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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第二巻 旅の仲間
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旅の仲間  冒険者登録 1

「なんでまたダメなんだよ!」

 冒険者ギルドの受付でハーフエルフが怒鳴る。

「ファーン!あんた評判悪いんだよ!あんた、パーティー組んだって何の仕事もしないそうじゃ無いか!戦闘になるとさっさと逃げてっちまうってみんな言ってんだよ!そんなじゃ、誰があんたと組みたがるかってんだよ!」

 受付の、筋肉質で大柄の美女が怒鳴り返す。ファーンはその迫力に一瞬腰が引ける。


「で、でもオレは『探究者』だから、戦闘は参加するものじゃ無くって見るものなんだよ!」

 すると、受付の美女が眉間にしわを寄せ、窓口のカウンターからヌッと手を伸ばしてファーンの胸ぐらを掴む。

「ああん?それで通ると思ってるのかい?みんな命がけなんだよ。大体『探究者』ってなにさ?戦闘に参加しないんだったら他にどんな仕事してるって言うんだい?!」

 ファーンは半ば持ち上げられる様になり、息を詰まらせる。

「みんなあんたは何の仕事もしないで遊んでるって言ってんだよ!!」

「そんな事は・・・・・・」

 と言うが、「探究者」としてはそれなりに頑張っていると思うが、パーティーメンバーには何一つ貢献していないという自覚がある。

「『探究者』が何する仕事かあたしゃ知らないけど、荷物持ちでもマッピングでも料理担当でも、あんたでも出来る事があるだろうが!そんな事もしてない奴にパーティー斡旋あっせんするあたしの立場もちったぁ~わかりやがれ!!」

 美女が腕を振るってファーンを離す。ファーンは尻餅をつく。


「いいかい。あんたは仲間に対して出来る事を考えるんだ。『探究者』が戦闘に参加してはいけないってんなら、それを補う自分の役割を見つけて全うする努力をしな!誠意を見せな!冒険者はお互いの信用が無けりゃ、やっていけない仕事なんだ!それを考えてからもういっぺん出直して来な!!」 

 ファーンはワナワナと震える。腹が立つが、間違いなく相手の方が正しい。しかも、最後に「来な」と言う事は、まだ自分を見放した訳では無い事を告げている。


「ち・・・・・・」

「ち?」

 受付の美女の口元がニヤリとゆがむ。

「ちくしょう!お前は俺のかーちゃんかよ!!!」

 ファーンはギルドを飛び出して行った。それを見送ると美女が笑う。

「はっはっはっ。ギルド名物の捨てゼリフ、ありがとうよ!」

 飛び出したファーンと入れ違いになるようにカシムが冒険者ギルドに入ってきた。

「お?いらっしゃい。初めて見る顔だね」

 美女がニヤリと笑うとカシムを迎える。



◇    ◇



 アカデミーを出た俺は、食事にするべく街道沿いの食堂を探す。すぐに見つかったので、そこに入る。

 多少値は張るが、道を中に一本入ったりしたらすぐに迷いそうなので、街道沿いのこの店で食事を済ませた。

 そして、食後すぐに歩いて冒険者ギルドに向かう。


 リア街道をベルーガ大橋の方に向かって歩けば着く。

 馬車の乗り合い所はアカデミーと冒険者ギルド本部の中間にあった。この街での利用率の高い2つの施設なので、乗り合い所をそこに設けていた。

 乗り合い所を通り抜けると、少し先に、これまた大きな、そして立派な巨大建築が目に入る。

 派手なオレンジ色の屋根をした、豪華な作りで、出窓やバルコニーがやたらと多く、絢爛豪華な建物だ。

 これはかつてのカロン国公爵の館だったらしい。狂王騒乱戦争後にグラーダ国がそのまま接収して、冒険者ギルド本部に改修したそうだ。敷地も広く、試験場や様々な職の訓練場もあった。



 俺が入り口に着くと、中から大きな声で「お前は俺のかーちゃんかよ!」と叫ぶ声が聞こえた。

「おお。ギルド名物の捨て台詞。本当に言う奴いるんだな~」

 そんな事に感動しつつ、沢山の冒険者たちが利用している幅の広い階段を上り、冒険者ギルドの建物に入っていく。するとすぐに声をかけられた。

「お?いらっしゃい。初めて見る顔だね」

 見ると、受付のカウンターに肘を乗せて、前屈みになってこっちに笑いかける、筋肉質のたくましい美女がいた。女性にしては背が高く180センチは越えているだろう。そして逞しい体つきは、恐らくドワーフだ。


 男性のドワーフは、身長も150センチ程度と小柄だが、ずんぐりとした逞しい体つきで、若くても豊富な髭を蓄えている。手先が器用で無口で頑固だそうだ。彼らはほとんどが鉱夫や職人で、鍛冶仕事、細工仕事に秀でている。建築技術も高い。

 一方で女性のドワーフは、皆見事なプロポーションと、たくましい体を持っていて背が高い。男性よりも戦闘向きな体をしている為、冒険者になる者も少なくない。堅苦しいのが嫌いな奔放な性格故に、軍人になる者は少ないそうだ。そして、美人が多い事でも有名である。


「ええ。実は冒険者登録をしたくて」

 俺が言うと、その美女はまず腰の剣を見て、それから俺を上から下まで遠慮無く眺める。そして鼻を鳴らして笑う。

「フフン。ま、いいだろう。見た目以上に鍛えてそうだねぇ」

 女性の言葉に俺は曖昧に頷く。ペンダートンの名前はなるべく出したくない。いずれ名乗らなければいけないが、ギリギリまで誤魔化そう。俺は目立つのは嫌いだ。


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