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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ソライロハグルマ系列の小説

キサラギスカイ

 二ヶ月颯太(にかげつそうた)はため息をついた。それも、特大の。

「だから、お金なんか持ってないって言ってるでしょうが」

 家出をし、ロサンゼルスへと向かうつもりが乗る飛行機を間違え、どこかの大陸の小さな国に着いてしまい、いつもの感覚で夜の散歩に来たらこれだ。すぐにこん棒やらパイプやらを持った男たちに囲まれてしまったのである。

 治安が悪いって困るなあ、と颯太は心の中でつぶやいた。

「おいおい、じゃあなんでこんなところに来てるんだよ? 金ぐらい持ってるはずだろお?」

「持ってても渡すわけないでしょう。バカですか?」

 そのセリフが、短気な男たちを怒らせたらしい。

「じゃあ殺して奪う――」

「『フェブラリー・アトモスフィア』」

「ぐぉっ!?」

 いきなり、一人が地面に倒れ伏した。颯太は指一本触れていないにもかかわらずだ。

「僕も優しいんで、さすがに殺しまではしませんが、一週間ほど寝込むことになりそうですね。他の方はいかがですか?」

「て、てめえ! 今何しやがった!」

 颯太は気だるそうな目で、手を払いながら偉そうに教える。

「簡単な話だ、魔法ですよ。マジックです」

「なめんな――」

「それじゃあ体験してみますか? だいぶ痛いので、やめておくことをお勧めしますが」

 男たちは顔を見合わせると、倒れた一人を抱えながら一目散に駆けて行った。

 すると路地の奥から、一人の少女が手をたたきながらやってきた。

 この真夏の中で灰色のサイズが全くあっていないスーツを上下着て、赤い手編みのマフラーを首にゆるく巻いている。髪の色は黒で、先端に近づくほど赤くなっている。目の色も黒で、顔立ちは日本人に見えなくもない。そして頭には一対の猫耳があった。

「わあ、きみ、強いんだねえ! 魔法使えるんだ?」

「誰ですか」

 少女はけらけらと笑いながら言う。

「そんなに警戒しなくてもいいよ。ボクに敵意はないから」

 そうと言われても、先ほどチンピラに絡まれたばかりなので警戒しないわけにはいかない。

「というか、魔法を知っているんですか」

 少女は話を続けた。

「そりゃあね。ボクの名前はレインドロップ、人間じゃなくて猫又なんだ。よろしくね!」


 颯太はレインドロップの誘いで近くのバーに向かった。

 そのバーは一応営業していたが、客は一人もいなかった。

「バーテンダーさん、おはよう!」

 バーテンダーは無言で、颯太とレインドロップに向かってぺこりと二度お辞儀する。

 バーテンダーの外見は、さながらマンガに出てくるような、誰が見てもバーテンダーと分かる姿をしている。

 レインドロップは元気いっぱいにはちみつ入りをたっぷりいれたりんご酒を注文した。

「もしかしてもう大人だったりしますか」

「いや……ボクはまだ子供だけどね。けっこうおいしいよ! というか、ここ無法地帯みたいなものだし、未成年がお酒を飲んだところで何も問題はないんだ。きみもどう?」

「遠慮しておきます。ぶどうジュースで」

 注文して十秒もたたないうちに、りんご酒とぶどうジュースが机に置かれた。

 程よく冷えたぶどうジュースは疲れを癒してくれる気がした。とってもおいしかった。

 レインドロップも、グラスをほぼ逆さに傾けて一気にりんご酒を飲み干した。

「ふう、おいしい。あ、そういえば」頬をほんのり赤くしたレインドロップが思い出したように言う。「きみの名前を聞いてなかったね。聞いてもいい?」

「颯太です。二ヶ月颯太」

「ふうん、やっぱり日本人か。珍しい苗字だね」

 レインドロップはすぐにりんご酒のおかわりを注文した。バーテンダーはレインドロップが次に何を頼むかわかっていたらしく、言わずとも塩漬けの肉もやってきた。

「ありがとうバーテンダーさん。うーん、おいしいね。颯太くんもどうかな、やみつきになるよ」

 塩漬け肉にアルコールが入っているとは考えにくいので、言われるままにひとつ口に入れる。肉は少し硬めで、噛めば噛むほど塩とスパイスの味が染み出てくる。たしかにこれはやみつきになる味だと颯太は思った。

