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第22話 みんなに読んでもらおう

小冊子が配られた翌日、綾香がこう言った。


「音乃の小説、読んだけど面白かった。最後とか感動的で、まさに読んでて心奪われた」


 音乃の作品を綾香は評価してくれた。


「ありがとう。あれ、頑張って書いたんだ。もっとみんなに読んでほしいな」


 小冊子が配られても、やはりクラスメイト全員が読んだわけではないだろう。


 活字媒体を読めと言われても、なかなか読まれないものである。そこは苦難だ。


「みんなにも読んでもらいたいな。音乃の小説、あたしも何か宣伝できることとかないかな。なんか、もっとこう、良さを広げるっていうか、感動を伝えあうっていうか」


「なかなかそうはうまくいかないね。やっぱ小説って読むの大変だし」


「でも、私の放送部の部長もあれは面白かったって褒めてたよ」


 ふと、音乃にはそれで思いついたことがあった。綾香が放送部なのを思い出した。


「そうだ……綾香、力を貸して! みんなにこれを読んでもらえる方法あるかも!」


 音乃はあることを綾香に頼んだ。これはもしかしてチャンスかもしれないと。


ひそひそと綾香の耳に伝える

「それ面白そう! いいんじゃないかなその企画! 部長もああ言ってたし、部長にかけあってみる! きっとそれ、うまいくよ! みんなに受けるよ!」

綾香はノリノリでそれに協力してくれることになった




 二日後。それが実行される日が来た。


「ハローエブリバデ! みなさんランチタイムはいかがお過ごしですか? お昼の放送をお届けします」


 昼休みに放送部のトークが全校放送で流れる。この学校は昼休みに放送部が流す時間がある。放送部に寄せられた学校内の噂や話題、生徒からのリクエスト曲を流したり、もしくはゲストである生徒を迎え、対談をするといった内容だ。


 そして、今回のゲストはこの生徒達だった。


「今回は校内文芸小説コンクール最優秀賞を獲得した『僕と君のアイは昇る』を手掛けられたお二人に来ていただきました」

「どうもみなさんこんにちは」


 校内放送に音乃の声が響く。


 つまり、放送部の昼休みの放送にて、小説コンクールの著者である二人をゲストに迎え、対談インタビューを放送し、それにより二人の作品へ関心を持ってもらおうという魂胆だ。


 2人が小説を作ったいきさつや創作秘話を話し、作品の魅力を語ることで、関心を集める。


 放送部員である綾香のおかげで、それを実現させることができた。


 現在校内で注目を集めていることなので放送部の部長も顧問も快く承諾してくれたのだった。


「1年5組、市宮音乃です」

「同じく1年5組、日村野々花です」

2人は初めての全校放送の場に出演ということで緊張していた。


「今回校内コンクールで最優秀賞に輝いた、『僕と君のアイは昇る』ですが、最優秀に選ばれたということで、いかがでしたか?」


「頑張って書いた作品だったので、嬉しいです」


「ストーリーは遺伝子操作によって特異体質の少年少女は人の感情を読めるというもので、それで溝があったといったシリアスなお話でしたね。僕も読ませていただいたのですが、市宮さんと日村さんの小説は感動ものでした。ぜひ今回はその制作秘話についてお話いただきたいと思います」


放送部のアナウンサーはやはり話題の為に目を通していた。


「まさに主人公のヒロインの感情が見事に表現されていて、それがラストへとどうつながっていくのか、2人の行く末など読んでいてハラハラドキドキさせられる内容でした」


 しかし、今回はあくまでも2人の作品の宣伝の為の企画であり、あえてネタバレには触れない程度での紹介となった。


「聞けばお二人は、普段から小説を書いてらっしゃるそうですね」


「私は、最近小説を書くようになったのですが、そうやって創作を始めてから、物語を作るという楽しさに芽生えました。それならもっと面白い物語を作りたいと思って小説を書くのが楽しくなって習慣になりました」


「私は小学校時代から小説を書いていましたね」


「二人で合作をしてみようと思ったきっかけはなんですか?」


「ある時、私は日村さんの小説を読む機会があって、そこで初めて彼女の小説を読ませていただいたんですけど、その小説の素晴らしさに感動したんです。同じ年とは思えないほどの完成度で、読みやすい人物の心情や本当に背景をイメージできそうな丁寧な描写に表現力と文章力。これは天才だと」


