黄金の髪の魔王 コイバナ 1
方針は決まった。
しかし、中々にハードな話しを聞いてしまった。
女性陣の部屋から男性陣の部屋に移った俺は、水差しから水をコップに注いで一気に飲み干す。
女性陣の部屋は大部屋だが、男性陣の部屋は4人部屋だ。
それぞれにベッドに腰を降ろし、寝る準備をする。
ケイタロウは、着ている服しか無いとの事で、取り敢えずは俺の予備の服を貸す事にして、明日にでも必要なものを買おう。もちろんパーティー費で事足りる。ついでに武器、防具も必要だな。最低限身を守れるようにはなってもらった方が良さそうだ。
というか、ケイタロウの荷物はやたら重そうだったけど何が入ってるんだ?
取り敢えず鞄毎ファーンのリュックに収納して貰っているが・・・・・・。
身支度が終わった俺は、ベッドの上で胡座をかきながらケイタロウに話しかけた。
『なあ、ケイタロウ。辛いかも知れないけど、ちょっと聞いても良いかな?』
顔を洗って、手足をぬれタオルで吹きながらケイタロウは俺を見る。
『なんですか?』
『その・・・・・・。魔王チヅルの事だけど。いや、チヅルさんと言うべきかな?ともかく、君とはどんな関係だったんだい?』
聞いてはいけないかと思いつつ、やっぱり気になって尋ねてしまった。
だって、リザリエ様はケイタロウの事をずっと好きで居続けているんだぞ?つまり、リザリエ様とも何らかの関係があったって事で良いんだよな?
ランダはランダで、チヅルの名前に反応して、アズマ語が分からないなりにジッとこちらを見ている。
ケイタロウは、タオルを干してからベッドに腰を降ろすと話してくれた。
『チヅルは、元々は僕と同じただの人間の女の子だったんだ。僕の学校のクラスメイトで、僕の事を好きでいてくれた。僕も彼女が好きだったんだ』
なるほど。やっぱりそうか。
『でも、彼女の気持ちにも、自分の気持ちにも気付いたその日に、僕たちは地獄に落ちた。僕はルシオールに守られていたけど、彼女や、僕の友人達は僕の目の前で地獄の化け物たちに食われたんだ』
ケイタロウは言葉を詰まらせる。
『すまない、もう良いよ。辛い事を思い出させてしまったな』
俺はそう言ったが、ケイタロウは首を振った。
『いや。聞いて貰った方が良いかもしれない』
吐き出す事で、気持ちが和らぐ事も有る。ケイタロウがそう言うなら、俺も話しを聞きたい。
その前に、一応ランダにも通訳して話の内容を知らせる。
ランダは無言で頷きながら聞く。
『僕たちは、夏休みに海に遊びに行ったんだ。ああ。僕たちの国は平和な国でね。もう何十年も戦争をしていないし、モンスターとかもいない世界なんだ。
だから、学生はみんな遊んだり、スポーツとかいろんな事に夢中になれたんだ。
それで、僕は初めて出来た友人達と近くの島に遊びに行ったんだ。
そこでタナカさん・・・・・・チヅルが僕の事を好きだったと知ったし、僕もチヅルを好きだったって気付いたんだよ。
でも、僕がルシオールにとって大切な存在だと知った地獄の魔王達が、ルシオールと出会う前に僕の事を殺そうと大災害を起こしたんだ。凄い数の竜巻と黒い手。
そして、島が割れて、僕たちは深い穴に落ちた。
そこは地獄の第四階層だった。
僕だけはルシオールの力に守られて、地獄の化け物たちに気付かれなかったけど、友人達は次々奴等に食われていったんだ。
そして、チヅルも最後まで僕の名前を呼びながら食われたんだ。
僕は何も出来なかった。ただ見ている事しか出来なかった・・・・・・』
ケイタロウが拳をギュッと握りしめる。
俺はランダに通訳しながら話しを聞く。
『その後で、僕はルシオールに出会った。地獄の第八層。これはルシオールが地獄の第七層の魔王から自分を守る為に造った階層らしく、そこで数百万年僕を待って眠っていたそうだ』
凄いスケールの話になってきた。時間の単位が尋常じゃない。
『何で僕なのかは分からないけど、ルシオールに呼ばれていたのは確かだよ。
僕はルシオールを連れて地獄の穴を登り、地上に戻れたけどそこは僕のいた世界「地球」じゃなくて、このエレスだったんだ』
そして、さっき聞いた話しに繋がるのか。
『さっき話していなかったんだけど、本当は明日。あ~~。僕からしたら明日になるんだけど、本当だったらリザリエと結婚する予定だったんだ』
俺は思わず「ぶほっ!!」とむせてしまった。
いや、驚くよ!!リザリエ様と明日結婚?!結婚?!!
おいおいおいおい!チヅルは?リザリエ様は?!
俺はあわててランダに通訳すると、ランダも目を丸くして動揺を隠しきれていない。
『やっぱり君たちはリザリエを知ってるんだね・・・・・・』
ケイタロウがジ~~~ッと俺たちを見る。
だが、すっとぼけるしかない。
『まあ、何か事情がありそうだから聞かないけど・・・・・・。いや、聞くのがちょっと怖いっていうのがあるよ、本当は』
ケイタロウが悲しそうな顔をする。
『こんな僕をリザリエが許してくれるとは思えないし、許しを求める資格も無い・・・・・・』
ケイタロウが落ち込む。
俺は言いたかった。リザリエ様は今も君の事を思っているんだぞって。でも、それを言うなら本人が言うべきだと思う。
『ケイタロウ・・・・・・』
何て声を掛けたら良いのだろうか・・・・・・。




