表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第四巻 黒き暴君の島
161/1039

黒き暴君の島  大失態 2

 宿は木製、瓦屋根。黒竜島は火山の島だ。地震が時々あるため、木製の家屋が多い。山ばかりなので木々も手に入りやすいし、黒竜島の木はすぐ生える。

 もちろん黒竜のエリア内の木々だ。

 街の活動の為の伐採は黒竜によって許されている。上質の粘土も取れる。これも黒竜のエリア内の土だ。

 全て黒竜に都合が良いように出来ている。


 温泉街の温泉宿は高級な宿屋で、特に造りが良く、太い柱や(はり)を持つアズマ風の宿が多い。

 比較的寒くなる地域だけに、「ショウジ」とか「フスマ」では無く、木の扉やガラスの窓を使っている。

 大陸最南端にあたるこのドランは、夏真っ盛りだというのに涼しく感じる。冬になると雪景色の露天風呂などがおもむきがあるそうだが、今の気候でも充分に温泉は楽しめるはずだ。


 俺たちもファーンに続いて、朱塗りの太い柱で支えられた門をくぐって、宿に入っていく。

 門には「らくあん」と書いてあった。アズマの文字だが俺は読めるし話せる。


 実は俺、グラーダ語、エレス公用語はもちろんだが、アインザーク地方のゲルトマルト語やグレンネック地方のリリア語にアズマのジャポネ語もしゃべれるのだ。他にも数カ国語話せる。

 ペンダートン家の英才教育のおかげだが、今や、ほとんどがエレス公用語で済むので、あまり役に立ってはいないのだから、単なる言語習得癖があるだけかも知れない。


 ただ、考古学の勉強として、古い書物を読む時に役には立つ能力だ。しかも、自分で古い書物を読み解いていく方が学習効果が高かった気がする。その過程で、古代エレス語も多少は読める様になりつつあった。

 やはり、言葉がわかるようになるのは楽しい。なので、今度はハイエルフ語にでも挑戦してみようかなぁ。ちょうどミルもいる事だし、教えてもらうのもいいかもしれない。



 俺たちが宿の受付に向かう頃には、ファーンがすでに交渉を終えていた。

「おーい!部屋開いてたぜ!ただ2人部屋2つになっちまうけど良いよな?隣同士の部屋にしてもらってるぜ」

 大部屋だと8人程度の利用になりがちなので、4人だと部屋が取りにくい場合がある。2人となると、リラさんとミル組、俺とファーン組でちょうど良い。

「上出来だ」

 俺が言う。

「リラがカシムと相部屋するか?」

 ファーンがとんでもない提案をする。

「「!!!???」」

 俺とリラさんが絶句する。


「そ、そんな事ダメに決まってるじゃ無いですか!!」

 リラさんが全力で否定した。

 さすがにかなりヘコむ。涙が出そうになってきた。そこにミルが慰めてくれるが、コイツもとんでもない。

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。ミルが一緒に寝てあげるからさ」

「いけません!危険過ぎます!!」

 リラさんが容赦なさ過ぎる。俺の身が危険なの?ミルの身が危険なの?どっちの意味かで傷つき具合が天と地ほどの差になるんだけど・・・・・・。


「んだよ・・・・・・。気ぃ遣ってやったのによぉ~。じゃあ、俺がカシムと同室って事で良いんだな?!」

 最初からそのつもりなんだよな。

「むう~・・・・・・。仕方ありませんねぇ~」

 リラさんだけでなく、ミルまで不満そうに俺を睨む。何で俺が睨まれるの?

「後で文句言うなよ!!」

 ファーンまで怒り気味に言ってから俺を睨む。

「全部カシムがダメダメなせいなんだからな!!」

 ええええええ~~~!?俺出資者なのに、なんで俺がみんなに怒られる感じなの?理不尽だ!!

 でも、もしかしたら、本当に俺に何か落ち度があったのだろうか?無いよな?


「取り敢えず予約な!15時過ぎには部屋の準備できるらしいから、それまでにやる事済ませちまおう!」

 ファーンが張り切って仕切る。

 俺は今ちょっとメンタルが落ち込んでいるので、奴に仕切らせておいた方がスムーズだ。


「リラとミルは買い出しと、ついでだ、観光してくると良い。オレとカシムはギルドで情報収集だ」

「はい。いつも悪いわね」

「わーい!観光大好き!!」

 リラさんとミルはワクワクしている。女性陣2人は買い物や観光が大好きだ。片や旅して回る吟遊詩人だし、片や子どもだ。いろんな所を見て回る事がそのまま成長の糧になる事だろう。

 一方俺は考古学者だし、ファーンは探究者。どっちも調査とかの方が向いている。


「カシムの旦那・・・・・・今度こそ任せてくださいよ。温泉宿の恩は、しっかり返させてもらいまっせ」

 ファーンが俺と肩を組み、悪そうな顔でひそひそ耳打ちする。

「お?・・・・・・おお。おおおおお!」

 何の事かと思ったが、そうか、ファーンよ。ようやく俺の気持ちがわかってくれたか!それでこそ相棒!心の友よ!!

「「フヒヒヒヒヒ」」

 二人で不気味な笑いを浮かべていると、リラさんがジロリとこちらを見た。

「何か嫌な気配を感じたんですが・・・・・・?」

 するどい!?

「な、何でも無いですよ!行ってきます!!!」

 俺はファーンの腕を引いて急いで宿を飛び出して行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