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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十五巻 紫竜討伐
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紫竜討伐  最強の暴君 6

「俺たちからは説明できないんだよ。何で付いてきてるのかも知らないし、話も通じないんだよ」

 俺がエレナに説明する。

 エレナは納得いかないらしく、ファーンやリラさんにも説明を求める。

 だが、2人にも苦笑と首を振られて、「なんなんですか~~~」と呻いていた。

 まあ、話があるなら向こうから接触してくるだろうし、用がなけりゃその内、お館に戻るだろう。残った女性たちの世話を焼かなきゃならないはずだからな。



 それから3時間ほどした頃だった。

 晴天だった空が、突然暗くなる。

 ハッとして俺たちは空を見上げた。

「あ、あれは!!??」

 俺は驚いて大きな声で叫んでしまった。

 音もなく、風のゆらぎもなく、俺たちの上空100メートルほどのところを、巨大な黒い竜が通過したのである。


 黒竜!?

 何でこんなところに?

 そう思ったが、俺は嬉しさが溢れた。

「黒竜!!」

 会いたかった!本当に会いたかった!

 すでに、とんでもない速度で南に向かって飛んで行っているが、俺はあらん限りの声を張り上げた。

「黒竜ーーーーーーーー!!!俺だーーーーー!カシムだぁぁぁーーーーー!!!」

 普通は聞こえないだろうが、すぐに反応があった。

 再び空に影が差し、見上げると、黒竜が上空で制止して巨大な目で地上の俺たちを見ていた。

「黒竜!!!」

『カ、カシム!?』

 250メートルを超える巨体に、巨大な口から発せられた驚く黒竜の声は、大気を揺らして大地を揺るがせた。

 馬たちが一斉に驚いてジタバタとするので、俺は馬から下りてなだめる。エレナは振り落とされそうになっていた。そもそも黒竜を見たのも初めてだろう。驚いて当たり前だな。

 


 突然黒竜が消えた。

「黒竜?!」

 驚いてみんなで空を見つめる。

「あれ?」

 ミルが呟く。

「なんか降ってくる」

 目をこらすと、確かに米粒みたいに小さい影が、徐々に大きくなって落ちてくる。

 小さい何か生き物だ。あれは・・・・・・子犬?

 俺は慌てて落ちてくる小さい子犬を受け止めようと、ワタワタする。

 風に左右されながら、四肢を広げた子犬、あれはポメラニアンか?それがちぎれんばかりに尻尾を振りながら落ちてくるのだ。

 俺は全技術を総動員させて、落下の衝撃を殺しながら子犬をキャッチする。

 地面に仰向けに倒れながらキャッチに成功すると、その子犬は滅茶苦茶に興奮したように周囲を走り回りながら、千切れんばかりに尻尾を振っている。開いた口から舌がだらりと出て、「キャンキャン」ひたすら鳴いている。

 この子犬・・・・・・黒竜だ。

「うわ!こいつ嬉ションしたぁ!!」

 子犬は、走り回りながらおしっこをまき散らし、それが飛び散ってファーンの足に思いっきりひっかかっていた。

「落ち着けって、黒竜!俺も嬉しいから」

 そう言いながら俺が両手を広げると、子犬が俺の胸に飛び込んできた。そして、抱っこされて嬉しそうにペロペロと俺の顔をなめる。

「あはははっ!可愛いぞ、コッコ!!」

 子犬姿の黒竜を、俺もなで回す。

「ちょっと落ち着きなさい」

 ヒョイッとリラさんにコッコを取られてしまった。


「今は犬なのは分かるし、それが可愛らしいのも事実だけど、あなた、黒竜よね?せめてコッコちゃんの姿になってもらえる?」

 リラさんに言われて、子犬が一瞬シュンとしてから、姿が揺らいで人間の少女の姿になる。

「ぎゃああああっっ!なんすか?なんすかさっきから!!」

 エレナが叫ぶが無視する。

 現れた少女は、紛れもなくコッコで、またあの汚い黒い毛皮のような服、と言うかほとんど下着姿だった。靴も履いていない。

「カシムゥ!!会いたかったぞぉ!!」

 そうして改めて俺に飛びついてきた。

「コッコォ!俺も会いたかったよ!」

 俺とコッコはヒシッと抱き合う。

「みんなも元気だったかのう?!」

 コッコがみんなを見回して、自分が知らない面子、アールとエレナがいる事にハタと気付く。

「あややややっ!?こやつらは誰じゃ?!」

「だ、誰はこっちのセリフなんですが!?」

 エレナが完全に混乱して目を回しそうになっている。

「フフフ。コッコちゃんが自分からバラしちゃったんだから、私たちには責任ないわよね?」

 リラさんがすかさず俺たちに非は無い事を伝える。

「あれから仲間が増えたんだ。アールとエレナだよ。よろしくな、コッコ」

 しっかりと抱きしめながら俺は言う。


「コッコちゃ~~~ん!!」

 ミルがコッコに飛びつく。

「おお~~~!ミルゥ!!会いたかったぞぉ!!」

 コッコが俺の手から離れてミルと手を取り合って回り出す。テンションが高いな。そして、微笑ましい光景だ。

「オレもさ、会いたかったけど、ちょっと嬉ションはどうなの?」

 濡れたズボンを見せながらファーンが言う。

 すると、コッコは真っ赤になる。

「あ、あれは、演出じゃ!!犬ならするじゃろうが?!し、心配するな!多少匂うかも知れないが、結局はただの水じゃ!」

「いや。匂うんだったらそれションベンじゃん・・・・・・」

 納得いかなそうにしているファーンは無視して、俺はコッコに尋ねる。


「それよりコッコはどうしてこんな所にいるんだ?」 

 俺が尋ねると、コッコが俺に向かってビシリと指を突きつける。

「カシム!お前の所為じゃ!!お前と会えんストレスが限界まで溜まったから、その発散のためにここまで来たんじゃ!!しかし、まさかここでお主らに会えるとは思わんかった!!」

 コッコは滅茶苦茶ニコニコしている。

「ストレス発散って?」

 ミルが尋ねると、コッコは得意そうに細い腕に力こぶを作る風にしてみせる。

「この先にのう」

 コッコが南を指さす。俺たちが来た方向だ。

「紫竜が棲んでおるのじゃ!そいつをぶん殴って遊ぶんじゃ!!」

「ヒッ!!ヒィ!!」

 小さな悲鳴にコッコも俺たちも、声の方を見る。


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