「なんで颯太くんはここに?」

「ロサンゼルスに行くつもりだったんだけど」颯太は一拍置いた。「乗る飛行機を間違えてここに来たんです」

「あっはっはっは! そりゃおもしろいねえ! で、そのこと親御さんは知ってるの?」

 颯太は首を振った。

「心配させないようにね。あとで電話でもしてあげなよ、それだけで少し安心できるだろうから」

 その後ふたりはレインドロップが酔いつぶれるまで一時間ほど話した。

 レインドロップのことはバーテンダーが預かるとのことなので、颯太はホテルに戻って休むことにした。


「やっほー、おはよう!」

「……どうやって入ってきたんですか」

 翌朝。

 まだ五時半にもなっていないのに、颯太はレインドロップにたたき起こされた。鍵はすべて閉めていたはずだが。

「ふっふっふ、ボクにかかれば窓を開けることぐらい造作もないのさー。まあ仲良くいこう! で、親御さんに電話はしてあげた?」

「してないです」

「そっかー、まあ、気が向いたらしてあげてね。ボクもこれ以上言わないでおくよ」

 颯太はレインドロップが普通の大人のように、『正しい』ことをしつこく勧めてくる人ではないことに少し安堵した。これで「電話、電話」としつこかったら正直迷惑だったところだ。

「それで何の用ですか」

「んー? 別に用はないけど。暇だし遊びに来たんだよ!」

「はあ……そうですか」

 もう眠気が吹き飛んだ颯太は適当に顔を洗う。

「家出中なんだっけ?」レインドロップは持ってきた風呂敷をほどきながら言った。「昨日さ、弟がご飯作り過ぎちゃったって言ってたんだよね。ボクの朝食にしてもまだ余ったから、おすそわけ。お金、節約した方がいいでしょ」

 颯太が見てみると、机の上にはとてもおいしそうな大きい唐揚げが二、三十個ほどあった。

「この量はさすがに……」

「まあまあ、ひとつ食べてみなよ。余ったら他の人におすそわけに行くから」

 言われた通りにひとつつまんでみる。からあげは昨日作ったと言いながらも、作りたてかのようにサクサクしており、とても温かかった。噛むとジュワッと肉汁があふれ出てくる。

「どうかな?」

「おいしいです」

「それはよかった。ほら、じゃんじゃん食べてね」

 いつも笑顔だが、さらに笑みが深くなったレインドロップもひとつ食べる。

 颯太が夢中で食べ、すぐに満腹になると、唐揚げは半分くらいになっていた。

「ごちそうさまでした」

「うん、ありがと。喉が渇いただろうから、レモネードもあげるよ」

 レインドロップはどこからかペットボトル入りのレモネードを取り出した。ボトルにはラベルがなく、拙い手書きで『レモネード』と書かれている。これも弟さんの手作りだろうと颯太は推測した。

 レモネードは市販されている物よりもだいぶ甘味が強く、しかしながらとても飲みやすい。颯太はすぐにボトルの半分ほどを飲み干してしまった。

「それで、えーと……」

 レインドロップは何かを話し出そうとしたが、少しためらった。颯太が手を動かして促す。

「次日本に帰る飛行機が来るまで、あと二週間あるんだよね。大丈夫?」

「えっ」颯太は凍り付いた。「大丈夫じゃない。お金が足りない……」

 レインドロップも、あらららら、と空を仰いだ。真っ黒なカラスが窓の外で人を馬鹿にしたように鳴く。


 * * *


「へぇ、日本人。いいじゃねえか、なあマーブル。情報は?」

 アダムズ・グリーンティーはワインを一口飲んだ後、雑にグラスを机に置いた。

 マーブルと呼ばれた、アダムズの正面に座る青髪の女性がファイルを取り出してそれを読み上げる。

「二ヶ月颯太、十七歳。横浜生まれの福岡育ちで――」

「そういうのはいい」アダムズが遮る。「金の情報だ」

「わかったわ。両親は父親が年収二千万弱で、母親は年収千六百万程度のお金持ち。現在彼本人は家出をしているらしいの。で、わざわざ海外にまで行くのを見ると、彼もなかなかの金額を持っているとみて問題なさそうね。なんでこんなところに来たのかは知らないけど」

