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海の家【ラプラス】  作者: 島クジラ
開店準備
6/6

第6話

ほぼ、アトラ君視点でやっていこうと思ってはいるが、なかなかに難しい。

あと、最近考えるよりも、頭の中に出た文字をそのまま書いている方がいい気はしてきた。


なんていう、作者の最近。





「まんぞく~……」


「そりゃあ、何よりだ」



腹をフグのように膨らませて幸せそうな顔を浮かべる。


海からとってきた食材をほとんど食べたが、味に飽きることもなく、無限に食べれるのではと錯覚するような感覚だった。

元の食材がいいのもあるだろうが、何よりもおじさんの調理のおかげだ。



「にへら~……」


「顔がゆるゆるじゃねぇか」


「えへへ…美味しかったもん」


「ギャウギャワ」


「セベックはまだ食べれるもんねー。いつもよりは少なかったから…」


「あれで少ねぇのか……」



˝まぁ、セベックは食べても食べても足りないからねぇ…˝と、いつも一緒に食べている光景を思い浮かべる。



「そんなことよりも……」


「ん~…?」


「小僧、お前に提案がある」


「ていあん…?」


「そうだ。お前と俺、手を組まねぇかって話だ」



˝手を組む?˝と、体を起き上がらせてホジロに向き直る。

先ほどまでと打って変わって、真面目は顔をしたホジロがこちらを見つめていた。



「簡単な話だ。お前は俺に今日みたいに食材を持ってくる。俺はそれを使って料理を作るんだ。そんで、店を構える……報酬と言っちゃなんだが、その店で寝泊まりと飯を提供するってのはどうだ?」


「お店……ご飯に家……」


「あぁ、お前の家は家じゃねぇ」


「えぇ!?家だよ!!」


「あんな丸太つなぎ合わせただけの塊が家なわけあるか!!?」


「家だよ!ちゃんと屋根も壁もあるもん!」


「雨漏りしてるし、風も吹き抜けてるわ!!」



話が脱線していく。

˝そんなことより!˝と、ひと呼吸おいてからもう一度、ホジロは話し始めた。



「店は俺が何とかする。店建てれるだけの金はあるからな。だが、今日お前らが獲ってきた食材はそう簡単に手に入らねぇ。それこそ、何万ローオするかわかったもんじゃねぇ」


「【ローオ】?」


「金のことだ。よその国は知らねぇが、この近辺では金のことをローオっていうんだよ」


「へー」


「とにかく。お前がいいなら、俺と一緒に店をやらねぇかって話だ。俺は食材を貰うし、お前は家と美味い飯が手に入る。金は山分けで……」


「別にいいよー」


「………………」


「???どうしたの?」



なんでそんな顔してるんだろ、僕おかしなこと言ったかな?



「俺が言うのもなんだが……ある程度は人を疑うようにした方がいいな」


「おじさんだからだよ~」


「忘れてた天然だわこいつ……」



なんか失礼なこと言われた気がするなぁ……まぁいっか。

でも、僕はおじさんのおいしいごはんをたくさん食べることができるから、おじさんについていきたいなぁ……なんかたのしそうだし。



「別にいいがな。あとの細かいことは、必要な人間が集まってからやる。今日の所はあの家に戻ってろ。後日また、お前の所に話を持っていく」


「はーい」











――――――


―――――――――


――――――――――――


―――――――――――――――


――――――――――――――――――











「それで、この人だれー?」


「うぷっ…………」


「あ?あぁ、市場の人間だ」


「説明が雑っすよ……ホジロの旦那…」


「うるせぇ。お前のせいで、幽霊の話で面倒ごとになるわ、女装させられて掃除させられるわ、子どもに指さされるわ……散々だったんだぞ」


「うっ……女装のことは思い出させないでくださいっす……」



女装ってなんだろう?

