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エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第三巻 白竜の棲む山
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白竜の棲む山  ギルドの司書様 1

 このセンネの町は、田舎の町とはいえ、冒険者ギルドの支部があるくらいなので、そこそこの規模がある。

 町には冒険者の数もチラホラと見られる。武器防具の店や薬屋、魔法屋もある。


 魔法屋というのは、魔法契約のアドバイスや、魔法の情報を売ったりしている。また、魔法使いに必要な装備も取り扱っているところもある。

 普段は冒険者相手以外の仕事をしていて、魔法の力が必要な人が、一定の賃金で魔法を使ってもらえる。地域限定便利屋である。


いろんな店や施設があるが、やはり冒険者ギルドの支部は大きな建物だ。木造土壁、瓦屋根の家が多いカナフカ国で、石造りの3階建ての大きな建物が人目を引く。


 ギルドに行っても、まだステイタス鑑定は出来ない。

 鑑定士の資格更新研修はその国の王都レベルの大都市で行われる為、地方のギルドでは往復期間を含めて3月、4月、5月の3ヶ月は基本的に鑑定は受けられない。

 ただ、それでも鑑定士は儲かるので、研修期間を旅行ととらえて遊山して帰ってくる鑑定士も多い。



「こんちゃーす!」

 ファーンがギルドの入り口をくぐりながら挨拶する。俺はフードを被り黙っている。隻眼なんて珍しくはないだろうけど、一応目立たなくして、だんまりを決め込む。

「あいよ!何の用だ?」

 受付は例に漏れず体格のいい元冒険者風の男だ。頭は禿げていて、年期を感じさせる髭の男だった。

「いや~。ちょっと司書さんに相談したいんだよ。空いてる?」

 そう言いながらファーンは冒険者証を提示する。受付の男は冒険者証をチラリと見ただけで納得する。思ったよりもチェックが薄い。俺が冒険者証出しても問題なかったかも知れない。


 受付の男は、司書の空き状況を確認する。そして、ニカリと笑う。

「あんたらタイミングが良いな。今ならウチの司書全員空いてるぜ。よりどりみどりだ!」

「うひょ!?全員?何人いるんだよ、おっさん」

 おっさん呼ばわりは悪いだろうが!と、俺が心配したが、受付の男はまるで気にする風でもなく、カウンター越しに身を寄せてきて、司書のプロフィール表を出す。

 確か念写魔法で顔も分かるんだよな。その念写はバストアップの念写らしい。


「うひょー!割と小さいギルドのくせに、6人も司書がいるのかよ!儲かってんなぁー」

「だろ?!この辺だとここしかギルド支部がねーから、司書様も6人も(はべ)らせてるんだぜ!」

 俺も見てみたい。どんな司書様がいるんだろうか?はっきり言ってワクワクが止まらない。噂に聞く美女の司書様だ。

 情報も大事だが、俺にとっては司書様と会う事もとても重要な任務なのだ。大都市アメルで果たすはずだった俺の念願が、ここで果たせる。


 俺も念写が見たいが、ファーンと受付の男とで盛り上がってて見る事が出来ない。

 ここで、カウンターに身を割り込ませてのぞき見たりしたら「スケベな男」としてリラさんに報告されてしまうから、グッと我慢だ。

 まあ、ファーンもその辺は上手くやってくれるはずだ。俺は俺の相棒を信じる。


「あ、そうそう。オレたち白竜山に用があるんだけど、その辺りに特に詳しい奴っている?」

 おお。ちゃんと仕事してるじゃないか。 

「ああ。それならみんな大丈夫だ。白竜山に用がある奴は大抵ここに寄るからな」

「ええ?そんなに白竜山に冒険者たち行ってるのか?」

 俺も驚く。白竜山なんて、創世竜がいるわけで、滅多に人も近寄らないのかと思った。

「いや、山の中まで入りゃしないよ。だけど、創世竜の棲息エリアは独自の生態系が出来ていて、外界とは全く違う環境なんだ。それだけに希少な素材が取れたりするんで、冒険者たちへの依頼も多いのさ」

 そう言って、受付の男が壁を指さす。

 見れば確かに「白竜山の~」という素材収集依頼書が多く貼られていた。


「なるほどねー。じゃあさ、創世竜についても詳しい奴は?」

 ファーンがまたしても良い質問をする。すると、受付の男は少し眉をしかめた。

「いや・・・・・・。まあ、みんな大体は詳しいが。詮索するわけじゃないけど、どうかしたのか?」

 冒険者の事情に関して詮索しないのは受付としてもマナーだ。事情はそれぞれにある。言いたくない、言えない事情なんてザラだ。

「いや、好奇心だよ。こえーじゃん、知らないでうっかり遭遇しちゃったら」

 すると受付も安堵のため息をつく。

「そっか。なら良かった。大きな声じゃ言えねーが、大体年に1~2組のパーティーが、白竜に会うとか、挑むとかバカな事言って白竜山に向かうが、そんな連中は誰1人として帰っちゃ来ない」

「うへぇ。そいつらバカだね~」

 おお、良く言う、良く言う。俺らもそのバカだってのに、そんな事はおくびにも出さない。

 まあ、ファーンは口が達者だから任せておいて安心だ。俺だったら言葉に詰まってぼろを出すし、きっと正直に話してしまっていただろう。コイツを連れてきて正解だった。


「まあ、それなら、3人に絞った方が良いな。後はお前さんの好み次第だ」

「おお!それでも3人も候補がいるのか!贅沢~~~!」

 嬉しそうだな。俺も嬉しいぞ!ファーンは念写を見ながら吟味すると、1枚の念写を指さして言う。

「オレ、このティンピーナさんが良いな!!」

 ファーンが指さした念写を見て、受付の男が笑う。

「おお!お前さんも好きだねぇ!結構人気だぜ、その司書様はよ!」

 おおおお!これは期待値大だ!!でかした、相棒よ!!

 


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