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第24話 アニメはいつか終わっちゃう

高校に入学して、ラミ丘に出会って夢中になってからのこの数か月間は本当にあっという間だった。


「綾香、おっはよう!」


 登校してきて、教室で先に来ていたで綾香に会った。


「今月号のラミ丘最新話読んだ? もうロシウスの泣くシーンが凄く萌えて……」


 音乃が話題に出すのはやはりラミ丘についてだ。学校でもこの作品について友人と語るのは楽しい。今日も登校直後からいつも通りのノリで語り合った。


「これからアニメもどうなるか楽しみ!」


 楽しそうに語る音乃に、綾香はこう言った。


「でも、アニメはもうすぐ終わっちゃうんだよね」


 綾香はこれから来るべきことを言った。


 音乃はその発言で硬直した。


「あ……」


近年の深夜アニメの放送時期は大抵季節ごとに約3カ月を節目とした1クール(13話)か2クール(26話前後)で終了するものが多い。ラミレスの丘はすでに放送開始からちょうどワンシーズン経過している為に、1クールだとすればそろそろ放送終了時期が近い。


「そう……だった」


音乃は考えたくなくて避けていた現実に当たった。


「じゃあ今のお祭り騒ぎも終わっちゃうのかな……?」


 アニメが放送中だからこそ、毎週のようにリアルタイムで実況を楽しみ、ツイッターやピクシブで次々と投稿されていく新しいラミ丘の二次創作を楽しみ、ラミスト好きのフォロワーの語りを楽しむ習慣になっていた。


 そしてそういったこともあり、音乃自身も二次創作を始めるほどに。


それはアニメが終わってしまえばもうこの生活が失われてしまうのではないかと。


アニメ放送が終了してしまえばネット上で今盛り上がっているラミ丘ファンもアニメが終わったことで離れていき、そのお祭り状態も鎮圧し、ラミ丘熱が冷めてしまう心配もある。


「そんなの嫌だなあ……」


 来るべき現実に、音乃は急にびくびくさせられる。


 音乃にとってはラミ丘とは、アニメから入り、原作を読んだことでアニメに夢中になったことでやはりアニメの存在は大きかった。


だからこそ、アニメがあったおかげで夢中になれた。  


それが終わるとは、いつかは来るべきものなのである。


「アニメ、好きなんだけどなあ」


 そのくらい、音乃にとっては今のラミ丘生活は楽しかった。


 しかし、そのメディア展開である一つのコンテンツが終了しようというのだ。


なんとか励まさねば、と綾香はこう言った。


「アニメが終わっても、原作が続くみたいだから、これからはそっちを楽しめばいいんじゃないの? ほら、これからもラミ丘の話の続きが読めるってことだし。原作は終わってないって」


なんとか励まさねば、と綾香はそう言った。


終わるのはあくまでもアニメであって、ラミ丘そのものが終わるわけではないと。


「そ、そうだよね……」


 綾香の励ましに、音乃はなんとか自分を落ち着かせようとする。


 しかし、今夢中になっているもののメディア展開が終わるのは寂しい。そのことで、少し気分が落ち込んでいた。アニメが終わるなんてわかっていたはずなのに、と。


 時間が経ち、登校してきた生徒が次々に教室に入ってきて、野々花も来た。


 音乃は早速野々花にこう言った。


「野々花。ラミ丘、終わっちゃうんだよね」


 少しでもこの話題を共有したいと思い、

野々花に話を振る。

「そんなの最初からわかりきっていたことじゃない。最近のアニメは1クールで三カ月か2クールで終わるものよ。ラミ丘も多分そうだろうと私は最初からわかっていたもの」

 野々花はすでに最初からそのことをわかっていたのだ。

「ラミ丘のアニメが終わるってだけで原作はまだ続くのよ。本当に終わるわけじゃないじゃないわ」

 やはり野々花も綾香と同じことを言う。


 あくまでも終わるのはアニメであって、ラミ丘のコンテンツそのものが終わるわけではないと。


「でも、毎週楽しみにしてたアニメが終わるって寂しくない? もう映像で見られないんだよ? 喋るアミエルもロシウスも新しい話で見れなくなるし……」


 アニメ放送が終わるということは、以降アニメ最新話は放送されない。


「こんなことで落ち込んでどうするのよ。アニメが終わったところで、私達がラミ丘を好きなのは変わらないんだから。愛があるのが大事よ」


 野々花の言うそれに、音乃はそう思うことにした。

「そう…‥だよね」




 家に帰り、音乃は自室でラミ丘アニメの録画を再生していた。


「ラミ丘……アニメが終わっちゃう……」


 ラミ丘のアニメ映像の最新話が見れる回数は残り少ないのだ。これからは録画だけを楽しむことになる。

そのくらいにラミ丘のアニメが楽しみだった。


ようやく手に入れた幸せな生活が終わってしまうのではないかとそれが恐ろしい。


 それはどうにもならないことだとわかっていたはずなのに。


「原作は続くし、これからは漫画の方を楽しめばいいんだ……。毎週最新話が読めるし、まだラミ丘自体は終わらないってことだし、コミックスでも楽しめるし、でも……」


原作は続くとはいえ、やはりアニメだからこそ、毎週映像で動き、動き声を発するキャラを見て、なおかつそのアニメの実況でなどSNS上で楽しむ祭り状態が楽しめた。


やはりアニメ放送中というものはファンは盛り上がるのだ。


アニメとは漫画以上に盛り上がるメディアなのだ。


漫画は金を払い、雑誌やコミックスを購入せねば読むことができない。もちろん今はアプリで最新話無料といったツールもあるが、それでもアニメというのは放送されることで漫画以上に注目を浴び、話題になりやすいことから新規ファンを続々と取り込むことができるメディアだ。


話題になっているアニメを視聴したことで新規ファンが原作コミックスを読むことで、さらにファンを増やす。


そしてアニメが放送中の作品というものは次々と新しい話が放送され、グッズ展開も多く、原作を知らないファンもその祭りに乗るために熱くなるのであり、やはりSNSなどネット上が盛り上がるのだ。


「やっぱり、アニメが終わっちゃうのは寂いなあ」


 アニメ雑誌やアニメ公式サイトといったアニメコンテンツはラミ丘本編が放送終了すれば今後はもう新しい情報も少なくなっていくだろう。


 もしかすれば、今盛況になっている二次創作界隈も落ち着いてしまうのでは、という心配もある。アニメ放送が終わったことでアニメから入った、ファンが次々と離れていってしまうのではないかと。


 そうすればファン人口が減ったことにより、二次創作の書き手も読み手も減っていき、せっかく楽しくなってきた音乃の二次創作ももうやる気がなくなってしまうのではと。


「でも、仕方ないよ……いつかは終わるものだよね。漫画が続くなら、まだラミ丘好きな人達はいっぱいいるんだし、まだこういうのも終わらないかもしれないし」


 音乃は自分にそう言い聞かせた。


「きっと、大丈夫だよ。私は私で新しい小説を書けばいい。愛は消えないんだから」

そう思うことにして。



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