「どうせ親の目を逃れるためとかそういう理由だろ。じゃあそいつでよさそうだな」

 アダムズが静かにワインを飲む。

 マーブルもファイルをリュックサックにしまい、かわりに青くて可愛らしい水筒を取り出して中の砂糖水を少し飲んだ。

「今からでもそいつに近づいてこい」

「はいはい、わかったわよ。じゃあね」

 マーブルがストレッチをし、建物の外に出る。アダムズはその背に少し違和感を感じたがそれを振りはらい、ポケットから懐中時計を取り出した。

 その時計は、絶対に融けない氷でできている。薄く輝く半透明の時計は時刻を確認するのにすこし見づらくて不便だが、彼にとっては時刻など関係ない。

 重要なのは、その時計が所有者に与える魔法なのだから。


 * * *


 颯太は親からの電話を応答せずに切った。心配しているのだろうとは思うが、ムカついているときにわざわざ電話に出てやる気は起こらなかった。

 レインドロップもそういう経験があるのかないのか、特に何も言わずに近くの屋台で買ったスコーンを食べている。

 今は二人でそのあたりのベンチに座りながらぼうっとしている。歩き疲れたからだ。

 街の人通りは多く、いい意味でも悪い意味でもだいぶにぎわっている。

「というか、携帯電話とか不用意に出したら盗まれちゃうかもよ。気を付けてね」

「はい」

 颯太はレインドロップが無言で差し出したクッキーを受け取り、スマホと一緒に鞄にしまう。今は満腹だ。

「そういえば、なんだっけ。フェブラリー……アットマーク?」

「アトモスフィア、です」

「ああ、そうだった。どんな魔法なの?」

 言うかどうか少しためらったが、レインドロップに言ったところで何か悪いことが起こるわけでもなさそうだ。

「周辺の空気に好きな『効果』を付与します。その空気に触れた人はその『効果』を受けます」

「ふうん、なんか似たようなのを聞いたことあるなあ……なんだっけ」

 颯太は内心少し驚いた。似たような魔法があるということは、おそらくそれなりに魔法が使える人がいるということだ。

 なぜ颯太は自分が魔法を使えるのかは知らない。生まれた時から使えていた。制御できるようになったのは幼稚園の頃だが。親や親戚からはその前のことを「颯太に近づくとたまに痛みを感じなくなったり眠くなったりした」という風に聞いている。

 レインドロップが左を向いた。

「んー……なんだかあそこの茂みからすばらしい空気を感じる……」

 しばらくそこを見つめていたレインドロップだったが、すぐに茂みに向かって歩いて行った。

 颯太はそれをぼーっと眺め、急に後ろから話しかけられて振り向いた。

「颯太くん、で合ってる?」

 そこに立っていたのは一人の女性だ。肌は雪のように白く、背まで伸びた青い髪がよく目立つ。優しそうな雰囲気と表情が、初対面の颯太にもそれほど警戒させなかった。

「ええ。あなたは誰ですか」

「私はマーブルよ。マーブル・D・サイダーというの」

 マーブルは聖母のようなほほえみを浮かべた後、いきなり颯太に抱き着いた。

「!?」

「うーん! かわいい! ちょっと茶色っぽい髪に真ん丸で大きい目! 予想以上に理想のショタっ子!」

 颯太の頭をわしゃわしゃとなでるマーブル。颯太がじたばたして逃れようとしたが、マーブルは見た目にそぐわず力が強く、まったく抜け出せない。

 ちょうどそこへ、おいしそうな焼き魚を持ったレインドロップが走り寄る。

「あ! ちょっとレインドロップさん助けてください!」

「了解! てやー!」

 レインドロップがマーブルに殴りかかる。マーブルが避ける間もなく、鈍いとても痛そうな音がして意識を手放した。力なく崩れ落ちるマーブル。

「……ちょっとやりすぎでは?」

 アフロのような頭になった颯太がマーブルにかわいそうな視線を向ける。

 レインドロップは舌を少し出してウインクした。

「てへぺろ! ゆるしてね!」


「う……うーん……颯太くーん……お姉ちゃんから逃げないで……はっ!」

 マーブルは飛び起きた。

 颯太に逃げられる夢は相当の悪夢だったらしく、額には汗がたくさん浮かんでいる。

「おはようございます。用が済んだなら僕はもう行きますが……」

「あっ、そうそう! あなた、命狙われてるわ」

「は?」

 マーブルによると。

 颯太の親はお金持ちなので、身代金目的のアダムズとか言う男に狙われているらしい。

「わざわざ教えてくれるのはありがたいんですが、仲間なんじゃないんですか」

「いやいや! 仲間はさっきやめたの。颯太くんみたいなかわいー子が怪我したり死んじゃったりしたら、それこそ私、いや人類全体の大変な損失よ!」

「はあ」

 確かに颯太は「かわいい」と言われることもあるが、ここまで騒ぐ人は初めて見た。しかも隙あらば頭をなでようとしてくるし、すぐに抱き着こうとしてくる。

 マーブルはふといいことを思いついたと、手をたたいた。

「そうだ! ねえ颯太くん、お姉ちゃんと結婚しない?」

「やめておきます」

 颯太に即答されたことに少し傷ついたマーブルだったが、すぐに次の案を出す。

「じゃあ弟に――」

「いえ、結構です」

「それなら養子に――」

「それも結構です」

 当然ながらマーブルはうなだれた。

 そこに魚を食べ終えたレインドロップがやってきて、マーブルの肩を優しく叩く。しかしそれがなおさらマーブルの心に響いたらしい。涙を二度ぬぐった。

 帰ろうとした颯太を見て、マーブルはすぐに忠告した。

「魔法が使えるってだけじゃ、安心しきれないわ。アダムズだって魔法を使えるもの」

「!」

「ふっふっふ、お姉ちゃんを舐めてもらっちゃ困るわ。私はどんな情報でも調べられる情報網を持ってるのよ! すごいでしょう!」

「ああー、すごいですね」

「棒読みやめて! 悲しくなるの!」

 肩をたたくとマーブルが泣くことを知ってしまったレインドロップが、にやにや顔をマーブルに見られないように注意しながら、肩を軽くたたく。しっかりマーブルは涙を拭いた。レインドロップは意外と悪い性格をしているらしい。

