第二話 悪魔の王子
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昨日は落ち込んだ。
今日は気持ちを切り替えて、ミスのないように改めて頑張ろう。
また、朝も王族の朝食の用意をしている。
「昨日は、その、大丈夫だったの?」
ソフィが心配している。
「大丈夫だよ。気持ちの切り替えが私の取り柄だから。」
ガチャ。
ドアが開き、カシェルナが入って来た。
「おはようございます、カシェルナ王妃。」
カシェルナは横目でテティアを見る。
「おはようソフィ。」
「お、おはようございます、王妃。」
テティアには挨拶しない王妃に同様するソフィ。
国王もエミリアも食卓に並ぶ。
国王の壺は見つからなかったので、謝罪する。
国王は呆れたようにあしらう。
それの光景をみてエミリアは笑を浮かべている。
アルディアが部屋に入ってきた。
「おはようございます。」
「おはよう、アルディア。」
アルディアはテティアを見るとホッとした顔をした。
「テティア、いつまでそこに突っ立ってるの。他にも洗濯や掃除、やることがあるんではなくて。」
王妃がパンを食べながらテティアに指示を出す。
「申し訳ございません、ただちに。」
「母上、テティアに少々厳しいのではないですか。」
アルディアが口を挟む。
「あら、テティアに随分と甘いのね。」
「いえ、そう言う訳では、、」
「お兄様、テティアは立派なメイドです。だから母上もテティアに頑張って欲しいのですよ。ねぇ母上。」
「そうね、よく動くわ。動きだけはね。」
テティアは気まずい雰囲気を悟りながら、部屋を出る。
ソフィはそんなテティアを見ながら、紅茶を注ぐ。
「テティアは少しドジなとこもあるけど、よくやってくれてます。」
アルディアはテティアを庇う。
この言葉にソフィは照れる。
「ドジだからダメなのよ。何でも頑張ってるからって、それで済ませてはソフィのようにミスもせずちゃんとしてる子達に悪いわ。」
ソフィはとりあえず頭を下げる。
アルディアはこれには何も言えなかった。
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ここは、灼熱の火山地帯、〈アデロイ帝国〉
別名、〈悪魔の総本山〉。
「王子、準備が整いました。」
黒い角と黒い羽の男がが膝をたてて報告する。
その男の先には椅子に座り、魔獣の死体から絞った血を飲む者がいた。
黒い身体に、白い整った顔立ち。
王子と呼ばれるだけあって、悪魔だが品もある。
「わかった。では、今すぐ出立しようか。ジバラック」
「はっ、かしこまりました。すぐに。」
ジバラックは部屋を出る。
部屋を出るとそこは城の外壁に飛び出した場所。
その下には数多の悪魔達が集まっている。
「皆な者よ、人間たちに我らの力を示す時がきた。これより悪魔の軍勢を持って悪魔の恐怖を与えてやれ。」
悪魔達は声を上げ、上空に飛び立つ。
魔獣に乗って飛び立つ者や自分の羽で飛び立つ者など多くの悪魔が一斉に人間の棲む地に向けて出発する。
食事を終えた悪魔の王子もそれを見ながら武装を整える。
「王子、では出発を。」
全身が骨の怪鳥スカルイーグルが現れる。
王子はそれに跨り、飛び立つ。
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テティアは王宮の大きな中庭で洗濯物を干していた。
急に黒い雲が空に立ち込める。
「雨が降り出しそう。」
せっかく干したばかりの洗濯物を取り込む。
「もうまたこんなこと。」
こんな空回りばかりが続く自分が嫌になる。
「手伝うわよ」
「ありがとう、ソフィ」
ソフィが一緒に洗濯物を取り込む。
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「国王陛下、空が!」
「何だ、騒々しい。」
国王は部下に言われ窓から空を見上げる。
「何だあれは?」
「黒雲が上空を覆っております。これは普通の雲ではないかもしれません。」
「どうなっている。急いで兵士を広場に集めろ。」
部下は急いで兵をかき集める。
「父上、これは何事ですか?」
「アルディア、これは何か災いの前触れかもかもしれん。」
落ち着きのない国王を見て、アルディアにも緊張が走る。
一体何が起ころうというのか。
「カシェルナ!ここにおったか。」
カシェルナも空を見ている。
「カシェルナよ、王宮で隠れておれ。何か不吉なことが起きるとしか思えん。」
カシェルナはずっと黒雲を見ている。
「そうですね、しかしもう手遅れかもしれませんわ。」
「どういうことだ?」
国王が窓から外を見ると街の至る所から煙が上がっている。
「何ということだ!」
国王は部下に鎧を取ってくるように命じる。
武装を整えたアルディアも姿を現す。
「お兄様、怖いですわ。」
エミリアが怯えている。
「大丈夫だエミリア、俺が絶対に守る。皆んなを。」
アルディアと国王は王宮から広場に向かった。
「国王様、もうすでに襲撃に遭っております。」
「敵は何者だ。」
言いにくそうにしている。
「何だ、早く答えんか!」
「あ、悪魔の群勢でございます!」
国王とアルディアは驚きを隠せない。
「悪魔だと、何年か前に西の大国を一晩のうちに滅ぼしたあの悪魔の軍勢か!」
「はい、おそらく間違いないかと。」
「何ということだ。」
国王は膝から崩れ落ちる。
「父上! しっかりしてください。悪魔だろうが戦う他ありません。今も兵士達が命をかけて戦っております。」
国王は顔が青ざめたまま俯いている。
「父上!」
「ダメだ、どうすることもできん。戦うことはできても勝つことはできん。奴らは強すぎる。まさに厄災だ。」
アルディアに改めて緊張が走る。
物凄い音が聞こえた。
見ると街の半分が吹き飛ばされている、
その光景はまさに地獄だった。
「何が起こったんだ、、、」
アルディアは状況が飲み込めなかった。
それもそうだ。一瞬にして街が半壊したのだから。
黒雲に巨大な魔法陣が出現した。
「何だあれは、、」
魔法陣の隣には大きなドクロの鳥がいた。その上に人らしきものが乗っている。
「人間共よ、よく聞け。我々は火山の地より参った悪魔である。こちらに座すお方は、我々の悪魔の王子ベルゼ様である。これより貴様らに絶望を、、味わってもらう。」




