第3話
最近、高たんぱく・低糖質の食品・料理にはまってよく食べるが、意外とおいしい。
ヴィーガン商品も食べたけど、これもまたうまい。
色々と味を試して生活しているけども、食事の時間が一番幸せではある。個人的には、時間を賭けながら食べるのが好き。ただ、食べるのが速いので時間がかかっていないのが何とも言えない。
という、雑談。
では、本編どうぞ。
「なんでこんな目に合わなきゃならねぇんだ……うっ」
「おじさん大丈夫?」「ギャウ」
「お前らのせいだろが!?」
髪を逆立ててキレるホジロ。
アトラの加減の知らない行動により、口からキラキラとした滝が流れ出るところだったと口を押える。
ほんの1日前の夜に同僚を同じ状態にして、地獄(女装掃除)を見たホジロは二重の意味で顔を青くした。
「んで?海まできたは良いが、俺ぁ水の中で待つなんて出来ねぇぞ?」
「え?そうなの?」
「当たり前だろうが!?普通の人間は水の中で息出来ねぇし、水に浮き続けることもきついし、海獣から身を守ることも出来ねぇよ!!?」
「ギャウギャウ」 コクコクッ(頷き)
「おら、ワニ公も頷いてんじゃねぇか!!」
実はセベックの方が理解力(常識に対して)がある。
「そっかぁ……じゃあ、セベック。おじさんのことお願いね?」
「ギャウワ!」
「僕はお肉と貝獲ってくるね」
「ギャワ?」
「大丈夫だよ、あんまり大きい子がいるところにはいかないから」
「………………」
何気ない風景に見えるが、実際はそんなことはない。
身長が140cm程度の少年と、その何倍もある巨体の海獣ワニ。
˝どうみても生贄にしか見えない˝
そんなワニの背中に乗るホジロもまたおかしな光景の一つだ。
しかし、それよりもホジロには気になることがあった。
˝さっきの口ぶり、狩りの説明をしている時から疑問だったが…小僧には、海で活動できる何かがあんのか?˝
海獣と戦っていないこと。
セベックに守ってもらっていないこと。
ホジロが海で待っていられると思われていたこと。
武装が何もないこと。
海で活動するには、致命的な知識や物資の無さ。
あの魚人達でさえも、海獣と戦って無傷で帰還したという話はあまり聞かない。
子どもの魚人もあまり遠くの海では遊ばないと聞く。
「おい、小僧。一人で大丈夫なのか?」
「?……うん、大丈夫だよ?」
˝何言ってるの?˝とでも言いそうな顔を向けられて少し青筋が出るが我慢。
友だちの家にでも行くような感覚で答えたアトラに、一抹の不安を覚えるが、ホジロ自身何もできないので口を閉じた。
「じゃあ、行ってくるね~」
ジャポンッと、海中へと潜っていくアトラを見送り、ホジロはセベックの背中に乗りながら周囲を見渡す。
島からは少し離れた場所ではあるが、波が強いこともなく穏やか。水深が深いわけでもないので、近くにサンゴ礁らしきものも見える辺り、水中は素晴らしい世界が広がっていることだろう。
˝これなら釣り道具でももってくりゃあ良かった˝と、ホジロはポケットに入っているタバコを取り出す。
「!ギャウワウ!!!」
「おわっ!?」
「グルルルルルっ!!」
「あ、ああそうだったな。お前さんの背中でやる事でもなかったな。すまん……」
「ギャウ」
魔物とはいえ女の子。何よりも、背中に乗せてもらっている側が背中にタバコの塵を落とすなど許されない。常識ではあるものの、ホジロはストレス(女装・海獣・水上レース)により逃げ道が欲しくなったため、忘れていた。
˝いや、常識というか…そもそも海獣の背中に乗るなんざ、考えたこともないわ。あー、腹いてぇ˝
少し濡れたタバコをしまいながら、胃がキリキリとストレスを感じ始めたのを理解したが、タバコも吸えないから現実逃避も難しいホジロだった。
「にしても、遅いな……あれから10分以上は立ってるが……」
人間は1分も水中に居れれば大したもの。30分も水中に潜れる人間がいればそれは一つの記録だ。
だが、アトラは一向に戻ってこない。波も穏やかな分、周囲を見渡せばアトラが息継ぎに海面に顔を出すことを確認するくらいはできる。
˝海獣にやられたか?˝と、少し冷や汗をかくホジロだったが…。
「ばぁ!!!」
「おあっ!!?」
いきなり海面から飛び出てきたアトラに不意を突かれ、そのまま海へとダイビングした。
セベックに尻尾で海から引き揚げてもらい、アトラの頭に拳骨を落とした。
ゴチンッ!!!