「うう……もうちょっとお姉ちゃんを大事にして……」

「いつ僕はあなたの弟になったんですか」

「ずっと昔からよ、そういう運命だったのよ……ぐすん」

「……」

 颯太の口がまっすぐ横に伸び、何とも言えない変な不満顔になる。深い悲しみから立ち直ったマーブルは、その顔を無視して頭をなでようとしたが、颯太に避けられ、再び深い悲しみの海へと沈んでいった。

「なんかこの人少し面倒だね……」

「そうですね……」


「ほら! きれいなおうちでしょ!」

 遠慮する颯太とレインドロップを無理やり家に連れてきたマーブルは、一階建ての小さな家の前に立って自慢した。

「ホテルに泊まるとすぐにお金なくなっちゃうし、ここに泊まっていってね!」

「えっと……」

「大丈夫! 寝ている間に襲ったり食事に薬混ぜたりしないから!」

 そう言われるとますます不安になるんですが、と颯太はつぶやいた。レインドロップもうなずき同意を示す。

 いつの間にか二人の背後に回ったマーブルが、背を押して問答無用で家に入れる。

 家の中は掃除がよく行き届いており、物もそれほど置かれておらず、きれいだった。

「意外と綺麗だね」

「意外とって何よ……お姉ちゃんのこの溢れんばかりのスーパーいい性格を見ればこのくらい予想できるわよね。ね、颯太くん」

「……そうですかね……」

 二人があいまいにうなずく。

 それを見て満足したマーブルは、リビングにあるドアをひとつ指さした。

「あそこのドアが今日から颯太くんのお部屋よ。それであっちが――」

「何を言っているんですか」

 颯太は目をぱちくりさせた。

 なぜなら、そこにぽつんとドアが突っ立っているだけで部屋も何もないのだから。

「ああ……言ってなかったわね。そう、お姉ちゃんも魔法が使えるの。『スペーシャル・クローバーズ』って言うのよ。ほら、ドアを開けてみて」

 颯太がドアを引っ張ると、ドアはとても静かに、滑らかに開いた。そしてその向こうにあったのは、机やベッドなど生活に使う家具一式が置かれた小さな部屋だった。

 ドアの奥とドアの後ろを何度も交互に見たが、間違いようもなく魔法だ。

「ふっふっふ、すごいでしょ!」

「すごいですね」

 今回は棒読みでなかったので、マーブルは嬉しそうにする。

「それで、レーちゃんはこっち」

 レインドロップも、呼び方に少し違和感を覚えながらも言われたドアを開ける。中身は颯太の部屋とほぼ同じだ。

 唯一違うのが、部屋の真ん中に小さなこたつが置いてあること。きれいなまんまるのみかんがいくつか籠に入れられて、その上に置いてある。

 レインドロップはためらわずこたつの中に潜っていった。

「やっぱり猫ちゃんなのね。かわいい!」

 目に映る子供はだいたいかわいいマーブルなのだった。颯太はその中でも格別らしいが。


「ふー」

 ドアに鍵が付いていたのでいくらか安心した颯太が、ホテルからの引っ越しを終えた。

 マーブルがいてくれたので引っ越しはすぐに終わった。荷物はもともとキャリーバッグふたつ分しかなかったので、そのすべてをマーブルが運んでくれたのである。というわけで当事者の颯太は何もしていない。

「あー……おいしい。レーちゃんもどう?」

「いただきまーす!」

 現在二人は、魔法で作りだした少し大きめの部屋で昼間からお酒を飲んでいる。

 瓶には『アルコール五十五パーセント』と書いてあったが、ふたりはそれを割りもせずにがぶがぶ飲んでいる。よく飲めるなあ、とリビングのソファでカーレースゲームをしながら颯太は思った。

 レインドロップは五杯も飲んだところで受け答えが怪しくなり、十一杯目で意識が吹き飛んだ。まあ、さすがにそうなるだろう。

「うーん、颯太くんもどう? おねーちゃんと一緒に飲もう!」

「いや、遠慮します。何かジュースがあればそれを頂けますか」

「うんうん、ぶどうジュースでいいかしら?」

 颯太がうなずくと、すぐにぶどうジュースが少し背の高いコップになみなみと注がれてやってきた。それを飲み終わるのを見計らい、マーブルが颯太の隣に座る。

「颯太くんは、なんで自分が魔法を使えるのか知ってる?」

「いえ」

 首を左右に三度振る。マーブルは、そうよね、と呟いてから話を始めた。

「お姉ちゃんはね、九歳の時から魔法が使えるようになったの」マーブルはほんのり赤くそまった、懐かしそうな笑顔を見せる。「実はお姉ちゃん、孤児だったのよ」

 颯太は何も言わず、話に耳を傾けた。ゲームも頑張っているが、順位はまずまずのようだ。

 別室から「にゃー」だの「みゃー」だのと言った寝言と、何かがガタガタと動く音が聞こえる。

「お姉ちゃんはね、そこまで暑くない、ちょうどいい気温の日に孤児院の前に捨てられたみたいなの……院長先生はとっても優しい人で、畑をいっつもいじっていたかな。私が九歳の頃は、とにかく何でも気になってて。いろんな場所を見て回ってたものね」

