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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十五巻 紫竜討伐
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紫竜討伐  最強の暴君 4

「それで、ここから本題なのだが、俺は竜騎士を目指している。すでに白竜、黒竜からは承認を得ている。紫竜にも承認してほしいのだが」

 ようやくこれで、しっかりした会談が行われる事となった。


 俺の言葉を聞いた紫竜は、明らかに驚いた表情を浮かべる。そして、胸の羽根飾りをなでる。

「貴様が、白竜姉様に認められているだと?!」

 む。紫竜は白竜を姉として慕っているのか。あと、創世竜同士は、やはり情報共有はしていないんだな。

 聖竜はどこかからか情報を得ていたが、そもそも白竜、黒竜に関しては地上界では有名な話になっているし、俺の他の竜騎士探索者もいたんだから、そいつらから聞いたのかも知れない。

 何せ、普通は白竜か聖竜にまず挑もうとするだろうからな。 俺だって白竜に言われなければ、次は聖竜に会いに行き、黒竜に会いに行こうとは、最後まで思わなかっただろう。


「私からもお願い。聖魔大戦で、あなたたちの力を貸してほしいの」

 リラさんが剣を紫竜に手渡しながら言う。

「聖魔大戦・・・・・・。なるほど、存じませんでした」

 そして、紫竜は世界の事に関心が無いのも分かった。

「ですが、心配はご無用です。聖魔大戦があったとしても、女性たちは我が領域で保護いたします」

 ん?どういう事だ?

「リラ様がなんと言おうと、わたくしは、この男を信じる事が出来ません。わたくしは断じてこの不埒な男を竜騎士とは認めません!!!」

「は?何でだよ!?」

「も、もう少し話し合いましょう?」

 リラさんも困惑して説得しようとかかる。

 だが、紫竜はさっさとリラさんから距離を取ると、姿がぼやけて、またゴブリンロードの姿に戻る。

「ありゃ。戻っちまった。あっちの方がかっこよかったのに」

 ファーンが言うと、紫竜は、必死に首を振る。

「そ、そんな事はございません!皆様の美しさに比べれば塵芥。それこそゴミ虫が相応しい醜い姿でございます」

 また極端に自分をおとしめる。

「いや!滅茶苦茶美形だったじゃん!!」

 紫竜はファーンの言葉を頑なに受けようとしない。

「ともあれ、リラ様とお約束いたしました通り、わたくしはこれより、皆様をジト村までお送りいたします」

 そう言って手を振ると、真珠色の壁が消え去った。

 消えてみると、結構時間が経っていたはずなのに、エレナや他の脱出者は、まだ割と近くにいた。

「あ、あれ?カシムさん!皆さん?!」

 真珠色の壁が消えた事に気付いたエレナが呆気にとられたように言う。


 


 結局、それからは紫竜ニーチェが先頭に立って、リラさんやファーンと話しながら進み、一応の説得時間は残された状態でジト村に向かった。

 俺は、少し距離を取れとファーンに言われたので、少し後方を歩きながら聞き耳を立てている。

 ミルがプンプン怒りながら、俺の腕にしがみついて歩いている。


 一応アールには口止めしたが、エレナを含めて他の人にはゴブリンロードが紫竜である事は話していない。

 本来は秘密なのだ。紫竜がばらしたのだから、アールは知ってしまったが、これは紫竜の所為と言う事になる。遅かれ早かれ、エレナもこの秘密を知る事にはなると思うが、アールはともかく、エレナは口が軽そうだから心配だなぁ。


「ところで、あの紫竜は何だったの?」

 リラさんがボソボソと紫竜に尋ねている。赤紫色で、俺と戦って逃げた紫竜の事だな。俺も気にはなっている。

 すると、紫竜がこれまたボソボソと他に聞こえないように答える。

「わたくしは、ほとんどの時間お館で働いておりますので、あやつにわたくしの代わりを命じておりました。それに、わたくしは姿を女性に見られるのが恥ずかしかったもので・・・・・・」

 いや。人間姿もそうだが、竜の姿もとんでもなく美しかったぞ。中身はただのむっつりスケベだったが。

「そう・・・・・・。それで、あんなに乱暴だったの」

 リラさんがため息をつく。

 その言葉に紫竜は飛び上がった。

「な?!あやつめ、リラ様に何か乱暴狼藉を働いたのですか?!」

「むっちゃ握り潰してたぜ。エレナの事もな」

 ファーンが言うと、紫竜は頭を抱えてワナワナと震えていた。

「なんと・・・・・・。それであんなに傷ついていらっしゃったのですか。わたくし、てっきり野良の竜に襲われたとばかり思っておりました。わたくし、女性には優しく、丁重にお相手するようにと常々命令していたというのに・・・・・・」

 かなり怒っている。あいつの命運これまでだな。

 それにしても、あいつはやっぱり普通にダメージ受けていたんだな。やっぱりオルテンシアドラゴンを紫竜が作り替えたってところか。

「それは、管理不行き届きだな~。死ぬところだったし、死んでも気にしない感じだったもんな」

 ファーンが追い打ちを掛ける。

 紫竜がブルブル震えてる。



 

 俺たちは2日掛けて、紫翼山を超えてジト村にたどり着いた。

 道中も紫竜は、女性陣に対してヘコヘコと頭を下げながら甲斐甲斐しく世話を焼いていた。

 驚いたのは、夜に休む時には小屋が出現し、のみならず、食事、水分、ベッドなど、何でも出現し、何不自由せずに過ごす事が出来た事である。

 改めて創世竜は何でもありだと実感した。世界を創造したくらいだから、この程度は何でも無いのだろうなぁ。


 そして、説得は上手くいかなかった。



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