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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  ハイエルフ 5

 タイアス殿の合図で持ってこられた背負い袋は、まあ、リュックサックだ。小さく、とても機能性があるようで、小分けして収納できる様にいくつかのポケットが付いている。しかし、こんなに小さくてちゃんと物が入るのか?着替えと水筒と、ちょっとした軽食しか入れられないくらいの大きさだ。とても長旅には不向きなリュックサックだ。


 俺が心配していると、タイアス殿は得意げな表情を見せる。

 そして、俺たちは驚愕する。リュックサックとしては小さく、厚みもない袋なのに、そこからヌ~~~ッと大きなテントの入った袋が出てきた。明らかに出てきたテントの袋の方がリュックより大きい。

 そして、取り出したテントをファーンに渡す。その後、ファーンからテントを再び受け取ったタイアス殿が、まるで手品のように小さいリュックに入れていく。

 そして、テントが入ってしまったリュックをファーンに渡す。

「か、軽い!?嘘だろ?あのテントより遥かに軽いぞ!何にも入っていないようだ!!」

 ファーンが驚きの声を上げる。マジか!?

「ちょ、ちょっと貸して?」

 俺が好奇心を押さえ切れずにそう言うと、ファーンがリュックを怖々と俺に貸してくれた。

 うわ、マジで軽い。

 リラさんにも怖々と・・・・・・いや、実際に初めてこれを目の当たりにして持ってみると、何だか怖々としてしまうんだよ。

 怖々とリラさんに渡す。ほれ、リラさんも怖々と手にする。

「うわ!何コレ?!すごい!!」

 リラさんも驚き感動する。そして、ほら、怖々とタイアス殿にリュックを戻す。可愛いなぁ。

 リュックを受け取ったタイアス殿は、最高のどや顔で・・・・・・。

 そう、本当に光り輝くどや顔を人生で初めて見たが、そんなどや顔で、リュックの中から次々と物を取り出す。


 テントの袋がもう1つに毛布が5枚、鍋やらフライパンやら食器やらがごちゃごちゃ。ロープに食料。

 リュックから物が出てくる度に、俺の膝の上のミルが大喜びで拍手するものだから、タイアス殿はもちろん、周りのエルフみんなデレデレして、どや顔に拍車が掛かる。

 さすがに拍車が掛かりすぎて、しまいにはハイエルフの輝きがドス黒く見えてきた。

 水がたっぷり入ったバケツ大の水筒が3つも出てきた時にはさすがに度肝を抜かれた。

 入るも入ったりだ。5・6人パーティーの全荷物が余裕で入れられるぐらいの収納力じゃないか。



「どうかね?あなたがいる事でカシム殿は大いに助かる事だろう。もうあなたはカシム君のパーティーになくてはならない存在になった」

 すると、意外な事に、本当に意外な事にファーンが涙をポロポロこぼし出すと、タイアス殿に跪いて礼をする。

「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 なんだ?こっちまで何だか泣けてきてしまう。

「オレ、ずっとスラムで育ってきて、人に『役立たず』って言われてきました。だから、誰かの役に立てるような人間になりたくって、オレを助けてくれた人のように『マスター』になれるように冒険者になりました。でも、誰も『探究者』の仕事を理解してくれず、ずっと役立たずでした。確かにオレが出来ない事が多いのも悪かったと反省していたんです。でも、これでオレは仲間の役に立てる!!オレは『人』になれる。ありがとうございます!!」

 何だよ、ファーン。お前は俺の役に立ってるよ。

 お前と仲間になれて良かったと心底思ってるよ。お前は俺の最高の相棒だよ。ケンカの出来る友達って最高じゃないか。


 俺はなんとなくだけど、ファーンに手を差し伸べた。衝動的にどうしてもそうしたくなった。

 そして「相棒」とつぶやきかける。

 すると、ファーンも俺を見て涙をぬぐうとクシャッと笑い俺の手を取る。

「ああ、相棒だ」

 リラさんがもらい泣きしてる。

「私もどうか仲間に入れてください、カシムさん」

 ファーンと俺の握り合う手に、リラさんが近寄ってきて手を乗せる。

 もう、頷くしかない。

「こちらこそ、よろしくお願いします、リラさん」

 リラさんが涙をこぼしたまま満面の笑みを浮かべる。


 周囲から祝福の拍手が巻き起こる。何だか成り行きを見守っていたハイエルフたちももらい泣きをしている。これが感受性って奴か。

 もっとハイエルフってクールで偏屈だと思っていた。いや、身内に入れてしまえばそれだけ情に厚いって事か。そして、俺たちはもう、彼らにとって身内なんだ。そう言うことか。

 

 俺を含め、全員が感動に浸っている時に、爆弾発言が周囲を瞬時に凍り付かせた。

「じゃあ、ミルも仲間に入れて、お兄ちゃん!!」

 発言主は、俺の膝に座っているハイエルフの至宝だ。

「い、いや。ミルちゃん?」

 タイアス殿が思いっきり狼狽えている。

 それは俺も同じだ。子どもだからっていう、思いつきでの発言にしても止めるべきだ。


「ミル。それは出来ないよ。俺たちは白竜に会いに行くんだ。創世竜だよ。それはとても恐ろしい竜で、会って無事だった人はほとんどいないんだ。・・・・・・俺も『会う』なんて言っちゃったけど、会ったところで話しなんかする間もなく燃やされちゃうかも知れないんだ。そうなった時、俺は君を守れないかも知れない。そうなるとハイエルフのみんながとても悲しむ。だから連れて行く事は出来ない」


 俺がそう言い切ると、タイアス殿も周りのハイエルフたちも明らかにホッとした表情になる。そして、俺に「よく言った!」という声が丸聞こえな表情を見せる。

「でも、ミルは強いよ!まだ子どもだけどハイエルフだし、忍者の修行もしてたし」

 ええ?この子もヒシムさんみたいに変な事してたの?「ござる」とかって言い出さない?

 全員の白い目が正座を続けるヒシムさんに向く。だが、この人は空気を読まない。

「ええ。ボクの娘は歩き始めた時から忍者の修行に励んでいます。ボクが体術を教えましたからね!」

 いや、みんなあなたを非難しているんですよ。なのに何でそんなに得意気なんですか?


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