表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第四巻 黒き暴君の島
179/1022

黒き暴君の島  青ランク冒険者 3

「でもさ、オレたちって一応戦闘経験も積んだし、結構な死闘だったよな。オレたち地上人は戦いの経験値がステイタス上昇、レベル上昇につながってくじゃん?」

「戦闘経験は確かにしたけど、私たちって、ほとんどが逃げたり隠れたりばっかりだったわよね」

 リラが思い返しながら苦笑する。

「ああ。それがリーダーの方針だからな」

 ファーンが頷く。

「お兄ちゃんは優しいからね~」

 ミルが嬉しそうに言うが、リラが咳払いをして話しを元に戻す。


「確かに、戦闘経験もしたけど、地上人の私たちはそれで良いかもしれないけど、精霊族のハイエルフはどういう風にステイタスが上がるの?」

 リラの質問にミルが胸を張って答える。

「『勇気』と『愛』と『信じる心』だよ!」

「そっ!!」

 そんな訳無いでしょうと言おうとしたリラだが、ハイエルフの事はほとんどわかっていない。精霊と心を通わせるのに豊かな感受性が必要だという、不老不死の上位種族であるハイエルフだ。そもそものスペックが人間とは桁違いである。それならばもしかして・・・・・・。

「ってパパが言ってたよ!」

「ウソね!」

「ウソだな!」

 リラとファーンが同時に断言した。黄色い派手な服を着た、心の小さな忍者かぶれの、ふざけたハイエルフの顔が思い浮かび、即座に信じるに足る材料が皆無だと確信できた。

「ひっど~~~~い!」

 ミルが抗議するが、2人は取り合わない。


「まあ、それはステイタス鑑定してもらえれば、何かヒントが得られるかも知れないわね」

 リラの言葉にファーンが頷く。

「そうだな。でも、まだ鑑定士は研修旅行中で不在だ。ついで言うと、オレは戦わないのが仕事だから、ああは言ったけど、戦闘経験なんかほとんど積んでないぜ!!」

 何故かそこでファーンが胸を張るが、リラはため息をつくだけでスルーする。「探究者」が何なのか、ファーン以外は実はよく分かっていない。


「取り敢えず、ランクに少しでも見合う様になっている事を願いましょう。とは言っても、その頃には白竜の事も知られてランクアップさせられちゃうかも知れないわね・・・・・・」

 リラが思わずため息をつくと、ミルがクスクスとおかしそうに笑う。

「なぁに?」

「リラって、おっかしいんだ」

「何が?」

 リラは首を傾げる。

「だって、あたしたちって、とっくに白金ランクでも出来ないような依頼をされてるんだよ」

 ミルのあっけらかんとした指摘に「プッ」とファーンが吹き出す。

「ちげ~ね~や!」

 ファーンが笑い出す。

「・・・・・・」

 ぽかんと口を開けたリラだったが、やがて、ファーンにつられるように笑い出す。ミルも一緒に3人で笑い合っている。


 そんな中、カシムはひたすらうつむいて部屋の隅で正座を続けていた。双子の兄たちが思った様に、カシムはとんでもない事をしでかしていたのだ。別の意味で・・・・・・。




「で、ここからが本題だ!」

 ひとしきり笑いが収まると、満を持してファーンが「月視の背嚢」から、大きく膨らんだ巾着袋を、重そうに取り出した。

「それは?」

 リラが巾着袋を指さして尋ねる。

「報奨金だ!!」

「!!??」

 リラの背筋が伸びる。

「ほ、報奨金?でも私たち、依頼を受けたわけじゃ・・・・・・いえ、でもそうね。飛び級でランクが上がるほどの事をした訳だし、ギルドから報奨金が出てもおかしくはないわね・・・・・・」

 リラの頬を汗が伝う。

 ファーンがリラと目を合わせて、リラの準備が出来たのを確認すると発表した。

「なんと、50000ペルナー!!金貨25枚だ!!!!」

「んなっっっ!!!!!!!」

 リラは、その金額に驚愕して叫びそうになったが、飲み込むつばが気管に入り盛大にむせてしまう。

 ミルがその背中をさする中、ファーンがリラのリアクションに満足げな表情を浮かべる。


「どうだい?リラ姉さんよ~。50000ペルナーだぜ?!これだけ有ったら・・・・・・宿、グレードアップして連泊しても良いんじゃね~のか?」

「んぐ・・・・・・」

 むせるのからようやく回復しかけたリラに追い打ちをかける提案に、またしてもリラがむせかけたが、すんでの所で堪えた。


「リラ姉さんよ~。もっと豪華な料理に、混浴じゃ無い露天風呂のある豪華な宿に泊まったところで、4人で1000ペルナー程度だぜ~」

「ぐぐぐぐぐ・・・・・・」

 ファーンがリラの耳元に口を寄せて、地獄の魔物のように囁き掛ける。

「貸し切り風呂って手もあるよな~」

 とたんにリラの顔が真っ赤になり、うな垂れる。

「・・・・・・黒竜との会合が成功したら、お祝いとして宿泊するのもやぶさかでは無いわね・・・・・・」

「やったー!!話せるじゃね~か、リラ!!」

 ファーンが飛び上がって大喜びする。リラが思わずため息をつく。


「でも、そうね。報奨金の扱いは、私が勝手に決めて良い物じゃ無いわね。リーダーに確認すべきかも・・・・・・」

 リラがふと思い至って、部屋の隅で小さくなっているカシムをチラリと見る。つられて、ファーンとミルもカシムに視線を送る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