白竜の棲む山 創世竜と地獄と聖魔戦争と 4
『黒竜になさい』
「ええええええ!!!??」
俺は、いや俺だけでは無く仲間たちも盛大に叫んでいた。
「でも・・・・・・あの、黒竜って結構凶暴で『暴君』って呼ばれてる創世竜なんだけど・・・・・・」
俺の言葉に白竜が笑う。
『その通りです。黒竜は粗暴で強欲な竜です。人間の作る宝物、貴金属が大好きな困った竜です。その為に人間の国を襲ったり、自分の島に金鉱の町を作って税を課しています。また、自分の宝物を管理するのが趣味で、金貨一枚ですら把握していて、無くなると怒り出す短気な性格です。そのくせズボラで、宝物は一見散らばり放題という有様です』
うわあ・・・・・・。困った奴だ。
散らかし放題の部屋でも「俺は何処に何があるかわかってるんだから、1ミリも俺の物に触るな!」とか言う奴を俺は知っている。あまりにグッチャグチャな部屋なので、嘘だろうと思って紙くずにしか見えない物を数センチずらしたら、本当にバレて文句を言われた。あんな感じか・・・・・・。
「それで、なんで黒竜なんだ?俺としては赤竜の次に避けるべき竜だと思っていたんだけど・・・・・・」
すると白竜が憤慨した様子で俺を見る。
『お前はジーンの孫であろう!私と黒竜はあやつの友です』
「あ!そう言えばそうだ!」
俺の祖父が「竜の眷属」と呼ばれる所以は、白竜、黒竜と会って会話をして生きて帰った事によるものだ。
でも、今の話しだと、生きて帰っただけでは無く、創世竜に「友」と呼ばれるほどだったとは・・・・・・。またしても尾ひれの方が小さい伝説だったか。
『とは言え、私もそれだけが理由でお前に目をかけていたわけではありません、カシム』
「え?それってどういう・・・・・・」
『それこそが、「原初の誓約」でもあるのですが、それを除いても、お前がお前だからです。これはお前の仲間たちは分かっているようです。お前は言わねば分からぬようなので、代弁してあげました』
白竜が俺にそう言う。だが、言われても俺にはさっぱりわからない。
するとファーンが馬鹿にしたように肩をすくめる。
「白竜さんよぉ。カシムは時々バカだから・・・・・・っても本当は常時バカだから、言ってもわかんないんだよ」
ファーンの
言葉を受けて、白竜が小さくため息をついた。
『・・・・・・そのようですね』
そう言って小さく笑う。ファーンや仲間たちが俺をダシに白竜と笑い合ってる。何だこれ?
だが、わからないなりに俺も愉快になってきて笑ってしまう。見ると、謎の男も笑いをかみ殺しているようだ。




