白竜の棲む山 黒魔導師 6
リラは愕然とする。そんな時からつけられていたとは・・・・・・。「気付かなかった・・・・・・。」
ファーンがつぶやくと、ランダがため息を付く。
「ハーフエルフには気付かれまいよ。だが、このハイエルフにはうんざりだ」
ランダがミルをみてうんざりした表情をする。
「俺の尾行にあっさり気付いただけでなく、しょっちゅう俺の所に来てペチャクチャとどうでも良い事を話す・・・・・・」
ランダは「チッ」と舌打ちする。
リラとファーンがミルを凄い速さで見る。
「お前言えよな!」
「あなた何してるの!?」
同時に怒鳴る。ところがミルは首をかしげる。
「ええ?だって敵じゃないし、内緒にしててってお願いされたんだもん」
リラとファーンが頭を抱える。道理でミルがしょっちゅういなくなっていた訳かと悟る。
しかし、お願いされたからって内緒にはしないで欲しい。素直にも程がある。
そんなやりとりを無視してランダが言う。
「そんな訳で、やむを得ないからカシムを助けに行くぞ」
ランダはこれ以上の会話を面倒とばかりに動き出す。
ランダは周囲を見回し、岩壁の血を調べる。リラたちは大人しく場所を空ける。
「もう、あなたって子は・・・・・・」
リラがミルの頭をなでる。
「ごめんなさい。でも、あの人悪い人じゃないよ」
ミルが言うと、ファーンが口をへの字に結んでため息を付く。
「まあ、そのようだな。気にくわないけどな」
「そんな事ないよ。すっごく優しい目であたしのこと見るもん」
さっきの様子では、とても想像が付かない事をミルが言う。
「うそだろ?」
ファーンは懐疑的な目で、地面や壁を調べているランダを見る。
「後ね、お兄ちゃんの事を話す時もね、いつもは優しい顔するんだよ」
「・・・・・・」
ファーンとリラは顔を見合わせて、互いに肩をすくめる。
ランダと名乗る男の素性は知れないが、確かに敵では無い様だし、実力者の様なので、協力して貰えるなら有り難いのは間違いない。
「よし、信用するか!」
「そうね」
ファーンとリラはそう決めた。
少しすると、ランダが立ち上がって話し出す。
「ここで熊が2頭争っている。小熊もいたようだから母熊と雄熊だろう。この血は恐らく雄熊の血だ。3頭はこのまま右の道に行っている。だが、おかしな事にカシムの痕跡がここで消えている」
ランダが分かれ道の真ん中の地面を指さす。
「周囲の地面にも壁にも、これに続く足跡が見当たらない」
ランダは首を振って沈黙する。判断はパーティーメンバーに委ねるつもりらしい。
「よし。じゃあ、やっぱり右の道を進もう。ランダさんよ。それでいいか?」
ファーンが決断すると、ランダも無言で頷く。
そして、ミル、リラ、ファーン、ランダの順で右の道を進み出した。




