表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレス冒険譚~竜騎士物語~  作者: 三木 カイタ
第十七巻 黄金の髪の魔王
1000/1039

黄金の髪の魔王  連鎖 1

 王城を後にした俺が帰宅すると、すでにパーティーは始まっていた。

「遅いぞカシム!主役が遅れてはいけないな」

 キースが酒を片手に握手を求めながら出迎えてくれた。

 俺が握手を交わしていると、オグマもやって来て、俺の肩に腕を回す。

「まあ、今回はリラさんが主役と言っても過言ではないかもしれないがな!」

 すでに酒が入っている。そしていつもスキンシップが暑い。

「ああ。ちょっと着替えて風呂入ってから来るよ」

 そう言うと、盛り上がっている食堂の声を後ろに聞きながら自室に向かった。


 風呂には少しのんびり入った。

 結局休み無く動き回っていたし、気疲れもある。

 風呂に入っていろんな事を考える。


 これは休暇じゃ無い。

 明日も王城に行く事になっているし、遠からず祝宴会をまた開く事になるだろう。

 それまでの間に出来る事をしなければならない。

 まずは祖父に修行を付けてもらう事。

 少なくとも「無我」を見抜く術を身に付ける必要がある。

 「圧蹴」の使い方、「月」シリーズ、闘気の技など今更ながら覚えたい技や技術が山ほどある。

 時間はかけられないが、とにかく修行だ。


 それから、アールの事もある。

 養子に迎えて貰う話しで取り敢えず動いてもらい、アメルに連れて行って洗脳を解く方法を見つける事。その後のケアとかもあるな。

 別行動出来るなら、アールにはアメルに居て貰った方が良さそうだが・・・・・・。

 ファーンもアメルで歌う旅団と会う約束になっていたな。あいつ、ついに「探究者」から「マスター」になるんだろ?

 それと、エルフの大森林にも行く必要があるよな。

 リラさんのためにも獣人国のエレッサの街に立ち寄ってあげたい。

 それらが終わってから、ようやく竜騎士探索行の再開だ。


 考えただけで疲れてくる。

 俺は深いため息と共に、湯船に頭まで浸かった。




 着替えて食道に向かうと、もう使用人のほとんどは退勤のため宴会場から帰っていた。

 今回もベアトリスとリアは執事長のバルトと共に残っている。

 後はメイドが2人いるな。


 ん?1人見覚えがあるメイドがいるぞ?いや、ペンダートン家の使用人だから見覚えあって当然だが、そうじゃない。

「あ、あの・・・・・・。メアリさん?」

 俺が尋ねると、その若いメイドは頬を赤らめて頷く。

「はい、メアリです、若様。覚えていて下さったんですね?」

「おいおい、カシム。その子は新入りだぞ?!知り合いだったのか?」

 オグマが尋ねてくると、バルトが咳払いして説明する。

「メアリはペンダートン領でのメイドの研修を、短期間で非常に優秀な成績で終えました。それで、本人の希望とカシム様からの手紙によって、ペンダートン邸のメイドとして働く事になりました」

 ええ?本当にペンダートン家に来たんだ。

「はい!わたくし、ペンダートン領では、伝説の先輩ヨーメイ様から直接教えていただけたので、大変早く仕事を覚える事が出来たのでございます」

 俺は腰が抜けそうになった。ヨーメイが伝説?!それってアクシスの事だよな!?何が何やらさっぱりだ。

「そ、それは良かったですね、メアリさん」

 取り敢えずそう伝えると、メアリさんは優雅にお辞儀をした。

 その辺りで、仲間からの視線が冷たくも鋭い。

「お兄ちゃん、その人知り合いだったの?!」

 ミルが真っ先に噛みついてきた。

「ああ。ギルド戦争で・・・・・・」

 俺は簡単に説明した。


 メアリ・アン・クリュートは、北バルタのクリュート伯爵のご令嬢だ。

 だが、聖バルタ共和国を僭称するヨールド自称大統領に捉えられ、凄まじい暴行を受けていたところを俺が救い出した。

 そして、冒険者ギルドに身元を預けた際に、家族も無くし、領地も破壊されたメアリさんのために、「何かあったらペンダートン家を頼るといい」と手紙を渡したのだ。

 その際に、ギリギリで初キス出来そうだった事は言わない。


「カシムの冒険譚は、本当に面白いな」 

 キースが嬉しそうに言って、何故かオグマと杯を打ち合って飲み干す。

「油断も隙も無い!メアリさん!お兄ちゃんはミルのだからね!!」

 そう言うと、素早くキスしてこようとするので、頭を鷲掴みにして阻止する。

「そういう事するからお子様なんだよ」

 俺が言うと、ミルはメアリさんに「グルルルル」と威嚇する。

 だが、そんなミルも、俺はとっても大好きだ。こんなミルでいて欲しいという願いがある。できれば俺と一緒に。

 まあ、今は言わないけどな。

「お兄ちゃんはお子様が好きだから良いんだよ!」

 ミルがブツブツ文句を言う。

 ・・・・・・そうじゃ無いぞ。やはり胸の大きい女性に憧れる気持ちは強い。それが男というものだ。

 俺はチラリとランダを見るが、ランダはそう言う事を気にしなさそうだ。

 次にキースとオグマを見る。


 キースは女の人にモテて、いろんな人と食事に行ったりしているみたいだけど、実際に誰かと付き合ったという話しは聞かない。どれも「社交辞令さ」と笑っていた。

 オグマはいつも部下や男の友人と騒いでいるイメージだ。

 食事をしながらその辺りを聞いてみる事にした。



「兄さん達は、結婚とかしないの?」

 俺の言葉に、2人は目を丸くして互いに視線を交わす。

 それから、呆れたような顔をして言う。

「あのな、カシム。次期当主であるお前が結婚もしていないのに、なんで俺たちが結婚出来るんだよ?!」

 は?

「お前が結婚してから、ゆっくりするさ」

 オグマとキースの言葉に、父が無言で頷く。


 は?バカじゃ無いのか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