 頷いて話を促す。

「その日は私の誕生日だったわね。すっかり誕生日だってことを忘れてて、いつも通りに起きて、いつも通りに探検に出駆けまわってたのを覚えてる」マーブルはグラスにお酒を注ぎ、一気にあおった。「でね、孤児院の裏に、古ぼけた木のドアを見つけたの」


 * * *


 マーブルはその木のドアのノブを、少し背伸びしてようやくつかんだ。

 周りに人が誰もいないのを入念に確認すると、ノブをゆっくりと回し、引く。

 ドアは見た目相応に甲高い音を立てながら開いた。ポケットから懐中電灯を取り出し、ドアの奥に入る。

「うーん……えっ? えっ……うひゃあああああ!」

 床はだいぶボロボロで、幼いマーブルが乗っかっただけで限界を迎えた。底が抜け、床の残骸とともにマーブルは落下する。

「うー……」

 落ちた先は真っ暗闇。だいぶ深い場所に落ちたようで、ドアから差し込む日の光は遠くに見えた。

 だが、マーブルにけがはなかった。クッションなどが置いてあるわけでもなかったが、運が良かったのだろうと納得し、懐中電灯だけを頼りに奥へと進む。

 そこは小さな通路だった。まるで、踏み抜かれて落下することを前提としているような。壁を照らすと、マーブルが見たこともない不思議な言語で説明が書かれた絵が何枚か貼られていた。夜の月をバックに丸っこい青い生き物とロボットが睨みあっている絵。眠たそうな目をした人の顔に少し太めの集中線が張られた絵など。

 しばらく進むと、懐中電灯以外の光源が見えてきた。奥に、なにか青色のものが浮かんでいる。

 近づいてみてみると、それは浮かんでいるのではなく台座に乗せられているようだった。宝石とまではいかないが、それなりにきれいな、青い光を放つ小さな鉱物。マーブルはためらわずそれを手に取った。

『……□※〒&……』

「え?」

 マーブルの頭に直接響く謎の声。少しするとそれは、マーブルの理解できる言語に変わっていく。

『……名称:マーブル・サイダー……確認。すべてのチェックを完了』

「えーっと……」

『ようこそ、マーブル・サイダー。あなたは適合者です』

「てきごうしゃ……?」

 ちんぷんかんぷんだったが、その声は気にした様子もなく話を続けた。

『これより送還をはじめます。目を閉じてください』

 目をぎゅっとつぶる。マーブルはふわりとした、宙に浮いているかのような感覚を覚えた後、意識を失った。


「んー……あれ?」

 マーブルが目を覚ました場所は、孤児院の裏だった。壁にはもうドアはない。さして疑問にも思わずに、大きく伸びをする。

 そこで左手に青い石を握っているのに気が付いた。石はもう光っていなかったが、きれいな青色は変わらない。マーブルはそれをポケットにしまうと、建物の入口へと戻っていった。


 * * *


「その日の夜に、魔法が使えることに気付いたの。それからはいろいろしたわね。古ぼけた額縁ひとつ持っておくだけで、今までよりはるかに多い探検グッズを持ち運べるんだもの」

「そうなんですか」

 一つ話を終えたマーブルが少し満足げに伸びをすると、ちょうどレインドロップが起きてきた。

「ふあー……うわっと!?」

 泥酔で倒れたばかりなので、足取りはフラフラだ。まだ倒れてはいないものの、両手を壁についていないと立っていられないらしい。すぐにマーブルが助けに行き、ソファで自分の膝の上に乗せた。