「現にお二人の小説は、かなり心理描写や背景描写が丁寧で読みやすいと評判でしたね」


「日村さんの素敵な文章に惹かれて、私も応援したくなりました。それならいっそのこと、私達で二人でみんなを感動させる小説を作りたい、と思って」


「最初に市宮さんの方から一緒に小説を作ってみない? と話を持ち掛けられたんですけど、市宮さんの熱心な推しにつられてそのまま2人でやることになりましたね」


「あの作品は、何がきっかけで思いついたストーリーだったのでしょう? 何か影響されたものとかあります?」


そこで、音乃と野々花は事前に打ち合わせしておいたことを話すことにした。


「現在テレビアニメが放送中の「ラミレスの丘」という漫画です。あれに影響されました」


「あー! 最近よく話題を聞きますね。僕もアニメを観たのですが面白かったです。校内にもあの漫画のファンはいっぱいいますよね。そこからどういった着想を得たのでしょう?」


「ロシウスとアミエルという主人公二人がとても魅力的で、しかし過去には葛藤もあって、成長していく彼らの姿で、私達もこういった友情のお話を書きたいと思いました。人々の心の中には、様々なことが起きるけど、それでもその中で出来上がっていく信頼関係とか、そういったものを表すのって面白いんじゃないかと」


「なるほど、着想はあの作品からということですね。それはやはり、好きな作品から深くストーリーを考察しているからこそできる話ですよね」


「元々、日村さんとやりとりするきっかけになったのもその「ラミレスの丘」という作品の話題からだったんです。2人とも同じ作品が好きと知って、それ繫がりで色々やりとりをしているうちにこうやって私達でやってみようって」


「ではお2人の出会いにはまさにその「ラミレスの丘」が重要だったわけですね同じアニメが好きだからこそ、そういったきっかけで仲良くなれる、まさに理想の友情ですね」


「私はこの学校に来て、日村さんに出会えたことが嬉しいです。最初はそういった繫がりでやりとりしたのですが、日村さんのおかげで、ますます小説を書く楽しさに目覚めました」


「私も市宮さんのおかげで小説を書くってこんなに楽しいことだったんだと改めて考えさせられました。大好きなアニメという共通の話題から交流が始まり、ここまでできました」


「なるほど! 市宮さん達の熱い信頼関係からこの名作が生まれたんですね!」


「お2人の作品は現代国語担当である清水先生も感動されたそうです。それで先生達の間でも評判だそうですね。人物の心情や描写が丁寧だとか、文章力もストーリー構成も発送も飛びぬけていて、お二人の作品は、高校生が書いたものとは思えない、というくらいに先生方にも評判なようで。最初から最後までが美しいストーリーとして完成していると


 アナウンサーは校内で評判な部分を発言した。音乃達の小説は教師達にも感動させられると意味が伝わったのだ。現代国語の教師までもが推すということは、相当の作品ということになる。


「その完成度はぜひ全校生徒の皆さんに読んでもらいたいところですね」


 そうして、その後も放送部での対談インタビューが続き、二人はあの作品への想いや、制作秘話に、魅力を伝える話を発言し、それを放送部部長がまた盛り上げるトークを繰り広げる。


「以上、1年5組市宮さんと日村さんのお話でした! ではみなさん、午後の授業も頑張りましょう!」

 昼休みの放送は終わり、その放送を聞いた者はそれを話題にしていた。


校内放送が終わって、音乃のクラスはその話題をする生徒達がいた


「校内小説コンクールって市宮さんのだよな。あれ、現国の清水先生までも推してんの? 先生たちとか大人にも好評ってすごくね?」


「ラミレスの丘の影響を受けてるとか言ってたよね? あのアニメから着想を得たってことは、何かラミ丘に通じるものがあるってことかな?」


「だよな、私も読んでみたくなった、普段小説読まないけど」


校内放送により、その作品を読みたいと思った生徒達が一斉に二人の小説へ関心を向けた。




 翌日、学校へ登校すると、教室にて音乃と野々花へとクラスメイトが次々に声をかけた。

 昨日の放送で、音乃達の小説に興味を持った生徒達が小冊子の小説を読んだのだ。


「市宮さん、凄い小説だったよ! あれ、日村さんと書いたんだって? 完成度にびっくりした! もう感動しちゃった!」


「俺もあれ感動した。ラミ丘の影響受けてるってことで読んでみたくなったんだけど、確かにこういう話もありだなって思った!」


「放送聞いて、俺もラミレスの丘、アニメと漫画見たくなったわ」


「だよな、あれだけの作品を生むきっかけになったそれだけ面白い漫画だってことだし」


「あの物語はそうやって創られたって、制作秘話みたいな」


「市宮さん達、そうやって合作を頑張って作ってたんだよね」


 クラスメイト達が音乃達を尊敬の眼差しで見ていた。


 あの小説は、読んだ者の心を掴むという、先生たちも評価している内容であり、それがまた生徒達にも伝わる魅力的なものだったのだ。


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