白竜の棲む山 ギルドの司書様 5
「あと、白竜山の内側は暖かいらしいですよ。中心に行くほど温度が上がっていき、中心部は暑いぐらいらしいので、気温で大体の位置を把握できます。そして、言うまでも無いですが、白竜様に洞窟内で遭遇したら、もう全てを諦めてください。遭遇さえしなければ洞窟内で好きにしてもお許しいただけているようですよ」
ティンピーナさんが説明を終了する。
「へ~~。するってえと、洞窟に入っただけで白竜にはバレてるって事なのか?」
ファーンが尋ねる。
「いえ、正確にはエリア内に入った時点で白竜様にはわかるようですよ」
「そりゃすごいな」
ファーンが感心する。するとティンピーナさんが上腕二頭筋を主張しながら微笑む。
「私の情報はお役に立てましたでしょうか?」
「おう!立った立った!サンキューな!」
「いえいえ、これがお仕事ですから」
ティンピーナさんが俺たちに握手を求める。ファーンも俺も握手をする。
「あ、そうそう」
握手後にティンピーナさんが情報を付け足す。
「カルピエッタの村に行かれますなら、急ぐ事をお勧めします。明明後日の5月1日は年に一度の白竜祭を行いますので、是非お祭りをお楽しみください」
ここからカルピエッタまでは1日、2日程度の旅程だから、明日出発しても4月33日には到着できる計算になるな。
せっかくなので、その白竜祭を楽しんでから白竜山に向かうのも良いだろう。
「良い情報ありがとな!」
ファーンが答える。すると、ティンピーナさんは後ろを向いて広背筋を強調するポーズを取る。
「いいえ。またのご指名をお待ちしています!」
ファーンが嬉しそうに背中の筋肉をつついて笑う。
司書の人選には賛否あれ、その辺りは心を無にして俺たちは面談室を出る。
すると、前から本を数冊抱えた女性が第1面談室に入っていった。その女性は、豊満な胸元も露わに大きく開いた服に、短く、かつスリットが腰まで入った服を着ていて、クルクルの茶色い巻き毛に、厚く潤った唇を尽きだしていて、潤った大きな瞳は半眼で艶やか。
色気たっぷりの美人司書様だった。
「!!??」
瞬時に俺は涙目になる。
「おま!あれ!あれぇ!見たか?!お前ぇ!」
俺がファーンに怒鳴る。するとファーンが盛大にしかめっ面になる。
「おいおい、カシム。お前は時々バカだなぁ。図書館では静かにするもんだろうが」
すごく呆れた顔されたが、どうにも俺の感情は収まらない。仕方が無いので小声で怒鳴りながらファーンに詰め寄る。
「お前!なんであーゆー人を指名しなかったんだよ!なんで男の司書とか指名してんだよ!!バカなのか、お前は?!」
俺が文句を言うが、ファーンはしかめた表情のままで俺を非難がましく見ている。
「はあ?何だよ。ティンピーナさんの情報は役に立ったろうが?」
そう言われるとグッと言葉に詰まる。
「・・・・・・そりゃあ、役に立ったさ!でも、でもな!俺は司書様に会うのを楽しみにしていたんだよ!ギルドの花形に!!」
それを聞くと、ファーンがシュンとする。
「ああ。そういう事か。・・・・・・それは悪かったよ。謝るよ。オレの配慮が足りなかった」
ん?急に素直に謝った。
そう素直に言われると怒りが冷めていく。まあ、殴るけどな。
「カシムがスケベーさんだったのを忘れていた。さっきの女の司書様みたいな、おっぱい『ドーーン!』なエロっぽい人が良かったんだよな。失敗したよ。これはリラとミルにも報告して、情報共有しておくよ。もう誰もこんな失敗をして、カシムを失望させないようにな・・・・・・」
ええ?!ちょっと、待って!!
「いや・・・・・・。ファーンさん?ちょっと待ってください」
「いや、悪かったと思ってるからさ。相棒としてパーティー全員が困らないように気を回しておいてやるよ」
ファーンがニヤニヤ笑ってる。
「いや、違うんだよ。ファーンさん。俺が言いたかったのはそうじゃなくってだね。いや、俺もさ、言い過ぎたし謝るよ」
「いや、良いんだよ。こっちが悪かったってば」
「いや、俺が悪かったんですよ、ファーンさん」
「ああ、何か甘い物が食べたくなったなぁ」
「ああ。俺もです。どうでしょうか、その辺の店で食べましょう。もちろん俺のおごりです。おごらせて下さい!」
くっそう!ファーンの奴め。
マジでなんなのコイツ?女の人とも普通に話したり接する事が出来るからって、そりゃ無いでしょうが・・・・・・。
ハーフエルフで、ちょっと顔が良いからってさぁ!さぞかしお前はモテるんでしょうねぇ~。
せめて俺は、ファーンを頭の中で、ひがみたっぷりに罵倒することしか出来なかった。