なんか、おじさんもこの人も顔があおいから、よくないことなのかなぁ……。



「ううん、にしても……この子が【あの】幽霊だった子なんすね……」


「一時はレイスの類かと思ったがな」


「でも確かに不思議っすね。普通ならあの警備隊長に保護されててもおかしくない見た目っすけど……ここまでバレずに、それこそ生活までしてるとは……」


「おかしな点は複数あるが……」


「謎は謎のままっすね……俺たちは探偵じゃないっすから」



なぞー?何のはなしかわからないけど……難しいことは分からないからいいやー。

にしても、この人……なんかふわふわしてるなぁ……。


軽そう(重さ的な意味)……。



「なんか失礼なこと言われた気がしたっす」


「お前の悪口なんざ、どこでも聞きそうだがな。軽そう(態度)とか」


「ひどいっす!!?」


「ねぇねぇ、この後どうするの~?」


「ええっとー……とりあえず、知り合いに会いに行くっす。俺顔は広いっすから、店建てるならいい業者を知ってるんで。そのあとは市場の確認すね」


「市場?」


「そうっす。魚介はえーと「アトラだよ!」アトラ君が獲ってくるとは聞いてるけど、他の食材。野菜とか肉は市場で仕入れるのが一番です。個人的に契約するなら別っすけど」


「今のところはないな。魚類は小僧。他は市場に頼る」


「OKっす。逆に旦那たちが市場に魚を下ろすのもありっすよ。言い値で買うっす」


「気が向いたらな。半分は、こいつらの飯になる」


「その時はご一緒させてくださいっす!!!」


「一緒にご飯!!」



˝現金な奴だなこいつ˝



よくわからないけど、このお兄さんは面白い人かも。

おじさんはなんか溜息吐いているけど……。



ホジロの考えなど知らず、楽しくご飯が食べれればいいのがアトラスタイルである。

もちろん、セベックも同じなのだが、セベックを見た彼がどういう反応をするかは火を見るよりも明らかである。



「そういえば、お兄さんの名前はー?」


「あ、そっか。自己紹介がまだだったっすね」



ふふん、と得意げにアトラに向き直った。



「俺は【ラルス】っす!市場でたくさんの商品を売らしてもらってるっす!!」


「騒がしい鳥だと思っとけ」


「旦那ひどいっす!!」


「よろしくね!鳥のお兄さん!!」


「変な名前で呼ばれるようになったじゃないっすか!!!??」



ふふ、騒がしくて楽しい。



街の端をゆっくりと歩きながら、目的地である建築士の事務所へと歩く三人。

何かが嬉しかったのか、アトラは目的地までずっと笑顔で歩いていた。











――――――


―――――――――


――――――――――――


―――――――――――――――


――――――――――――――――――











「ごめんくださいっすー」


やってきたのは街中から少し離れた一軒家。

別段豪華なわけでも、古いわけでもない。至って普通の家。


しかし、時たま中から【何かを叩く音】が聞こえてくる。



「なんか、ガキンガキンってきこえるねー…」


「鉄を叩いてんだろ。ここにいる奴は、大抵鉄くずが大好きな変わり者しかいねぇよ」



アトラを疑問に、ホジロは事務所の看板のマークを見て行った。



「多分、集中してて声が聞こえてないっすね」


「だろうな。あの【種族】はやりてぇ事がはっきりしてる分、人の話を全く聞かねぇからな。どうすんだ?あいつらが止まるのを待つのか?」


「それは無理っすよ。だって、彼らは最悪三日三晩休憩なしで動くこともありますよ?」


「んー?中の人にきこえればいいのー?」


「ああ」



なーんだ、それなら簡単じゃん。

中の人にきこえるようによびかければいいんだ!



「すぅー…………」



いつもセベックに声をかけるときよりも、もっとたくさん息を吸って……。

お腹の中に貯めて……。



「すみませーーーーーーん!!!!!!誰かいませんかーーーーーーーーー!!!!!」


「おわぁっ!?」「うげっ!!?」



ガタガタッ!!!パラパラ……。

まるで咆哮の様な声のせいか、まわりの塵が屋根から降ってきた。


警戒も何もしていなかったホジロとラルスは、そのまま大声を直浴びして目の前で伸びていた。



「聞こえたかなぁ…「ゴチンッ!!」いたぁーい!!!?」


「何やってんだ小僧てめぇ!!いきなり大声出してんじゃねぇよ!心臓止まるかと思ったわ!!!」


「うぅ、耳がキンキンするっす……」



大激怒。

アトラから見るホジロはまるで、鬼そのものに見えた。



「なんじゃ?」



と、そこへ。

先ほどまで無かった三人以外の声が聞こえた。


振り向けばそこには一人の髭が濃い男。

筋骨隆々でがっしりとした体、まるで幾千もの修羅場を潜り抜けてきた歴戦の戦士のようにも見える。片手にはハンマーを持ち、こちらを静かに見ている。



「あ、【ガンドル】さん」


「ラルスの坊主か。お前さん、また厄介ごとを持ってきたのか?」


「いやぁ、俺は何もしてないっすよ……」



なんか、お兄さんと親子みたいに見えるなぁ……。

でも、お兄さんの方が大きいから、お兄さんの方が年上なのかなぁ……。



「おいチビッ子。わし見て小さいって思ったろ」


「ええ!なんでわかったの!!」


「分かるわ!!何年生きてると思ってやがる!!わしゃあ、もう100年は生きてるわい!!」


「おじいちゃんだ!!」


「ああ、そうじゃ」


「ガンドルおじいちゃん!」


「わし、男の孫がほしかったんじゃ」


「あぁ、この爺さんも厄介な類か……」キリキリっ


「先輩、胃薬っす」



先ほど迄とは違い、まるで孫を可愛がるようにガンドルはアトラを持ち上げる。アトラも、ガンドルが気に入ったのか、抵抗はしなかった。


そんな濃すぎる光景にまた、胃が痛くなるのを感じるホジロであった。


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