話していなかったんだけど、本当は明日。あ~~。僕からしたら明日になるんだけど、本当だったらリザリエと結婚する予定だったんだ』

 俺は思わず「ぶほっ!!」とむせてしまった。

 いや、驚くよ!!リザリエ様と明日結婚?!結婚?!!

 おいおいおいおい!チヅルは?リザリエ様は?!

 俺はあわててランダに通訳すると、ランダも目を丸くして動揺を隠しきれていない。

『やっぱり君たちはリザリエを知ってるんだね・・・・・・』

 ケイタロウがジ~~~ッと俺たちを見る。

 だが、すっとぼけるしかない。

『まあ、何か事情がありそうだから聞かないけど・・・・・・。いや、聞くのがちょっと怖いっていうのがあるよ、本当は』

 ケイタロウが悲しそうな顔をする。

『こんな僕をリザリエが許してくれるとは思えないし、許しを求める資格も無い・・・・・・』

 ケイタロウが落ち込む。

 俺は言いたかった。リザリエ様は今も君の事を思っているんだぞって。でも、それを言うなら本人が言うべきだと思う。

『ケイタロウ・・・・・・』

 何て声を掛けたら良いのだろうか・・・・・・。


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