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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第四巻 黒き暴君の島
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黒き暴君の島  はぐれ少女・純情派 3

 なかなか連携が取れているようだな。安心安心。それにしても、女湯からファーンの声が聞こえると、まだちょっとドキッとする。昨日の今日で慣れる訳が無いが、アイツが女の子のは間違いないようだ。

 そんな事を思ったが、コッコの事は女性陣に任せて俺はひとまず露天風呂に向かう。


 内湯から外に出ると、少し涼しい風が濡れた肌には寒く感じて、急いで湯船を目指す。

 露天風呂は大理石を切り出していて、竜を象った石像の口からドバドバと温泉があふれ出ていた。もう完全にグレンネック風の浴場だ。

 ただ、泉質は良い。白濁した湯ではあるが、昨日泊まった「らくあん」ほど濃い色ではなく、ほんのりと透明で、柔らかい手触りのお湯だ。酸性湯なのだろう。すこしピリピリする。

「ああ~~、良い湯だ~」

 ただし温度が高めだ。ぬる湯好きの俺には、長くは浸かっていられなさそうだ。確か、内湯には熱湯あつゆとぬる湯があったはずだ。


 俺は5分ほど露天風呂に入ってから、内湯に戻る。内湯に戻ると、まだ女湯の方ではコッコを洗っているようだ。

「髪が絡まっちゃってるわね。一度ブラシを入れてから、もう一回洗い直した方がいいわね」

「ううううう」

「コッコちゃん。シャンプーハット使う?」

「・・・・・・使う」

 何だか、ちゃんとがんばって洗ってもらっているようだ。でも、あのボサボサの髪は中々大変だろうな。

 そう思いながらも、俺はのんびり内湯を楽しむ。今度はぬる湯だ。実にちょうど良い。


「すまないな、みんな。俺は、手伝ってやれない分、みんなの代わりに湯船を楽しませてもらうよ」

 勝手な事をボソリとつぶやく。気持ちが良いものだ。鼻歌まで歌い出しそうだ。


「やだ!絶対やだ!!」

 急にコッコの叫び声がして、俺は湯船に沈めていた上体をガバッと起こす。何事だ?!

「でも、髪の先がかなり痛んでいるのよ。少しだから髪を切った方が良いわよ」

「そうだぜ。その方が絶対可愛くなるぜ!」

「やだ!やだやだ!!!」

「あ!逃げた!!」

「ちょっと待って、コッコちゃん」

 おいおい!大丈夫か!?

「ああ!おいおい!そっちは!?」

「ダメよ!!」

 ガラガラ、ガシャーン!と派手な音が女湯から響く。


 俺は思わず、女湯と男湯を仕切っている壁に駈け寄る。

「おい、大丈夫か!?」

 俺が声を掛けた時、壁の上からコッコが降ってきた。男湯と女湯を隔てる壁をよじ登って越えて来たようだ。

「うわ!!?」

 俺はあわててコッコをキャッチする。

「コッコ。大丈夫か?」

 コッコに声を掛けるが、コッコは返事をしない。コッコを抱きかかえて女湯に声を掛ける。

「コッコが男湯に来ちゃったぞ。どうなってるんだよ!?」

 すると壁の向こうからリラさんの返事があった。

「コッコちゃんは大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です。俺がキャッチしました」

「ごめんなさい。髪を切ろうと思ったら暴れちゃって・・・・・・」

「おーい!カシム!コッコを投げ返してくれよー!」

 ファーンの声だ。

「バカ。そんな事出来るわけないだろ!!」

 何で子どもを、物のように放り投げたりするような発想をするんだ、あのバカは。


「ねえ、お兄ちゃん。そっちも他のお客さんいないの?」

 ミルの声だ。

「いないよ。貸し切り状態だ。いたら大変だぞ!!」

 男湯も女湯も、貸し切り状態だから良いようなものの、他に客がいたら大騒ぎだ。

「わーーーい!!」

 ミルの歓声が聞こえたと思ったら、何とミルがピョーンと壁を飛び越えて、男湯の床に舞い降りた。

「きゃ」

「きゃあああああああああっっ!ミル、何してんのよ!!??」

 リラさんの悲鳴が上がる。俺も悲鳴を上げてたんだけど、かき消されてしまった。


「バ、バカ。お前、それはマズいだろ!!」

 全裸で決めポーズをとるミルの腕を掴んで、コッコを抱えたまま俺は、急いで湯船に身を沈めさせる。

 コッコはまだ良い。子どもだから問題ない。

 だがミルは、年齢は成人では無いという意味では子どもだが、13歳。見た目は10歳前後に見えるが、出るところは出始めているのだから、さすがに子どもでは通用しない。

 湯船に沈めたところで、白濁湯だが、今度の宿の湯は半透明だ。薄ら裸身が見えてしまう。見たところでどうという事は無いとは思うが、だからといって見るのはマズいだろう。


「コラ~~~!戻ってきなさい!!」

 リラさんの声だ。

「へっへ~~~ん!ミルはまだ子どもだから良いんだよ~~~!」

 ミルが嬉しそうに言って、俺にしがみついてくる。裸同士でくっつくのはマズイだろ!!

「こら~~!都合の良い時だけ子どもになるなんてずるいわよ~~~!!」

 リラさんの叫び声。

「リラもこっちに来れば良いのに!!」

 ミルがとんでもない事を言う。バカな事を言う。いや、素晴らしい提案とも言える。だがしかし、まさか、そんな事あるのか?いや、無いだろう・・・・・・。

「・・・・・・」

 しばしの沈黙。俺は少しだけ期待して、つばを飲み込んで待った。


「カシム君・・・・・・?」

 リラさんの低い声に、俺の背筋が伸びる。

「は、はい!?」

 思わず声が裏返る。

「ミルをこっちに戻して下さい」

「わ、わかりました!!」

 反射的に返事をする。

「ほ、ほら。リラさん怒ってるぞ。早く女湯に戻れよ」

 俺がミルに言う。俺の膝の上にはコッコが収まっている。ミルは俺の腕にしがみつく。だから、裸でくっつくな!!

「やだよ!一緒が良いよぉ!」

「いや、マズいってば!」

 俺が空いた手でミルを引きはがそうとする。

「やん!」

 ミルが何だか嬉しそうに声を上げる。俺の手が触ったのが、ミルのあるかなしかの胸だったようで、フニャンとした手触りがあった。

「・・・・・・」

 涙が出そうになった。俺の初おっぱいが、こんなちっぱいだとは・・・・・・。

「むう!何か失礼な事考えたでしょ!」

 ミルが頬を膨らませる。だが知った事では無い。


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