「ふにゃ……うーん……」

「次からは飲み過ぎないように気を付けないとね。お姉ちゃんは大人だからいいけど、レーちゃんは子供だからダメなのよ」

「うぬぬ……子供扱いはヤダ……」

 そう言いつつも、マーブルが優しく頭をなでると、すぐにふにゃっとした顔になる。とても子供だ。これでは実年齢がいくつでも、子ども扱いされるのは当然の流れだろう。

 レースゲームを頑張る颯太を見て、レインドロップもやりたくなったらしくゲーム機をひったくる。

「うわ。何してくれてるんですか」

「ふっ、ボクだってやれるぞ!」

「そういう問題ではないです。『フェブラリー・アトモスフィア』」

「うわー!?」

 レインドロップはゲーム機を手放した。それを回収して、残念なことに順位が最下位に落ちてしまった画面を絶望的な顔で眺める。

 その日は三人で、次の日になるまで笑いながら話をした。もちろんほかの事もしたが。


 * * *


「マーブルが裏切ったか。まあ、それが作戦のうちなんだけどな」

 アダムズは、ホログラムで宙に浮かぶ、ビデオチャット中の少女を安心させるように笑った。

 少女の名前はジョイライド、猫又だ。銀色の長い髪を左側で束ねており、水色の瞳は深い知性を感じさせる。首には桃色の勾玉をふたつ、ネックレスとして付けている。

『そうか、それなら安心したよ。スパイ大作戦?』

「ああ、まあそうだな。マーブルを信頼したところで俺が行き、いざ戦闘って時にアイツが後ろから捕まえるってわけさ」

『へえ。力でごり押ししてた昔とは違って、知恵も付けてたんだね』ジョイライドはあどけない笑顔を見せる。『アダムズ君が成長したみたいでワタシもうれしいよ』

「母親面すんじゃねえよ」

 口では乱暴に言い切ったが、アダムズも笑顔だ。

『それでワタシに頼みたいことって言うのはなんだい?』

「どうやら、あっちにもお前みたいな猫がいるらしい」

『へえ!』

 ジョイライドの顔が、好奇心で一気に悪そうな顔に変わる。それを見たアダムズも依頼がうまく通りそうでにっと笑う。

「俺がターゲットを捕らえる時に、その猫が邪魔になるんだ。お前にはそいつの相手をしてもらいたい」

『もちろん! 報酬はいらない、戦えるってだけで十分だよ』

 頭が良さそうに見えて――実際も頭がいいのだが――だいぶ好戦的なジョイライドだった。

 アダムズは頷き、コップに好物の緑茶を注ぎ飲み干した。

『よくそんなに苦い物が飲めるね。ワタシには理解できない』

「そうか?」

 こちらこそジョイライドが理解できないと、アダムズは不思議そうな顔をする。

「少し遠くに行けば、割と甘めのやつも売ってるからな。今度やろうか」

『甘いならちょっと飲んでみようかな? ありがたく頂くよ』


 * * *


 早朝、三時。

 レインドロップはなんだかもやもやして目が覚めた。理由は知らないが、寝る気になれない。

 マーブルはソファで横になって寝ている。颯太も自室で寝ているのだろう。しっかり鍵は閉められていた。

(……なんだろう? 嫌な予感……)

 予感というものはよく当たる。人間の場合はそれほどでもないが、一応野生の勘を一応持っている一応猫又のレインドロップは危機察知能力が一応非常に高い。

 マーブルを起こさないように、家の外に出る。人気のない方に行けと勘が騒いだ。

 少し歩いて山に着いた。ここなら何があっても他人に迷惑は掛からないだろう。

「誰か知らないけど。ボクに何か用?」

「あっはっは。バレてたんだね、さすがだよ」

 現れたのはレインドロップにそっくりの少女だ。髪や目の色、服装などはだいぶ違うが、双子のように瓜二つである。

 レインドロップは警戒し、魔法で純白の刀を実体化させた。

「……名前は?」

「ワタシはジョイライド。とあるお友達から頼まれて、君の足止めをすることになったんだ」

「! 狙いは颯太くんか!」

 ジョイライドに斬りかかる。ジョイライドはひらりひらりとかわし、挑発的な笑みを浮かべた。

「そんな程度じゃワタシにけがを負わせることはできないよ? もっと真面目にやったらどうだい」

「うぬぬ……!」

 刀を振る速度が上がった。だが、ジョイライドも様々な魔法を駆使して回避する。レインドロップはだんだんいら立ってきた。

「『ホワイトレイ』!」

 何十もの光線が宙から放たれ、巨大な爆発を起こす。笑顔のジョイライドもそれに応戦し始め、すぐに魔法の打ち合いとなった。

 木々が轟音を立てながら次々と倒れ、消え去り、はじけ飛ぶ。

「あっはっは! 楽しいね!」

「ふざけやがって! このーっ、絶対にぶっ殺してやる!」


 * * *


 颯太は、窓の外から聞こえる爆発音で飛び起きた。

 部屋の鍵を開け、リビングに出ると、机でマーブルがうんうんうなっていた。

「おはようございます」

「あ、おはよう! ご飯の用意はできてるから、持ってくるね」

 運ばれてきたのはクロワッサンとコーンポタージュ、目玉焼きだ。すべて美味しそうでどれから食べるか迷ったが、クロワッサンにした。料理を無言で食べる颯太を見てマーブルがうれしそうな顔をする。

