黒き暴君の島 はぐれ少女・純情派 3
なかなか連携が取れているようだな。安心安心。それにしても、女湯からファーンの声が聞こえると、まだちょっとドキッとする。昨日の今日で慣れる訳が無いが、アイツが女の子のは間違いないようだ。
そんな事を思ったが、コッコの事は女性陣に任せて俺はひとまず露天風呂に向かう。
内湯から外に出ると、少し涼しい風が濡れた肌には寒く感じて、急いで湯船を目指す。
露天風呂は大理石を切り出していて、竜を象った石像の口からドバドバと温泉があふれ出ていた。もう完全にグレンネック風の浴場だ。
ただ、泉質は良い。白濁した湯ではあるが、昨日泊まった「湯~楽庵」ほど濃い色ではなく、ほんのりと透明で、柔らかい手触りのお湯だ。酸性湯なのだろう。すこしピリピリする。
「ああ~~、良い湯だ~」
ただし温度が高めだ。ぬる湯好きの俺には、長くは浸かっていられなさそうだ。確か、内湯には熱湯とぬる湯があったはずだ。
俺は5分ほど露天風呂に入ってから、内湯に戻る。内湯に戻ると、まだ女湯の方ではコッコを洗っているようだ。
「髪が絡まっちゃってるわね。一度ブラシを入れてから、もう一回洗い直した方がいいわね」
「ううううう」
「コッコちゃん。シャンプーハット使う?」
「・・・・・・使う」
何だか、ちゃんとがんばって洗ってもらっているようだ。でも、あのボサボサの髪は中々大変だろうな。
そう思いながらも、俺はのんびり内湯を楽しむ。今度はぬる湯だ。実にちょうど良い。
「すまないな、みんな。俺は、手伝ってやれない分、みんなの代わりに湯船を楽しませてもらうよ」
勝手な事をボソリとつぶやく。気持ちが良いものだ。鼻歌まで歌い出しそうだ。
「やだ!絶対やだ!!」
急にコッコの叫び声がして、俺は湯船に沈めていた上体をガバッと起こす。何事だ?!
「でも、髪の先がかなり痛んでいるのよ。少しだから髪を切った方が良いわよ」
「そうだぜ。その方が絶対可愛くなるぜ!」
「やだ!やだやだ!!!」
「あ!逃げた!!」
「ちょっと待って、コッコちゃん」
おいおい!大丈夫か!?
「ああ!おいおい!そっちは!?」
「ダメよ!!」
ガラガラ、ガシャーン!と派手な音が女湯から響く。
俺は思わず、女湯と男湯を仕切っている壁に駈け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
俺が声を掛けた時、壁の上からコッコが降ってきた。男湯と女湯を隔てる壁をよじ登って越えて来たようだ。
「うわ!!?」
俺はあわててコッコをキャッチする。
「コッコ。大丈夫か?」
コッコに声を掛けるが、コッコは返事をしない。コッコを抱きかかえて女湯に声を掛ける。
「コッコが男湯に来ちゃったぞ。どうなってるんだよ!?」
すると壁の向こうからリラさんの返事があった。
「コッコちゃんは大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。俺がキャッチしました」
「ごめんなさい。髪を切ろうと思ったら暴れちゃって・・・・・・」
「おーい!カシム!コッコを投げ返してくれよー!」
ファーンの声だ。
「バカ。そんな事出来るわけないだろ!!」
何で子どもを、物のように放り投げたりするような発想をするんだ、あのバカは。
「ねえ、お兄ちゃん。そっちも他のお客さんいないの?」
ミルの声だ。
「いないよ。貸し切り状態だ。いたら大変だぞ!!」
男湯も女湯も、貸し切り状態だから良いようなものの、他に客がいたら大騒ぎだ。
「わーーーい!!」
ミルの歓声が聞こえたと思ったら、何とミルがピョーンと壁を飛び越えて、男湯の床に舞い降りた。
「きゃ」
「きゃあああああああああっっ!ミル、何してんのよ!!??」
リラさんの悲鳴が上がる。俺も悲鳴を上げてたんだけど、かき消されてしまった。
「バ、バカ。お前、それはマズいだろ!!」
全裸で決めポーズをとるミルの腕を掴んで、コッコを抱えたまま俺は、急いで湯船に身を沈めさせる。
コッコはまだ良い。子どもだから問題ない。
だがミルは、年齢は成人では無いという意味では子どもだが、13歳。見た目は10歳前後に見えるが、出るところは出始めているのだから、さすがに子どもでは通用しない。
湯船に沈めたところで、白濁湯だが、今度の宿の湯は半透明だ。薄ら裸身が見えてしまう。見たところでどうという事は無いとは思うが、だからといって見るのはマズいだろう。
「コラ~~~!戻ってきなさい!!」
リラさんの声だ。
「へっへ~~~ん!ミルはまだ子どもだから良いんだよ~~~!」
ミルが嬉しそうに言って、俺にしがみついてくる。裸同士でくっつくのはマズイだろ!!
「こら~~!都合の良い時だけ子どもになるなんてずるいわよ~~~!!」
リラさんの叫び声。
「リラもこっちに来れば良いのに!!」
ミルがとんでもない事を言う。バカな事を言う。いや、素晴らしい提案とも言える。だがしかし、まさか、そんな事あるのか?いや、無いだろう・・・・・・。
「・・・・・・」
しばしの沈黙。俺は少しだけ期待して、つばを飲み込んで待った。
「カシム君・・・・・・?」
リラさんの低い声に、俺の背筋が伸びる。
「は、はい!?」
思わず声が裏返る。
「ミルをこっちに戻して下さい」
「わ、わかりました!!」
反射的に返事をする。
「ほ、ほら。リラさん怒ってるぞ。早く女湯に戻れよ」
俺がミルに言う。俺の膝の上にはコッコが収まっている。ミルは俺の腕にしがみつく。だから、裸でくっつくな!!
「やだよ!一緒が良いよぉ!」
「いや、マズいってば!」
俺が空いた手でミルを引きはがそうとする。
「やん!」
ミルが何だか嬉しそうに声を上げる。俺の手が触ったのが、ミルのあるかなしかの胸だったようで、フニャンとした手触りがあった。
「・・・・・・」
涙が出そうになった。俺の初おっぱいが、こんなちっぱいだとは・・・・・・。
「むう!何か失礼な事考えたでしょ!」
ミルが頬を膨らませる。だが知った事では無い。