「硬い痛い!?」
「驚かせんじゃねぇよ小僧!!!」
涙目なアトラに自業自得だと青筋を立てる。
息を整えた後、アトラの持っている【緑の網の様な物】を見た。
「【 海網草】か」
「海網草ー?」
「あぁ、知らねぇのか。海中にある【魚を食う植物】の一種だ。網の様な海草に近づいた獲物を、そのまま捕まえて養分にすんだ」
「へぇー」
˝つっても、サイズによっては人間もやられるはずだがなぁ˝と、少し恐怖するホジロ。
海網草は、小さい物は10cmから大きい物は5mはある。
先ほど説明したように食べるのは魚だが、栄養となるなら何でも取り込む。網の中に入るものなら、魚だろうが海獣だろうが、それこそ人間だろうが捕まえるだろう。
まぁ、群生しているところがそもそも陸から遠く、人間が漁をする場合はまず出会わない。
その他、網に捕まったとしても、海草を切れるものがあれば簡単に脱出が可能だ。
「これ便利だよ?たくさん物を入れられるんだー」
「…………そうか」
一応、危険な海草を袋扱いしているアトラに少しドン引きしつつも、中身を確認するホジロ。
海草の中には大量の貝が入っていたが……。
「って…これ【 崩貝】じゃねぇか!?」
「これも名前あるんだぁ」
「そこじゃねぇよ!!?れっきとした【海獣】だわ!!!」
「ギャウワ~♪」
「ガツガツ食ってんじゃねぇぞワニ公!!!」
「好物だからね」
笑顔で海獣を食らうセベックとのほほんとしてるアトラに叫び続けるホジロ。
アトラが獲ってきたのは、【崩貝】。
主に海の砂の中に隠れている海獣で、小魚を中心に捕食する肉食の貝だ。
見た目は掌くらいのサイズの貝で、特徴があまりないのだが……貝を開けると普通ではないのがわかる。
今、貝殻の隙間から出ている触手のような部分、ここが砲台のようになっているのだ。
この部分から放たれる砲撃で、泳ぐ魚を仕留めて捕食するのだ。
その弾の威力は水中の岩を破壊するほどの一撃であるため、【砲撃貝】とも呼ばれる。
˝バクバクバクバクバクバクッ!!˝
「そのはずなんだがなぁ………」
「いつ見てもおいしそうに食べるねぇ…」
ギャウ~♪と、貝殻ごとボリボリバリバリと、そのまま口に投げ込んでは噛み砕いて飲み込んでいくセベックを遠い目で見つめるホジロと微笑ましく見守るアトラ。
ちなみに、人間には害はない。理由は崩貝が人間を食えないから。
しかし、崩貝の砲撃が岩場に当たり、その崩壊に巻き込まれることもあるため、危険なことに変わりはない。
「はぁ……他にはなんかあんのか?」
「うん?うん、これも取ってきたよー」
「あ?……あぁ!?」
海網草から取り出された赤い魚。
ホジロはそれを見たことがあった。
「【スピネルブリーム】じゃねぇか!!?なんで、こんなのがこの辺に居るんだよ!?」
「赤くてきれいだよねぇ。いっつもこれ食べるんだぁ」ジュルリ
「いやきたねぇな!?魚によだれ垂れてんだよ!」
アトラのよだれのせいで台無しだが、一応高級魚であるスピネルブリームである。
「こんなに大量のスピネル見たことねぇよ………」
彼らは【宝石魚】の一種だが、そもそも宝石魚は狙われやすいためか、天敵から逃げるために速い個体が多い。スピネルブリームはその典型的な例だ。魚人ですら、こいつら持ってくる機会は少ない。
持ってきても、かなりの高価で売買される。
一般的な店ではまずお目にかかれない食材だ。
それがホジロの目の前に10匹はいた。
˝そもそも海の食材は、海獣のせいで入手が困難だ。魚人ですら取りに行けない場所や獲物がいるくらいだ。だが、さっきから見てんのは全部……˝
「てめぇは一体…」
「えへへへへぇ……」ボタボタッ
「だからよだれ拭けよ!?ワニ公も食うのやめろ!!?」
「ギャウ~♪」
「話聞けやおら!!!?」
自由すぎる1人と1匹に振り回されながら、ホジロは溜息を吐く。
アトラの捕獲については落ち着いてからでと決め。アトラの捕獲してきた食材をもう一度見直すのであった。
海獣:崩貝 紹介
崩貝。砲撃貝とも呼ばれる肉食貝。
海の砂中に生息しており、人間には無害。小魚を主食にしており、貝殻の隙間から砲台のような触手で撃ち落として捕食する。
海獣の中でも温厚だが、砲撃の威力はかなりのもので、岩場に直撃すると破壊できる。崩れた岩に巻き込まれ、そのまま海中で身動きが取れなくなる場合があるため危険な生き物ではある。
接触は基本的にしないほうがいい。
食べることのできる海獣。美味