冒険の始まり 遺跡の謎 4
白銀の騎士ジーン・ペンダートン。
エレスにあって、この名を知らぬ者はいない行ける伝説である。
「剣聖」、「神殺し」、「鬼切り」、「鷹の目」などなど、百の異名を持ち、幼い頃から60を越える現在に至るまで、様々な伝説を残す騎士である。
吟遊詩人がこぞってその物語を語り、歌う。
子どもたちの憧れであり、大人たちにとってもやはり憧れである。
そのジーンは、狂王騒乱戦争の折には、グラーダ国に帰属しており、グラーダ三世を補佐して世界と戦った。
グラーダ軍全体を指揮する「総長」の階級を得ていたが、今は辞している。
だが、今も請われてグラーダ国を守護している。
そして、ジーンは王城のすぐ近くのペンダートン邸に、200人の私兵を持っていた。
これはグラーダ国ではジーンにだけ許された特権だった。
そのジーンの私兵の中で、最も探索に優れた斥候部隊を「鷹」と呼ぶ。ジーンは、その「鷹」を、王女の行方を追う先遣隊として20騎派遣していた。
先遣隊の10騎が発見したのは、崖から転落し、20メートルほど下の地面で砕け散った王女の馬車と、馬車を引いていた4頭の馬の亡骸であった。だが、先遣隊たちの顔に絶望の色は見られない。
彼らは追跡の専門集団である。他の10騎は、別の痕跡を発見していたので、2つに隊を分けて追跡していたのだ。
本命はここでは無く、恐らくはもう一方の痕跡である。
10騎は崖下を確認するために2人を残し、すぐさまもう1つの痕跡を追っていった隊の後を追う事にした。
後から追う方は、ちゃんと先行者が痕跡を残してくれているので、追跡の速度が早い。すぐに追いつけるだろう。
そして、先遣隊が残した目印を追って、ジーン率いる180騎と、後続としてグラーダ軍の本隊が来る事だろう。
先を行く10騎が向かったのは砂漠の方である。砂漠に入ってしまえば追跡は時間が経つほど困難になる。
風と砂が痕跡を消してしまうからである。全ては時間との勝負である。
8騎の騎馬は、言葉を一切交わす事なく、猛然と砂漠の広がる南に向けて駆け出していった。