冒険の始まり 旅立ち 3
そうと決まれば、まず装備を調えなければいけない。さっそく鍛冶工房に向かう。
鍛冶工房では、親方のガトー・ゴルゴンゾーラが鎧を直しているところだった。
「やあ、ガトー」
俺が声を掛けるとガトーが顔を上げる。
「やあ、カシム坊ちゃん。どうしたんですか?」
ガトーのごつく小さい体つきは、まるでドワーフのようだが、れっきとした人間で、口ひげは無精ひげ程度だ。
「いや、ちょっと装備を調えたくって。相談に乗ってくれないか?」
「装備って、また考古学者のですかい?」
考古学者として使う道具や、護身用のショートソードなど、ガトーに用意してもらっていた。代わった注文でも受けてくれるので、街で装備を調えるより楽だし、何よりもタダだ。
ちなみに、この前のショートソードも、祖父の配下たちが見つけて回収してもらっていた。あれも気に入っていたのだが、今度は「冒険者」として使用していくのだから、ショートソードでは心許ない。防具も必要になってくる。
「いや、ちょっと冒険者になる事になっちゃったんだよ」
「ええ??冒険者にですかい?」
俺は事の経緯を簡単にガトーに話す。当然ガトーは驚いていたが、思ったほどでは無い。
「驚かないのか?」
「いや、驚いてはいますがね・・・・・・」
ガトーが頭を掻いてこっちを見る。
「何だよ?」
「いや、まあ、いつかはこんな事になるんじゃ無いかと思ってたもんで・・・・・・」
ああ、ガトーもこの家の人間だなぁ~。なんでどいつもこいつも過大評価が過ぎるんだろうか?
「実はそれなりの装備はすでに作ってたりするんですよ」
ガトーが笑って言う。俺は驚きあきれる。だが、せっかく用意しているなら見せてもらおう。
「どこにあるんだい?」
「まあ、いらしてください」
ガトーは大きな倉庫に向かう。
ペンダートン家の武器庫は、かなりの規模で、この一角だけでは収まらない。この倉庫には、ガトーがまだ作り終えていない物や、修理待ちの物、改良予定の物、そして、いろんな種類の素材、材料がたくさん収まっている。
倉庫の中の鎧がいくつも並んでいる所に、真新しいフルプレートがあった。その横にはロングソードが立てかけられている。かなり値が張りそうな逸品だ。
「どうです?」
うむむ。作ってもらったのは有り難いが・・・・・・。
「立派な装備だ。さすがガトーだな」
俺が誉めたが、ガトーはあまり嬉しそうじゃ無い。
「ありがとうございます。・・・・・・でも、さっきの坊ちゃんの話しを聞いた感じじゃぁ、何か違うんだよなぁ~・・・・・・」
おお、さすがガトー。話がわかる。
「そうだなぁ。今回の旅では、防御力はそこまで必要じゃ無い。相手は創世竜だし、そもそも戦うわけじゃ無い」
「はははっ!創世竜相手じゃ、どんな防具も意味ないですぜ」
ガトーが笑う。
「つまり、冒険しやすいように、それなりの防御も大事だけど、それより動きやすさや、ガチャガチャ音がしない感じの防具ですね」
「そう!そんな感じだ!」
「となると、具体的には胸当て、すねと腕の防具ってとこですね。頭はどうします?」
話が早くて助かる。
「正直、冒険者にとってどんな装備が良いかわからない。でも今回は頭の防具はいらないかな?」
「いや、頭は防御しなきゃですから・・・・・・。とりあえず、簡単に脱着できる額当てを持っていったらどうです?」
「なるほど」
「あと、考古学者やるって時に作った革のジャケット。あれを改良して丈夫なジャケットスーツを作ってあるので使ってください。動きを邪魔せず、腹の防御も多少厚くなります。神獣『コダー』の革なので、丈夫で通気性も優れているので、前のより涼しいですよ」
「ああ。それは助かる」
革のジャケットは気に入っていたが、もうボロボロになってしまっていた。血まみれになったし・・・・・・。
「武器はどうします?」
「うん。ロングソードだとやっぱり洞窟とか狭いところだと取り回しがしにくいから、ロングソードとショートソードの中間くらいの剣が欲しいなぁ。あと、この前の奴みたいに投擲出来るようになってると有り難い」
「あんまり剣を投げるのは、鍛冶師にとっては嬉しくないんですがねぇ~」
ガトーに横目で睨まれてしまった。
「ごめん・・・・・・」
「いや、まあいいです。この前もその技で何かすごい事をやらかしたって聞きましたし」
俺が返答に窮していると、ガトーが笑う。
「そんなに投げたいんだったら、投擲ナイフをいくつか用意しましょう。ストックと装備する分も一緒にね」
「ああ、頼む。・・・・・・その、ついでなんだけど、剣の柄に細工してワイヤーを付けて欲しいんだ。投げた後回収できるように・・・・・・」
それを聞くとガトーは大笑いする。
「ワッハッハッハッハ~~!!!本気で投げる気満々じゃないですか!?」
だって・・・・・・俺、弓苦手だし・・・・・・。俺は赤面する。
「まあ、良いでしょう。じゃあ、採寸しますよ」
そう言うと、ガトーは俺の体をあちこち図ったり、手のひらをじっくり見たりした。
「じゃあ、至急作ります。ある物を改良するだけなんで、すぐ出来ます。・・・・・・明日の昼には間に合わせます」
「早いな。助かるよ、ありがとう」
「いえいえ。期待してますよ、カシム坊ちゃん」
ガトーに期待されても無理なものは無理だろう。せっかく用意してもらった装備も、きっと溶かされてお終いなんだよな~。ごめん、ガトー。
その日の夜は、またパーティーだ。俺は、家に帰ってから1日だってゆっくり過ごしていない事に気がついた。




