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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  悪魔の鎧 3

 などと考えている余裕はない。落下する俺の体目がけて剣を横凪する構えだ。こいつ俺の動きを見てどんどん戦い方を学習してやがる。だが、これは知らないだろう。


 俺は落下が始まる前に足の裏を天井に付ける。充分に踏み込む事は出来ないが、「圧蹴」もどきだ。

 俺の体が加速する。鎧の反応が遅れる。その間に俺は着地・・・・・・もとい、地面に勢いよく叩きつけられる。

「グガッッッッッッ!!」

 その俺の直上を鎧の大剣がかすめる。俺は必死に転がって横に逃げた。着地時に打った腕と顔が猛烈に痛い。目の前に星が飛びまくっている。

 この回避技、もう二度とやらない!!


 立ち上がるが、ダメージがでかくて尻餅をついてしまう。その体勢で必死に距離を取ろうと後ずさる。



「おや?あの雑種は何をしてるんだい?」

 壁際で楽しそうに俺の戦いを見ていたゼアルが、ファーンの動きに気付く。

 やばい。思ったより早く気付きやがった。俺は焦るが、それよりもゼアルの発言に何故か無性に腹が立った。

「ざ、雑種だと!?」

「ん?どうした?人間でもエルフでもない半端者の雑種如き、どうして気にかける?」

 ゼアルはさも当然の様にファーンを見下して言い放つ。

 ファーンはいい加減だし、戦いでも助けにならないふざけた奴だ。擁護してやる義理もないはずなのに、ゼアルに言われて何故か妙に腹が立った。


 おかげでグラグラ揺れていた視点が定まる。

 ブンブンと頭を振り、フラつきつつも立ち上がる。

 ここからが正念場だ。

「うん?まさか、鎧を調べてるのか?」

 ゼアルがファーンの意図に気付く。

「そうはいかんよ」

 ゼアルが魔法を唱える。呪文の詠唱は聞こえない。当然だ。詠唱が聞こえたらどんな魔法かわかり、対処されてしまう可能性がある。


 魔法の詠唱は「起句」と「歌詞」の効果指定。そして、契約した「神か魔神の名前」。そして最後の「魔法名」の4節となる。

 魔法名を告げる時に魔力を一気に放出するので、自然と魔法名は声を張り上げるが、魔法名を発声したら魔法が発動するので、対抗魔法を使うにしても魔法発動後になり、後手に回ってしまう。それ故に対人戦において魔法使い達は、最初の3節は小声で唱える事が多い。

 まあ、俺は魔法についてさっぱりだから聞こえていても分からないけどな。

 対抗するなら・・・・・・。


 奴の魔法が完成する前に鎧に駆け寄り、滑り込みながら膝間接の裏側を蹴りつける。よろけた鎧に、立ち上がりざまに肩から体当たりをする。

 ああ、切りつけられた方の肩で体当たりをかましてしまった・・・・・・。肩が痛い・・・・・・。

 だが、狙い通りに鎧はファーンと魔法使いとの直線上に入る。


『バリエール!!』


 ゼアルの魔法名が響く。

 確か初級の風魔法だ。圧縮された突風を叩きつける技だ。遠隔打撃の様な魔法だ。

 魔法は鎧に当たると霧散した。


「ちっ!こざかしいマネをするねぇ」

 ゼアルがいらだたしそうな声を上げる。

「鎧には魔法は効かないんだろ?」

 仕返しとばかりに俺は言う。

 しかし、もう同じ手は使えないだろう。ゼアルがどの程度の魔法を使えるのかわからないが、ファーンが手がかりを掴むまで、何とかしないといけない。


 風魔法がメインだとすると、さっきの「バリエール」以外には大まかに切断系の魔法や真空系魔法、竜巻系魔法などがある。初手で初級を使ったと言う事は、そこまで強力な魔法は使えないかも知れない。初級の打撃系と中級の切断系なら剣と防具で対処できる。

 俺はもう一度剣を構え直す。



◇    ◇



 カシムの指示で窓を塞いだ悪魔の鎧の元に駆け寄ったファーンは、これまで同様に、手帳に何か書き込みながらカシムを観察する振りをする。

 そうしながら、鎧の様子を窺う。

 ファーンは、内心、すぐ隣の鎧がいきなり激しく動き出したらどうしようかと思っていたが、鎧はウンともスンとも言わない。

 魔法使いはファーンの事など眼中に無いのか、カシムと鎧の戦いに夢中だ。

 カシムがあえてフロアの中央付近で派手に立ち回りをする事によって、注意を引いているようだ。


 ファーンは鎧の肘関節のわずかな隙間をのぞき込んでみる。

「なんだ、こりゃ?!中身は空洞じゃないか!」

 肘の関節から覗いた限り、中は完全な空洞である。カシムが戦っている鎧の怪力がどうやって出ているのか理解ができない。

 ファーンは急いで他の関節からも中をのぞき込む。だが、どこも中は空っぽに見える。


 いよいよファーンは鎧の正面に回り、兜の面をのぞき込む。

 面には目の穴が開いておらず、面の真ん中に、一つ目のような玉がはまっている。その玉は黒く色を失っているが、カシムの戦っている鎧はボンヤリ青く光っているように見える。

 ファーンが注視したのは兜と鎧の結合部、つまり首の隙間だった。思いっきり鎧の角を掴んでよじ登るように体を持ち上げつつ首の隙間をのぞき込む。

「!!!??」

 ファーンの顔がゆがむ。


 鎧の中には窮屈な姿勢に折りたたまれた男性が閉じ込められていて、ピクリとも動かないが、頬は異様にこけているのが見えた。

 生きてるのか死んでるのかわからないが、生きていたとしても、このままでは長くは保ちそうにない。

 ファーンはある可能性に思い至りゾッとする。

「もしかして、ここにある全部、いや、もしかしたら、下の階にもたんまりある悪魔の鎧全部に人間が入ってんじゃねーのか?!」

 試しにその隣の鎧の中も確認するべく隣の鎧にそろそろっと移動して首の隙間からのぞき込んでみる。

「マジかよ・・・・・・」

 こちらの鎧にも人が閉じ込められていた。こちらは女性でかろうじて意識があり、のぞき込んだファーンと目が合う。

 異様に落ちくぼんだ両目が、恐怖と哀願にゆがむが、声は出せないようだ。

「もうちょっとの辛抱だ。オレたちが必ず助ける。諦めるな」

 ファーンが声をかけると、捕らわれた女性の目から涙がこぼれる。



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