「なんか外が騒がしいですね」

「そうね……レーちゃんもいつの間にかどこかに行っちゃったし、ちょっと心配」

 言われて初めて颯太はレインドロップがいないことに気付いた。忘れ去っていたことを心の中で詫びる。

 爆発音は次第に大きくなり、朝食を食べ終わるころにはマーブルの話し声がほとんど聞こえなくなっていた。

「様子を見にいってくるわ。颯太くんはここで待っててね」

 颯太は引き留めようとしたが、結局言葉は爆発音にかき消され、仕方がないので颯太も外に出た。

 外には、一人の男が立っていた。

「よう、裕太……だったか?」

「いえ、颯太です」

「はっはっは、悪いな。今からお前を人質にさせてもらうぜ、せいぜい抵抗しな!」

 颯太は、この男がアダムズだと理解した。即座に魔法を発動させるが、ここでマーブルが何もしないことに気が付いた。

「ふん、マーブルに助けを求めたって無駄だぜ。なぜならそいつは裏切ってなんかいないんだからな!」

「人をだますのは悪いことですよっ!」

 魔法が使えるだけで身体能力は平均並みの颯太は、熟練のアダムズの拳を避けることができなかった。頬を鈍い痛みが襲い、吹き飛ばされる。

「な……!?」

「俺の両手は特殊でな、ありとあらゆる魔法を無効化できるんだ。お前には勝ち目なんざねえんだよ! オラァ!」

 再び殴ってくるアダムズ。颯太は可能な限り広範囲に『フェブラリー・アトモスフィア』を発動させ、すぐに逃げる。勝ち目がないと分かれば逃げるべし、当然のことである。無理に戦って大けがしたら意味がない。この世界は勇気だけではやっていけないのだ。

 颯太は、背後から何かの音を聞いた。カチャッという小さな音だった。アダムズの顔が驚きに染まる。

「なっ!? おいマーブル、ターゲットは生け捕りだ! 殺しちゃ意味がねえんだぞ!?」

「大丈夫よ、颯太くんは殺さないわ。殺すのはあなたよ、アダムズ」

 乾いた発砲音が三度響く。アダムズがしゃがんだので一発も当たらなかったが、マーブルは再び拳銃の狙いを定めた。

「マーブルさん!」

「私がこんなにかわいいショタっ子が被害に遭ってるのを見て、何もしないわけがないでしょ!」

「クソが、まずお前から殺してやるッ!」

 アダムズがポケットから懐中時計を取り出し、魔法を発動させた。瞬時に、その体がテレポートしたかのようにマーブルに迫る。

 マーブルも拳銃で応戦しようとしたが、間に合わない。『爆速(マッハ)』という魔法で常人の数千倍の速さを得たアダムズの腕が、拳銃や腕ごとその胸を貫通した。

 血が飛び散り、マーブルの体が力を失う。


 * * *


「……ふーっ、ふーっ……この……!」

「なんだい、期待外れだね。もうちょっとワタシを楽しませてほしいよ」

 レインドロップは地面に倒れ伏し、ジョイライドをにらみつける。猫又を含む、妖怪が持つ自己再生能力によって傷はすべて治っていたが、疲れは取れない。もう刀を握る気力も、立ち上がる気力すらも残っていなかった。

 ジョイライドがどこかから、小さな正方形のシールを取り出す。それには赤色の星マークが印されていた。

「完全に殺すのは面倒だから、封印にしておこうかな。お仲間さんに伝えてほしいことはあるかい?」

「……」

 何も言わず、ジョイライドをにらむ。ジョイライドは笑みを浮かべ、シールをレインドロップの額に貼り付けた。

 レインドロップが苦しそうにうなる。そしてすぐに体が消え去った。

 だが、ジョイライドは仕事が終わって喜ぶでもなく、期待外れで残念そうにするでもなく、そこに立ち尽くして、目を見開いていた。

「まさか」

 封印するとだいぶ疲れる。シールが持ち主の魔力をごっそり奪っていくからだ。

 しかし、今回は全くそのような感じがなかった。妖怪などを封印すればそれこそジョイライドが倒れてもおかしくない。

「……一杯食わされた! ワタシとしたことがっ……!」

 その場を離れ、レインドロップを追おうとするが、すぐに異変に気付いた。空が、どんどん黒くなっているのだ。

「……まさか……! そんなっ! ふざけるな、ふざけるなあああああああああああああ!」

 ジョイライドは、最初からレインドロップの術中にはまっていたのだ。

 現実世界のレインドロップの足元に、ジョイライドが封印された赤黒い立方体が転がった。


 * * *


 アダムズが腕をぶんと振って血を払う。その足元には、血まみれの、胸に風穴の開いたマーブルが倒れていた。

「これで邪魔なやつは消えたな。お前だけだぜ……てめーのお友達の猫も、今頃俺の知人が殺し終わったころだろうな」

「……!」

 颯太は異常に冷静になっていた。周囲の状況をくまなく観察し、突破口を探す。

 そして、何かを見つけた。

 マーブルのすぐそばには、青く煌く石が転がっている。それはすこしずつ浮かび上がり、颯太の方へ飛んできた。

「わ!?」

 嫌な予感がしたアダムズが、颯太を仕留めにかかる。

 颯太の頭の中に中性的な、不思議な声が響いた。

『ようこそ、二ヶ月颯太。あなたは適合者です』

「てめえ!」

 颯太はためらわずに魔法を発動させた。今この時に新しく得た魔法を。

「『ゲームブレイカー』!」

 颯太の振った腕が、吸い込まれるようにアダムズの腕に当たる。そして耳をつんざくような爆音がなり、アダムズは吹き飛ばされた。マーブルの家の壁にぶち当たり、屋根が崩れ落ちる。

