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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十四巻 二日間の戦い
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二日間の戦い  処刑海岸の戦い 8

 水中で、メギラは膨大な筋肉を駆使して、白い扉を懸命に押す。

 だが、扉から排出される水の量と勢いで、扉は全く閉まる気配が無い。不壊属性の扉なので、簡単には壊れないが、それだけに、このままではこの城のみならず、魔界が水没してしまいかねない。魔界全土よりも、アール海内の海水の体積の方が、遥かに多い。深い海に沈められていたら、冗談では無く魔界が水没する。


 メギラとしては、そこまで考えていた訳ではないが、非常に面白くない状況となりイライラが募る。

 地下室は、すでに完全に水没していたし、地下通路では、かなりの魔神が溺死している。

 生きているのは、特に高い能力を持った魔神だけである。

 通路の先にいた魔神たちは幸いにも逃げ延びる事が出来たようだが、そこから再びこの地下広間に来る事は無いだろう。


「面白くない!実に面白くないんだよぉ!!!」

 メギラが叫ぶ。

 怒りにまかせて、極大の爆発魔法を扉の先の海中目がけて放った。

 海中で魔法が炸裂して、扉の先の海水が一瞬押しのけられた。

 その隙に、己を矢のように加速させて扉の向こう側に躍り出た。

 他の魔神たちも、僅かにも遅れず、凄まじい勢いで扉に殺到する。

 扉の向こう側の海中では、メギラが四方に爆発魔法を連発して、海水が押し寄せてくるのを防いでいた。

 扉から飛び出た魔神たちも、メギラに加勢して海水を押しのける為の魔法をそれぞれ放つ。


 200人ほどの魔神が扉をくぐり終える。

「忌々しい扉を閉めろ!!」

 メギラの同僚である朱刃八會のグリュード斬将軍が命令すると、部下が扉を閉める。

 同時に大量の海水が押し寄せて、再びその場は海の底となる。

「あああああ~~~!!!イライラするぅ!!こんな事した奴等は皆殺しだぁ!!!」

 メギラが叫ぶ。

 約200の魔神たちが海上を目指して矢のように海中を上昇していく。




 一方、地下が完全に水没したウラノス居城では、海水に満たされた地下入り口の手前で魔神王ウラノスが呆然としていた。

 メギラの暴走を止める為に駆けつけたのだが、必死に地下から逃げてくる多くの魔神兵と、その先では、何人かの魔神の溺死体が、地下の入り口に浮いている惨状である。

 今も、死体を押しのけて、生き残った魔神が地下から上がってくる。

 ウラノスにしてみれば、テラスからここに駆けつけるまでの短い時間の内に何が起こったのか、さっぱり分からない。

「何があった?!」

 手近にいる魔神の胸倉を掴んで詰問してみても、その魔神も何が起こったのか理解していない。突然前方にいた魔神たちが後方にいる魔神たちを押しのけるように走ってきたと思ったら、あっという間に押し寄せる海水に飲み込まれたのだ。

 水流に流されながら、他のひしめく魔神を押しのけ、時には打ち砕いて魔法防御を固めながら必死になって逃げてきたのだ。


「恐らくは闘神王の策略だ」

 答えたのは、水没した地下から上がってきたばかりの魔神王ソロンだった。

「何?何故?」

 ウラノスが呻く。

「知った事か。今回の事も奴は読んでいたのだろう。奴の手のひらの上で踊らされたようで気分が悪い」

 ソロンが不機嫌極まりない様子で唾を吐き捨てる。

「何だと?俺の部下たちは?」

「それも知った事でなはい!俺の部下もだが、何人も向こうに行っちまった。俺は手を引かせてもらう。部下共がどうなろうと知った事ではない!」

 そう言うと、ソロンは生き残った部下を引き連れて、ゾロゾロとウラノス居城を出て行った。


 ウラノス陣営の幹部である朱刃八會で、ここにいるのはナベリウス咬将軍、プルート打将軍、イオヌ削将軍、バルバロッサ刻将軍の四刃のみである。

「馬鹿な・・・・・・。我が軍団の主戦力が、ここで半減するというのか?!」

 ウラノスは呟く。メギラはともかく、グリュードは帰還して貰いたい。だが、闘神王の罠だったとするならば、簡単にはいかないのかも知れない。



◇     ◇



 渦の周囲に大量の泡が出現し、水面がいくつも盛り上がったのを見て、船上のクリューガー将軍が腕を上げる。

 グラーダ国の水軍は、大型で平坦で広い甲板を持つ護衛艦を前面に、後方には機動性に優れた魔戦艦。それと、小型の戦闘艦の三種構成となっている。無論、他にも補給艦や、偵察艦、突撃艦などもある。

 現在は、魔法防御を掛けまくっている護衛艦が最前列に出ていて、その後方に魔法使いが大勢のっている魔戦艦がおり、そこで集団魔法の準備を完了して、クリューガー将軍の合図を待っていた。

 そして、クリューガー将軍の合図によって、一斉に魔法詠唱を完成させる。

 

 集団魔法の種類は主に二つ。

 一つは氷の槍を大量に降らせる『リーベレスト・バイサイズ』

 そして、もう一つは、グラーダ国が海賊退治の戦いで得た戦訓。海戦で最大の効果を発揮した魔法、水流魔法である。

 これまでは、火炎攻撃こそが最も効果があるとされていたが、それよりも水流を操作した方が、戦いが圧倒的意に有利になった。そこから火炎攻撃にしても良いし、乗り込んでも良い。戦いの主導権を握る事が出来るのだ。

 ただし、水流魔法は、その水流操作を作戦と、その時のタイミングに合わせて臨機応変に、克つ全員のイメージを一致させて行わなければならない。

 なので、戦術眼のある魔法指揮官が、将軍と(この場合ロイロイ参謀と)連携を蜜にして、水流を集団魔法を使うメンバーがイメージ出来るようにボードに描いて行わなければならない。


『ル・バイス・エルグレアース!!!』

 

 水流が渦の周辺で加速する。


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