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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十七巻 黄金の髪の魔王
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黄金の髪の魔王  闘神王の衰え 2

 驚愕したのは、メギラも同様だった。

「な、なにをだ?」

 驚きつつも、メギラはアクシスの言葉に反応した。

「教えて差し上げますわ。『可愛いのは最強』で、『可愛いのは正義』なのですって。ビアンカが教えてくれました」

「はぁ?なんだそれ?」

 メギラから怒気が消える。呆気にとられたのか、拍子抜けしたのか。

「あなたの顔は、わたくしが見ても可愛いのですから、『最強』で『正義』なのでしょ?それは地上人ではとても素晴らしい褒め言葉ですよ。あなたたち魔神には違うのですか?」

 「最強」はともかく、「正義」は魔神にとっては褒め言葉では無い。正義の反対に位置するのが魔神であり、反対にある物こそが、魔神の存在を確かな物にする為のエネルギーなのだ。つまりは「悪」である。


 だが、メギラは意外な反応を示す。

「ち、違わない・・・・・・」

 完全に毒気が抜けた表情をする。

「でしょ?」

 アクシスの明るい声が陰惨とした牢獄に響く。周囲の魔神達が、メギラの反応に驚いて成り行きを見守っている。


「ああ、良かったわ。あなたがお話し出来る魔神だったのですもの」

 アクシスが微笑み、その髪が一房だけ黄金色に輝き色を変えた。

「ああああああ!!」

 黄金の髪を見たメギラが、呻くような驚いた様な声を上げる。顔に似合った少女の様な可愛らしい声だ。

 メギラの目から溢れるような涙が流れ出す。

「あああ!俺は、俺はぁ?!」

 叫びながら、メギラ自身も混乱したようにそこだけ動く首を振る。



「何だ、これは?!」

 ファルザン将軍が叫ぶ。

「どうなっているんだ?おい、魔導師!」

 アスラン将軍が控えている魔導師に尋ねるが、魔導師も首を振る。

「分かりません!しかし、鎖の拘束は解けません」

 魔導師は懸命に魔法力をコントロールしながら答える。


 メギラの体が、みるみるうちに縮んで行き、まるで少年の様な体格に変化したのだ。顔はそのままなので、檻の中には鎖で全身を拘束された美少年がいる状態になったのだ。

「あら可愛いわ!!その方がとっても似合っているわ!!」

 アクシスだけが嬉しそうにはしゃいでいる。

「どうなっている?!」

「どうなってるんだ!?」

 誰が叫んでいるのか分からないくらい、同じ言葉が牢獄中に響く。


「あ、あの、俺・・・・・・」

 小さな声で美少年になったメギラが、目から涙を零しながら言葉を発する。

「メギラさん。その姿だと、『わたし』とか、『ぼく』のほうが似合いますよ」

 アクシスは嬉しそうに提案する。

「あ、あの、ぼく。あなたを守る為に生きたいです」

「はあ?!どういう事だ?」

「何をいきなり!!」

 地上人だけでは無く、魔神達も突然の裏切りにメギラに向かって怒鳴る。


「ぼ、ぼく。色々間違っていたんだと気付きました。ぼくはあなたを守る為に力を使いたいです」

 メギラの顔から、一切の邪気が消えている。その身焦がすほどの破壊衝動も消え去っていた。


「ま、まさか・・・・・・。『昇天』したのか?」

 魔神から神への変化。行動原理、存在目的の変更によってそれは生じる。

 神も魔神も元は同じ種族。善行により人々から正の気持ちを受け取り力に変化させるのが神。負の感情を取り込み力に変化させるのが魔神である。

 考え方を大きく変化させる事で、「堕天」する者もあれば「昇天」する者もある。


 だが、ここまで極端に変化して属性が変わる事があるのだろうか?

 しかも、相手はあのメギラ断将軍だ。魔神王でさえ手を焼く程の暴れん坊である。

 だが、目の前で「変身」と言って良いほどの肉体の変化をして、性格もがらりと変わったのだ。

 これを「昇天」と言わなければ説明出来ないし、誰も納得出来ない。

「信じられん・・・・・・」

 ファルザン将軍が呟いた。



「『昇天』と言う事は、この子は神様になったんですか?」

 アクシスがキョトンとして聞いてくる。

「分かりませんが、おそらくはそうなのでは無いでしょうか?」

 答えたアスラン将軍だって、こんな現象は見た事がないし、彼の知識では知らない事だった。

「だったら、鎖で繋ぐ必要が無いのではないですか?」

 アクシスの言葉に、ファルザン将軍が慌てて言う。

「それはなりません!事実昇天したのだとしても、すぐに鎖を解く訳にはいきません!!」

「そ、それはぼくもそう思います。ぼくもぼくを信じられない思いです。また変化しないとも言えないのです」

 メギラも叫ぶ。キラキラ輝くピンクの瞳が涙で潤む。薄ピンクの髪が、更にフワリと伸びた。これは美少年と言うよりは美少女のようにしか見えない。


「こ、これは、王女殿下の力なのか?」

 アスラン将軍が呟く。

 あの闘神王の娘なのだから、何らかの力を持っていても不思議ではないと、ほとんど世間一般に考えられていた。

 それ故に、これ程の変化を伴った「昇天」は、アクシスの特殊な力による物だと、すぐに納得された。

 実際には地獄の穴を塞ぐ、または拡大させる能力なのだが、それは時空間を操作する力である。創世竜にも不可能な事を可能にする力を秘めているのだ。

 その力が魔神に何らかの影響を与えたのかも知れない。また、まだ知らぬ力の発現だったのかもしれない。

 それは誰にも分からない事だった。


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