「ふざけやがって……!」

 ゆっくりと立ち上がるアダムズ。颯太はそれを真正面から見すえた。

「僕の『ゲームブレイカー』により、あなたの腕の能力は消滅しました。これで『フェブラリー・アトモスフィア』の効果が発揮されます」

 新たに得た魔法、それは『ゲームブレイカー』。世界の法則を書き換える、単純で、そして強力な魔法だった。

 それにより効力を増した『フェブラリー・アトモスフィア』を、アダムズのいる場所まで展開する。

「ぐっ……!」

「僕はあなたを生かしておく気になれません。すみませんが、さようなら」

 アダムズは何の音もたてずに、一瞬で消え去った。

 もう、何も残らない。


 颯太はマーブルへ近寄ると、手を合わせて目を閉じた。

 そんな雰囲気をぶち壊す元気な声が響く。

「いやー、ごめんね! あれっ」

 驚いた顔のレインドロップがマーブルへ近づく。

「……死んじゃった?」

「はい」

「そんなときにはこれ! じゃじゃーん!」

 レインドロップがどこからか取り出したのは、黄色い小さな宝石だった。こいつなにをしているんだろうという顔の颯太をよそに、マーブルへその石を近づける。

 すると石から黄色い光が放たれ、マーブルを包み込んだ。

「死者蘇生! はっはっは!」

「あれ……?」

 マーブルの怪我は無くなった。即死だったのにきちんと死者蘇生している。

 颯太は驚き、自分の中で命の重みが揺らぎそうな気がした。

「あら? 颯太くん、雰囲気が変わった?」

「そうなんですか」

 レインドロップもうなずく。

「なんか……なんというか、すっごくカッコいい感じ? うーん……」

「そうね。今までのかわいさはそのままに、かっこよさまでついてきたって感じかな。うーん、結婚し――」

「遠慮します」


 そして、二週間後。ついにこの日がきた。

「空港でそんな騒がれるとこっちまで恥ずかしいんですが」

「いいじゃないお別れなんだし! あ、この紙に私の電話番号とメアドが描いてあるからね。ちょくちょく連絡ちょうだい、じゃないとお姉ちゃん寂しくて泣いちゃうから!」

 レインドロップはここに来る前に酔いつぶれ、今はマーブルに背負われて寝ている。

「またおいでね! いつでも泊めてあげるから!」

「ああ……まあはい」

 次家出する時はここにしようと決めた颯太だった。

 颯太が飛行機に乗り、もうマーブルの姿が見えなくなる時まで、マーブルはとてもいい笑顔で手を振っていた。

「またねーっ!」

「はーい!」

 三作目です。ありがとうございました。

 颯太さんは一応、慧さんとコルクさんのクラスメートです。

 それじゃあまたねー。


 その他、物語中では出てこなかった設定集(一部)

 ・氷の懐中時計でわかりますが、アダムズは、『THE LAST HOURS』の一員です。前作で出てきた文の同僚というわけですね。

 ・マーブルの名前に「D」が入っていますが、これはDreamのDです。「夢を追い続けよう!」という意味で、十歳の頃に自分でつけ、それ以来そう名乗っています。

 ・レインドロップの白い刀は、『まっしろまる』という名前が付いています。

 ・アダムズの両手の効果には『ファンタジーイレイザー』という名称があります。

 ・実はアダムズ、日本文化(特にお茶、寿司、マンガ)の大ファン。二年に一度は日本にわたり、寿司屋さんを食べ歩きします。もしかしたらアダムズの幽霊が日本にいるかも……おや、あなたの後ろに人影が。


アダムズ「極悪人だからってのは分かるが、なんでこんなかわいそうな死に方をしなくちゃいけねえんだよ。もうちょっとさ、こう……高校生がためらわずに行える優しい死なせ方ってのはなかったのかよ」

マーブル「私もなんであんな凄惨な殺され方をしなくちゃいけなかったのかしら……考えただけで寒気が……」

ジョイライド「一瞬で死ぬのなら楽でいい方だと思うよ。何もないところで何千年も封印とか聞いただけでコワイ。あ、この緑茶意外と甘くておいしいね」

颯太「それになんで僕、人の心がないみたいに迷わず殺人をしなくちゃいけなかったんでしょうか。少しはためらうそぶりを台本に入れてほしかったですよ……」

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